第62話:報告
「あばばばば……恭子ちゃん、もっとスピード落として。地面の舗装具合が元の世界ほどじゃないからめっちゃ揺れるんですけど?」
「砦を守っているやつらも心配だからのんびりしているわけにも行かないだろうが」
バイクで並走している真夕ちゃんと視線を交わして苦笑する。
『これなら来たときよりも早く到着できそうですね。来た時は途中休憩が必要だったけど、これならすぐにいけそうですね』
通信機から真夕ちゃんの音声が聞こえる。走行音で会話が聞きづらいので、通信機を通して会話をしている。
バギーとバイクは土煙をあげつつ走行している。日が暮れる前に街に着いた。バギーとバイクをしまい、街中を歩く。低い位置に来た夕日が眩しい。
「なんか懐かしい感じだね~」
「そうですね」
どことなく真夕ちゃんがウキウキとしているように見える。勝利の報告が楽しみなのかな?
そして疑問を口にする。
「ねえ、お屋敷と軍部の方のどっちに行けばナグモさんいるのかな?」
その言葉に二人は雷に打たれたような顔をしている。
「た、たしかに……」
「とりあえず屋敷でいいんじゃね? 敵が来た様子ないし、そろそろ夕食の時間だろう」
「あ~、なるほど。言われてみればそうかも!」
屋敷の方向に足を向け歩いた。
屋敷に辿り着くと、門番がいるので聞いてみることにした。
「こんにちは。ナグモさんって屋敷に戻ってます?」
「少尉ですか? ええ、ご在宅ですよ」
「ありがとうございます」
お礼をしつつお辞儀をして、あたしたちは中に入る。すると執事さんが出迎える。
「おかえりなさいませ」
「「「ただいま~」」」
「ナグモさんいるか?」
誰にでもため口な恭子ちゃんには冷や汗が出そうになる。一応住まわせて貰ってる身だよ?
だが執事は気にした様子もなく、応接室にあたしたちを案内してくれた。
応接室の中に入ると執事は「今、お呼びしますので、おかけになってお待ちください」とだけ言い残して部屋を出て行った。
「……ねえ、座っていいのかな? お風呂にも入ってないのに埃まみれだよ?」
「えっと……どうしましょう?」
そこへ恭子ちゃんが堂々とドサッとソファーに座る。ああ、高そうなソファーが泥だらけだよ。
「ちょっ! 恭子ちゃん!」
「なんだ?」
「ソファーが泥だらけじゃん」
「いいんじゃね? 相手が座って待てと言ったんだから」
「……それじゃあ」
あたしはソファーに座った恭子ちゃんの上に座った。
「なんで、あたいの上に座るんだよ!?」
「い、いや、ソファーの汚れる部分を減らした方がいいかと思って」
「それってあたいが更に汚れるじゃね~か! 降りて他の所に座れ!」
文句を言われて仕方なく恭子ちゃんの隣に座った。真夕ちゃんもあたしの隣に座った。
しばらくすると扉をノックする音が聞こえた。
「「どうぞ~」」
あたしと真夕ちゃんが答える。恭子ちゃんは寝落ちしそうになっていた。
ガチャリと扉が開くと、ナグモさんが応接室に入ってきた。そして上座のソファーに座る。
「それでどうだったんだ?」
その質問に真夕ちゃんが答える。
「えっと、結論から言いますと砦の奪還は成功しました」
「おお!! そうか!!」
ナグモさんは興奮気味なのか、思わず真夕ちゃんの手を握っている。真夕ちゃんは恥ずかし気にしている。
「ああ、すまんすまん。嬉しさのあまりつい」
そう言うとナグモさんは真夕ちゃんから手を離した。
「それじゃあ詳細を説明してくれないか?」
「はい、一度目の砦の攻略は失敗しました。敵に新型と思われるみたことがないロボットがいたことと、砦に砲台が設置されていました」
「砲台だと?」
「はい、砲台って敵に取られる前からついていたものですか?」
「いや、そんなものはついていなかった。敵が砦の防衛を強化させていたのか……」
やはり砲台は敵が設置したものらしい。真夕ちゃんは話を続けた。
「砲台による後方からの攻撃と、新型ロボットとの接近戦を強いられて、奪還は難しかったので一時撤退しました」
ナグモさんは神妙な顔つきで続きを促す。
「それで?」
「敵の防衛ラインより下がりまして、街に侵攻してくる敵を倒し、装備を強化しました。その結果、二度目の砦攻略で奪還することに成功しました」
「そうか。ありがとう!」
ナグモさんは両ひざに両手をあてて、頭を下げた。喜んでもらえたことが嬉しいらしく、真夕ちゃんも微笑みつつ続きを話す。
「それで今現在、他の三人が砦を守っています。ナグモさんの部隊も砦に行きますか?」
「ああ、もちろん。あの砦の守りを固めれば、この街の周辺の草原の更に外周には険しい山がそびえ立っている。砦だけ守れば敵は来ないだろう」
「わかりました。ではご報告いたしましたので、私たち三人も砦の警備に向かいます」
「ああ、頼む。それじゃあ俺はこれから軍部に指示を出してくるから」
そう言うとナグモさんは立ち上がり、応接室の扉を開けて出て行った。
「さて、あたいたちも早く砦に戻るか」
「そうだね。また砦を取られたら困るしね」
「そうですね」
あたしたちもソファーから立ち上がり、応接室を出る。ちなみにソファーは泥だらけである。使用人さんたちごめんなさい。あとはよろしく。
再びバギーとバイクで砦に向かった。帰りの運転手はあたしである。




