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モフモフタイムは苦行です

 どうも皆様、嫁さんの藍苺ランメイの膝の上から今日は。白の国の下町で雑貨屋を営んでおります。名をトウ紅蓮コウレンと申します。語呂が悪いのは氏を後から賜った所為ですのでお気になさらず。


 さて、先にも話した通り私は今嫁さんである藍苺の膝の上におります。これにも訳があるのですが……


 はい、モフモフタイム真っ最中です。


 これを条件に大人しくして貰っているのです。嫁さんは働き者ですがかなりの負けず嫌いでもあります。なので多少調子の悪い時でも仕事をしようとします。はい、ここで改めて藍苺の仕事を紹介します。



 私の自慢の嫁さんである藍苺の仕事は、ズバリ傭兵稼業です。大剣を片手で振り回す程パワフルです。今の私では腕力では敵いませんね。


 私が一足先に出稼ぎにこの下町に来ていた頃、実家で修業でかなり無茶と努力をしたお陰でこの国でも5本の指に入るほどの手練れになっていました。さっすが負けず嫌い。でも、無茶をするのは今でも感心しませんけどね。



 さて、そんな嫁さんは日頃私の両親が経営するギルドの依頼を請け負っています。何せ5本の指に入るほどの手練れですから、実力の有るものにしか請け負えない依頼も有るので優先的にそんな依頼が押し付けられます。強いって事も中々不便ですよね。


 そんな嫁さんが今日は調子が悪いのです。女性なら必ずはあるハズの“アレ”の日なのです。月のお客様ってやつです。


 私が出稼ぎに出ている間に始まっていたと思い込んでいましだが、今朝初めてなっていました……本人は私のベットを台無しにしたことにまだ落ち込んでいます。仕方の無いことなんですからねぇ、怒りませんよ。


 そして、そんな調子の中仕事に行こうとした嫁さんにモフモフ権を代償に大人しくしている事を承諾させて今に至ります。


 そうです、今にまさにモフモフされています。エンドレスです。明日には何処かの毛が円形脱毛症になっていないか心配なほどにモフモフされてます。




「モフモフ♪」

『はいはい……』

「ムフフフフ♪」

『……はいはい』



 私の首の後ろ辺りに顔を押し付けて笑う嫁さんにドン引きする私。眷属達は生暖かい目で見守っている。お前らもされてみろ……いや、今度嫁さんに献上してやる!……夜夢ヨルム、蛇だからと安心するなよ。藍苺はジン時代に蛇を首に巻き付けて笑ってたんだぞ!お前よりも少し細めのニシキヘビを。そのスベスベでヒンヤリした鱗が剥がれないと良いな!


 あ、八雲は除く。だって今寝てるし。夜の店番ご苦労様です。四時間しか寝ないのでお昼は起きてきます。どうやら日中何処かに出掛けている様ですが……プライベートは詮索しない主義ですから放置。八雲だって彼女がいても不思議じゃ無いのですし……奥手で自分からアタック出来るか不安ですが……。



 おっと、話がズレました。



 えっと、そんなモフモフタイム真っ最中な嫁さんですが、顔色はあまりよくありません。貧血気味なのでしょうか?


 何処かで聞いた話では月のお客様が来るから貧血になるのとはちょっと違うとか……なんでも、なる前に貧血を起こすらしいです……なんのことか分からないし、それが本当なのか今では分かりませんけどね。後で記憶と知識の書で調べようかな……



 ま、女性はホルモンバランスが崩れやすいので体調を崩しやすいのですよ。



 それで何度前世で苦労したことか……シュンを産んでからは軽くなったのですがね……本当、女性は大変です。






「う゛っ…………(-""-;)」

『大丈夫?』

「うぅぅぅ………((T_T))」



 藍苺は比較的重いようだ。仕方が無いのだ。これには個人差があるからね……特に若いと重かったり、不順だったり……二十歳ごろには落ち着くだろうけどそれまでの辛抱だよ。……絶対に軽くなると言う保証はないけど。



『体を…特にお腹を暖めなよ。ほら、火鉢の中に石を入れてたからこの火鼠の毛で織った袋に入れて持ってな。湯タンポ代わりに。』

「………熱々の石は持てないだろ……」

『それもそうか……じゃ、私が……』


 未だ朝は寒いので火鉢に火を灯している。私は寒いのは大っ嫌いだ。


 熱さ無効を随時発動している――随時っていうか備わっている能力――から熱々の石も何のその。正直嫁さんの防具を作っている時よりも熱くない。


 さて、作業するために一時的に……人の姿に戻りますかね。……ん?何だよ嫁さん。え?そんな残念な顔しなくても……


 どうせ直ぐに戻るんだしさぁ……



「せっかくの……う゛っ……」

『こんな時くらいモフモフ好きをやめりゃ良いのに……』


 痛みに耐えながらもモフモフを要求する嫁さん……


 ま、それが藍苺なんだけどね。



 あ、そうそう。今の私は裸ではありません。……だってここは店の中だよ?いつお客さんが来るか分からないでしょ?それに、いざって時に素っ裸は不味いので姿を人に戻しても服は着ている状態になります。これには色々苦労した。もっとも、解決してくれたのは母さんだけどね。


 母さんも九尾だし窮奇だからね。巨大な獣の姿を持ってるからわたしと同じように苦労したんだって。妖怪のなかには素っ裸でも何とも思わない人もいて、今まで何の対処もしなかったんだって……パネェ……


 さて、服の件だけど……簡単に解決してしまった。私が付けている腕輪に収納してます。獣化した時に服は腕輪に収納して、人に戻った時には服を着た状態にするように設定しました。ね?簡単でしょ?(ただし、チートな母さんに限る)



 火鉢に手を突っ込んで熱々の石を掴み特製の火鼠の袋に入れて嫁さんに渡す。そして湯タンポ代わりの石をお腹辺りにしまった嫁さんのカモーンな顔と行動(両手を広げて待っている)に苦笑いしつつも、小さめな窮奇の姿に戻り抱き抱えられた。


 うんうん……分かったから首筋に顔を刷り刷りするのは……ハァ……もうどうにでもしてよ。




 そんな嫁さんの動物好きに呆れながらも為すがままにさせているとチリンチリン…と来客を告げる音が響く。



「客か?」

『うん、そうだね。今の時間帯なら……朝御飯かな?』


 ただいまの時刻7時。下町の人々が仕事を開始するのは8時頃。今丁度朝御飯の支度をする頃だろう。ま、実際はもう少し早く仕事をしているのだけど。この時間帯に来る客は学生だね。朝御飯のテイクアウトやってますから。



「おはようございます……あれ?」


「おはよう、いらっしゃい」


「……いつもの人じゃないの?」


『ここにいるんだけどね~』



 この人は馴染みの学生さん。私居るんですけどねアピールしても仕方が無いのだが何となく声を出してみたくなる。けれども、嫁さんや眷属、同族以外には「キューン」としか聞こえていなのいだろう。


 たまにイタズラで店のカウンターに狐の姿で店番してたことがあるけど……万引きしようとした奴らに我が店の恐ろしさを存分に味わって貰ったよ……やっぱり店番が居ないと抑止力が無いのね。



「あの、いつもの……」


『朝御飯のテイクアウトだよ。』

「ああ、朝御飯ね。」



 嫁さんを料理が置いてある場所に案内する。前にも説明はしたはずだけと……もう忘れたらしい。


 今日の献立は麦ご飯、豚の生姜焼き、ほうれん草のお浸し、ネギと油揚げの味噌汁と何とも定番?なおかずだ。味噌汁は結構皆さん好きなようで繁盛してます♪


 さて、私ではなくてソワソワしている学生さんは去年から大学に通う女学生さん。どうにも人見知りが激しくて初対面の人にはソワソワしている。しかし、口下手とは違い喋れない訳じゃないので普通に買い物は出来る。始終ソワソワしているから怪しく見えるけどね。



「どうぞ」

『銅貨10枚ね』

「…銅貨10枚になります。」


「はい。……それにしてもいつもの思うんですけど……その、」


「確かに10枚丁度お預かりしました……なんでしょうか?」

『この娘口下手だからあまり高圧的にするのはダメだよ~』


「その、……こんなに安くて大丈夫何でしょうか?」



 ごもっとも。普通の店なら……そうだね、20枚は普通にするね。もっと高いところなら……もっと跳び跳ねるだろうさ。


 なんでそんな安くて大丈夫なのか……それは前にも説明したと思う。そう、我が家の…この場合実家の畑で取れたものだからです。それでも私の店だけそんなことしてもいいなか?良くないよ。他の店から批難されるだろうね。だから私の店は“下町に住んでいる人限定”にしているのだよ。他の商品は限定にはしてないけどね。



『大丈夫だからしてるんだよ女学生さん。』

「大丈夫だからしていると主人は言っていました。」


「主人?……あ、もしかして……噂の奥様?」


 主人なんて言ってるところ始めてみたよ♪("⌒∇⌒")


 なんだろ、恥ずかしい……でも、ちょっと嬉しい?



「お、奥様って柄じゃ……」

『奥様……いい響き♪』

「(お前なぁ…)」


「は、はい。謎多き雑貨屋店主の可憐な奥様……みんなが綺麗だと言って噂してました。漸く見ることが…あ、すいません」


『へぇ~。可憐な奥様だ~ってさ。』

「そうですか……(オイ、誰が可憐だ、誰が……言いフラした奴……〆る)」


 女学生さんは時間の許す限り、他の客が来るまで藍苺の噂と私の噂を話していった。もしかすると彼女は男性に奥手なだけで普通の年頃の女の子なのかもしれない……詰まりは私が男だと認識して口下手になってたと考えられる。


 この人生で初めで初対面で性別を間違われなかった……。あ、藍苺は除く。結婚相手として初めから知らされていたし。



 客が来店するのも疎らになった頃。


「………下町の人々が……濃い…キャラが濃い…」

『ま、苦労してれば図太くなるんだよ人は。キャラが濃いのは仕方ないさ……たぶん』



 接客はことのほか疲れたのか嫁さんは元気がなくカウンターの机に突っ伏した。体調も悪い、愛想笑いに疲れたの二重苦でノックダウンしたのだ。



『もう奥で休んでな。後は私が店番してるから……ね?』

「モフモフ……」

『どこまでモフモフ好き何だよ!?』


 若干げっそりしている嫁さんがギュッと抱き締めてきた……変わってほしい?嫁さんは身内目で見ても美人だからね……窒息死したいならどうぞ?



 その後、紅蓮の行方を知るものは誰もいなかった……な、わけないよ。


 大丈夫、何とか耐えました。



 その後、嫁さんは八雲がバトンタッチする時間帯まで頑張っていた。その所為か顔色が悪化して真っ青に……貧血ですね。


 藍苺は思わなかったであろう。その後ほうれん草のオンパレードが一週間続くとは。



 ま、観念して鉄分一杯の野菜を……


 タ・ベ・ヨ・ウ・ネ♪



 あ、サプリメント? 実際に食べないと効果って無いんじゃない?




 カ・ン・ネ・ン・シロ・ヨ♪






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