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メッセンジャー6
(参ったぞ)
政直は思案に暮れた。幼気な命を守るつもりでいたのに、いざやろうとしたら逃げ道さえわからない。通路は明かり一つない暗闇のため、道を探すどころか壁にぶつからないよう集中するのに精一杯の有り様だ。
このままでは朝になる。警察官に見咎められるか、寝ていた研究員らしき男が起きて通報されるのとどちらが早いかになるだろう。
ナオミにもう一度メールしてみたが、やはり返事がない。
万策尽きたと思ったとき、妙なことが起こった。
キュウッ
動物の鳴くような声が聞こえた。
それが何の音なのか、政直にはしばらくわからなかった。
キュウッキュウッ
正体不明の物音に、政直は身構えた。両の腕は少女を抱えているため塞がっている。追っ手が近付く音だとしたら、反応できる自信がない。
真っ暗闇のせいで、音源の方向も距離も測れない。感覚的に、かなり近くから音がしている気がするが何の音なのか見当もつかない。
政直はまた本能の導くゆえか、再び光のある方向に動いた。今度は人工的な光ではなく、廊下の窓から漏れる月明かりだった。
とにかく視覚が殺される中で聴覚だけが警報を受け取る状態が、不安で仕方がなかった。夜目でもいいから視界が欲しかったので、窓を背にして立ち止まった。




