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研究室

佐渡政直は居住区に帰った後、真っ先に研究室に向かい主任に鮎貝の件について報告しに行った。

研究室に置かれた巨大な水槽の中で育てられる赤い花を見ていると、鮎貝でなくても腹がムカムカしてくるのを感じた。


「そうか…鮎貝のやつ、危ないとは思っていたが……」

白髪だらけの研究室主任・有働誠一の声は残念そうではあったが悲壮感はなかった。おそらく、予想の範疇の出来事だったのだろう。


政直は知っている。この有働も、鮎貝と似たような境遇にあることを。シングルファザーだったのが、花のせいで子供までもを失ったと聞いている。

(この人からしたら、明日は我が身なのかもしれないな……)

そう思ったのだが、政直だってそこは五十歩百歩であることに気付いた。今や、誰にとっても生きる希望が疑問視されている。かつての隆盛を失い、狭く維持費のかかる居住区域に押し込められ、再び収入を得る手段もままならない。

花に殺されて亡くなった人と自ら死を選んでしまった人の数は、実はいい勝負をしているというブラックジョークさえある。





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