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メッセンジャー13
政直のこの企みは、まんまと功を奏した。
「拷問なんてしてないだろっ!」
男は大きな声をあげた。
「ヤツは人間の言葉が通じない。独自の発声と思考で話す。ヤツが何を言おうとしているか知るには、脳波を直に観察する以外に手がなかったからだ。
あれは拷問なんかとは全然違うものだ。オレは政府の命令で仕事してんだぞ?国がそんなことするわけないだろ?考えてからモノ言えよこの馬鹿が!」
怒鳴り散らす男からは、色々なことを察することが出来た。
この男がムキになるのは、やはり罪悪感があるからだ。だからこそまず自己弁護から話が始まり、理由付けの後に合理化している。最後は罵倒で締めているところから、かなり精神的に追い詰められていることがわかる。
本当は残酷なことをしたくなかったのだが、自らを無理矢理説き伏せて仕事をしていたのだろう。この男も政府の被害者なのだと思うと、冷静に対処することができた。
「そうか。あの変な音は、あの子なりにオレと会話しようとしてたのか。
ところで、あの子って何者なんだ?どこから来たんだ?やっぱり人間じゃないのか?」
政直は敢えて、相手と会話をするのを止めた。互いに理解しあうことを放棄し、可能な限りの情報を獲得することだけに専念することにした。




