メテオストライク
入所者の加須仁が出勤してきたのは
11時のことで所定の時刻を1時間すぎていた
加須仁は自身の席にかばんを置くと、小走りでこちらにやってきた
「あっ、あの、あの」
と言いながらどんどん迫ってくる、近い
私は声をかけた
「今日、何かありましたか?」
加須仁は目を左右に泳がせると言った
「あっ、あの、あの、えと、家に隕石が落ちたんです」
「隕石?」
「隕石というのは、空から降ってくる隕石ですか?」
「はい、その隕石です、それで、隕石が降ってきておうちに穴があいたんです
どーんて音がしておうちが揺れたんです、それでそれで、そこが
僕の部屋だったから、僕は近づいて隕石を見たんです
そしたら、隕石に”しこうししてちわかれん”て書いてあるんです」
「そうですか」
「それで、あの、隕石を持って来たんです」
加須仁はがさごそと音を立てながらかばんを漁りビニル袋を取り出した
中には石が入っている
「これがそれですか?」
「はい」
石の表面には始皇死而地分と書いてある
「どうすればいいですか?」
「始皇帝は随分むかしに亡くなられていると思うので・・・・」
「ですね」
「気にする必要は無いと思います」
「他に何か報告することはありますか?」
「ありません」
「怪我はなかったですか?」
「ありません、でもおうちに雨が入ってきます」
「そうですよね」
「業者に修繕のお願いはしましたか?」
「親が依頼をして、きょう業者の人がおうちに来るらしいです」
「他に何か気になったことはありますか?」
「ありません」
「作業は出来そうですか?」
「はい」