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天使の歌9
「だがね隊長さん、手はあるんだ。オレの足元で、今だけは大人しくオネンネしてるジャジャ馬を有効活用する手段がね」
有働は自信たっぷりに言い切った。
「何が言いたい。制御する手があるなら、さっさと言ってくれ。そういうのは事前に申し出てくれるのが常識だろう?」
政直は自分で間の抜けた事を言っているのがわかった。この男に世間の常識とやらが通用するようなら、最初から苦労はいらない。
「こいつを遠隔制御する技術は今のところありゃしねえ。てなわけで、技術者に最後まで付いてってもらうことにする」
有働が何を言わんとしているのか、最初はわからなかった。最後まで技術者が付いていけば、それは特攻機になってしまうではないか。そんなことが許されるはずがないというのに……
有働の非常識っぷりにホトホト嫌気が差したとき、政直の脳が閃いた。
そうだ。有働には常識が通用しない。人間的な常識を前提に話をしていたら、いつまで経ってもわかるはずがないのだ。
常識という至極当然の思考の枠を敢えて取っ払わなければ、非常識の塊である有働とは理解しあえる可能性すらないのだ。




