炎上5
(この人は……)
多分、もう駄目だと政直はおもった。鮎貝と同じ、死に至る狂気に犯されてしまったことを確信した。掴んでいた手も離した。もはや、胸を揺らされたことを認識できているかどうかさえも怪しい。
装甲車の後ろでは居住施設が明々と燃えていた。まだ人が残っているだろうに、全く正気ではない。間違いなく、まだ生きる意志のあった人の幾人かを有働は焼き殺したことだろう。
「……有働さん。過ぎたことはもういいです」
政直はこれから南下して、臨時政府の置かれている東京ドームへ向かうつもりだった。距離が近い居住区の一つであり、また政直には事態の報告の義務があると感じた。
それにあそこなら、きっと良い病院と裁判所が見つかるだろう。有働の入所するのに最適の施設がきっとあるだろう。
しかし有働にはお縄になる前にしてもらわなければならないことがある。
「有働さん。この件のこと、どう思います?花はどうやって、どうしてこのタイミングで居住区に侵入したんでしょうか?」
この謎を放置していては、中央居住区へと向かう権利すらないと政直は思った。
「簡単な話だ。地面から奴らは来た。
今になって入ってきたのは大した理由じゃない。日本全土をあらかた覆い尽くして生えるところがなくなったから、新しい土地を探してただけだろう」
有働は冷静さを取り戻したかのように話しているが、瞳孔は開いたままだ。




