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希望の光21
有働は歯噛みしていた。
この男の花に対する憎しみは、純粋な義憤以上も以下もない政直より根深い。
「しかも、オレたちに出来ることって言ったら……」
有働の憎悪など目もくれず、メッセンジャーはうなだれた政直の脇腹に顔を擦り付けていた。
有働など、認識するに値しないとでも言わんばかりだ。
「オレたちにやれるのは、舐められてかけられた情けに、縋ることぐらいなのさ。
オレたちは救済されたわけじゃねえ。ひとまずチャンスを貰えるだけだ。こいつは人類の希望の光なんかじゃねえ。絶望の地獄の真っ只中に、ほんの一筋だけ蜘蛛の糸が垂らされた、それだけのことさ……」
有働はキーボードを操作した
『うたをおしえろ』
ばけものめ、と付け加えることだけは思い止まった。
せっかく政直が開いてくれた光明を、無駄には出来ない。一時の感情に流されて痛い目を見たことがある以上、同じ過ちを易々と繰り返すつもりはない。
有働の精一杯の心意気も虚しく、メッセンジャーは政直の首元に顔を擦り付けることだけに没頭し通していた。
怒りに耐えかねて拳を振り上げようとして、気付いた。
メッセンジャーは小声で歌っていた。
囁くような、微かな声で
今までの鳴き声とはかけ離れた、オペラに似た高音で、咽び続ける政直の耳元で、労るように歌っていた。




