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追放された無能と呼ばれた俺、実は神々の寵児でした〜スローライフしながら気づけば美少女も最強も全部ついてきてました〜  作者: 妙原奇天


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第4話「森を揺らす影」

 夜の森は静かだった。川のせせらぎ、虫の声、風が木々を揺らす音。それらはいつもの自然の調べのはずだった。だが――。


 「……来る」


 俺の胸がざわついていた。昨日、狼とは違う咆哮が聞こえた。低く重い、腹に響くような唸り。小屋を作り終えたばかりの今、この拠点を守り抜けるかどうかが試されようとしていた。


 「リオさん……」

 不安げにエリナが袖をつかむ。彼女の手は小刻みに震えていたが、その瞳には逃げるという選択はなかった。


 「大丈夫だ。俺が守る」


 そう言い聞かせながら、焚き火の傍に手をかざす。土の匂いとともに、胸の奥から《創耕》の力が波紋のように広がっていく。


 やがて、森の奥から木々をなぎ倒す音が近づいてきた。

 現れたのは――黒々とした巨躯の熊だった。だが普通の熊ではない。背中に黒い瘴気のような煙をまとい、目は赤く光っている。


 「……魔獣か」


 勇者パーティと共にいた頃、文献で見たことがある。瘴気に侵された獣は、通常の個体よりも力も凶暴性も増す。俺とエリナだけでは荷が重すぎる相手だ。


 「う、嘘……どうしたら……」

 「下がってろ。絶対に離れるな」


 俺はエリナを小屋の陰に庇い、両手を地面につける。すると土から無数の根が伸び、熊の脚に絡みついた。


 「……おおっ!?」


 熊が吠え、根を引きちぎろうともがく。その力は凄まじく、根が軋んで悲鳴を上げる。


 「くっ……耐えてくれ……!」


 汗が噴き出す。俺一人では押しきれない。だがその時、背後から声が飛んだ。


 「リオさん! 私も……手伝わせて!」


 エリナが手にしていたのは、森で拾った木の枝に布を巻きつけた即席の松明だった。彼女は震える手で火をかざし、熊に向かって突き出す。


 「おおおおっ!」


 炎に怯んだ熊が一瞬後ずさる。その隙に俺は力を解き放った。地面がうねり、根が一斉に熊を締め上げる。


 「今だ……!」


 叫んだ瞬間、熊の頭上から鋭い閃光が走った。


 「はああっ!」


 誰かの声。次の瞬間、巨大な剣が熊の肩を深々と切り裂いた。黒い血が飛び散り、熊が苦悶の咆哮をあげる。


 現れたのは、一人の青年だった。金色の髪を後ろで束ね、鋭い眼光を放つ。鎧はところどころ傷だらけだが、その姿は歴戦の戦士そのもの。


 「大丈夫か! 二人とも!」

 「あなたは……?」


 問い返す暇もなく、青年は熊に向かって剣を振るう。根で縛られた魔獣は十分に動きを封じられており、青年の剣撃が次々と食い込んでいく。最後に大きく振りかぶり、首筋へと渾身の一撃を叩き込んだ。


 「……ふぅ」


 魔獣は断末魔の叫びをあげ、やがて崩れ落ちた。瘴気が煙のように散り、夜の空気が静けさを取り戻す。


 「助かった……」

 俺は力を抜き、膝をついた。全身が汗にまみれている。


 「あなたのおかげで……命拾いしました」

 エリナも胸を押さえながら深く頭を下げた。


 青年は剣を収め、こちらを振り返る。

 「俺はアレン。冒険者だ。森の異変を調べていたら、魔獣に襲われている声が聞こえてな」


 「アレン……俺はリオ。こっちはエリナだ。俺たちは、この場所で暮らそうとしている」

 「暮らす、だと?」


 アレンは驚いたように眉を上げた。

 「こんな森の奥で? ……だが、なるほどな」

 視線が俺の背後、小屋と耕された畑に向けられる。


 「お前……ただの人間じゃないな」

 「……神の加護を授かった。《創耕》だ」

 「創耕……? なるほど、大地を操って魔獣を縛ったのもその力か」


 アレンの眼差しが鋭さから興味深さに変わる。

 「気に入った。俺もここに居させてもらえないか?」


 「え……!?」

 エリナが驚きの声をあげる。


 「もちろんタダ飯を食う気はない。腕には自信があるし、魔獣退治や護衛なら任せろ。……正直、もうひとりで放浪するのに疲れたんだ」


 その言葉に、胸が熱くなった。俺とエリナだけでも心強かった。だが戦える仲間が加わるとなれば、この拠点はさらに確かなものになる。


 「歓迎するよ、アレン。ここが……俺たちの新しい居場所になる」


 差し出した手を、アレンは力強く握り返した。


 夜空を見上げれば、満天の星が瞬いていた。

 追放された俺に、仲間ができた。エリナ。そしてアレン。


 小さな居場所は、確かに形を取り始めている。

 だが同時に、魔獣の存在はこの森に何か大きな異変が迫っている兆しかもしれなかった。


 俺は決意を新たにした。

 ――どんな脅威が来ようとも、この拠点を守り抜く。ここが俺たちの生きる場所なのだから。

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