14/122
調査隊7
「おっと佐渡、オレは“自死法”による権利を主張させて貰うぜ」
政直の足が止まった。
「あらら。佐渡、これはいけないヤツだわ」
ナオミが気の毒そうに声を出した。
自死法
自殺志願者に許された権利に関する法律である。きわめて奇妙に思われるかもしれないが、自殺者はその善意に関わらず、自殺の妨害した者を法のもとに告訴する権利があるのだ。
なぜこんな法律があるのかというと、自ら命を絶つことを望む人が増えたからだ。善意によって自殺を止める人と、自殺を妨害されたことを恨む人との摩擦が生まれるケースもそれだけ増えた。結果、人道主義者の主張より自殺志願者の意見が優先されたのは痛烈な皮肉である。
“もはや世界は生きるに価しない”という言い分に市民権が認められたのである。
「鮎貝さん、悪いけどオレは止めさせて貰います」
当然のことながら、他人の自殺を止めても重罪とはならない。ここで政直が鮎貝を止めて訴えられたとしても、給料3カ月分の慰謝料を支払うだけだ。
「ひとをみすみす死なせるなんて、胸糞悪すぎる。はした金じゃ割に合わない」
政直は正直な気持ちをぶちまけた。
「まあ、佐渡らしいっちゃらしいけど……」
ナオミは醒めた目で政直を見つめた。
「あんた、この人を止める権利とか、あんの?」




