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調査隊3
「懐かしいな……」
ナオミがいつになく、しおらしい事を口にした。
眼には涙まで浮かんでいる。
政直はおもった。ナオミのような若い女性にとって、若い頃好きだった街がこんな有様に成り果てたことは、どれくらい悲劇的なことだろう。
普段は毒舌の凄さのあまり意識に上ることさえ少ないが、彼女は黙っていれば凛とした顔立ちの美人だ。こんな女性らしい一面を見せられると、おかしな気分になりそうだ。
「高校の頃、よく来たな…
アオイも、マドカも、カナエも、テツオも…
一緒にいた子は、みんないなくなっちゃった」
ナオミもまだ22歳。もしも樹が東京を襲わなかったなら、まだ友人たちと遊んでいたかもしれない年頃だ。
「ちょうど、このあたりだった。あの日、四人でいたら、ナンパしてきた連中がいて…」
彼女の平凡だが幸福な生活を、木と花が奪ったのだ。
政直は改めて決意した。なんとしてでも樹の弱点を暴き、世界に平和を齎すことを。
「そしたら、カナエがナンパ屋のキ○タマ蹴飛ばして……
本当、懐かしいよ……」
そんなことを口にして、涙をポロポロと流し始めた。
……政直は改めて決意した。二度と、ナオミをか弱い女性として見るような失態は犯さないことを。




