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第5話:野営

「そういえばアイテムがドロップしたね? 確認しようよ!」


 あたしは楽しみのあまりにわくわくしている。戦った後なのに元気である。


「そうですわね。レーションがあるといいのですが……」


 全員が一斉に確認をする。


「あ! あたしレーションあった! あとリペアキットと設計図となんか部品がいくつか」

「うちはレーションと部品やな」

「わたくしもレーションと部品ですわ」

「私はレーションとリペアキットと部品です」

「……レーションと部品です」

「あたいはレーションが二個と部品だな」


 一番ドロップの多いあたしに佳那子ちゃんが羨ましげに言う。


「花鈴は相変わらずリアルラックが高いな?」

「えへへ」


 あたしは頭を搔きつつ笑う。褒められているのだろう……多分。

 有森さんが手をパンと叩いて発言する。


「とりあえず機能停止にならないうちに、レーションを食べましょう。敵に見つからないように岩陰でもあればいいんですが……」


 見渡す限り草原。木はあるが岩は小さ目しかない。芹澤さんがおずおずと手を上げて提案してきた。


「……木の陰で食べたらどうですか? 六人で輪になって食べれば全方向に視界を向けれますし」

「それが良さそうですわね。岩ですと逆にこちらからも死角になってしまいそうですわね」


 そういうことに決まり手頃な木の所に向かう。あまり大木でも死角が大きくなってしまう。


「やっとご飯だぁ~! ところでどうやって食べるの? ドロップメッセージでは取得できたみたいだけど持ってないよ?」


 そう言うと有森さんがちょっと待って下さいねと言い、目を伏せて異世界知識を調べる。


「えっと……アイテムボックスと念じて下さい。そしてそこから必要な物を取り出すイメージで。アイテム類はお互いに交換できるようですが、設計図だけは脳内に固定されるタイプみたいなので取り出しは出来ませんね」


 みんなでアイテムボックスを念じてみる。するとレーションが出て来た。いや思っていたのと違うのでレーションなのか戸惑う。A4サイズの薄い板のような物。そして握り手があり鞄ともいえる。


「これがレーションか? それでこれをどうやって食べるんや?」

「ちょっと待って下さいね。えーっと、持ち手の中心に溝があるので、その溝を開く感じですね。開いたら水平にして傾けないようにして下さい。開いた左上の所にボタンがあるのでそこを押して下さい」


 あたしたちは言われたようにやってみる。持ち手を開くとA3サイズになり、まるでトレーのように見えなくもない。そしてボタンを押す。するとトレーのような物の宙にステータス画面のような物が現れた。

 それに何が書いてあるのか凝視してみる。料理のメニューリストのようである。しかもメニュー量が多い上に、ありがたいことに元の世界の料理名が書いてあるので、故郷の味が寂しくなることは無さそうだ。

 あたしはメニューをスクロールさせてみる。そこで目についたのはオムライスだった。ふと疑問がわく。果たしてレーションのオムライスとはなんだろう?

 あたしの中ではオムライスとはふわとろ卵をイメージしているが、レーションだと乾パンのように卵が硬くなっているイメージがある。だがお口は既にオムライス。葛藤しつつ人差し指をぷるぷるさせてオムライスを押した。するとダイアログ画面が出て来てそこに二つのボタンがある。決定とキャンセルだ。

 あたしが決定ボタンを押すとダイアログも料理メニューも消えた。

 その代わりに出て来たのが、ホログラムである。そのホログラムをまじまじ見るとお皿に乗ったオムライスの形をしたものと、コップがある。

 不思議に思いつつ眺めているとそのホログラムが実体化を始めた。そしてほかほかと湯気の立ちあがるオムライスが現れた。コップには透明の液体が入っており、口をつけてみると水であった。

 早速スプーンで一口分をすくう。口元に近づけるとトマトとコンソメの香りが湯気と共にふわっと漂う。そんなチキンライスの上に乗った卵は期待以上にとろとろだ。

 我慢できずに口に入れる。するととろとろ卵とチキンライスのハーモニーが素晴らしい。


「おいひい!」


 口に入ったまま感想を述べてから、ガツガツと食べる。あっという間にお皿の上のオムライスを平らげた。


「ふぅ~、なんか元の世界のオムライスよりも美味しかった気がするよ~」


 他の皆に視線を向けると、無心に食べている。みんなも美味しく思ったようだ。これはなかなか期待以上に良いレーションだ。

 するとおっさん幼女。もとい脇坂さんの独り言が聞こえた。


「あ~、酒うめ~」


 なんともつ煮を食べながらお酒を飲んでいる。


「脇坂さん、まさかドロップしたレーションを二つとも使ったのですか? しかも片方はお酒に……」


 有森さんが呆れ気味に言う。

 水はセットになっていたが、お酒は料理メニューリストの下にあったので別注文であろう。実際に飲食物は一つしか選べなかったし。

 そこへ二条さんが口を挟む。


「まあ、良いんじゃないですの? 脇坂さんのスキルは『酒飲みハイパーブースト』。お酒が関係しているかもしれませんですわ」


 そう言われると有森さんも何も言えない。言われて見れば確かにそうであるから。


「そうそう。あたいはスキルの実験をしているだけだよ~。それとあたいのことは恭子と呼んでくれていいから」


 そう言って更にお酒を口にする。有森さんはせめてもの抵抗か、恭子さんに質問をした。


「それで何か変化ありました?」

「いんや? わかんねぇ。まあ戦闘しないと分からないスキルかもな」


 ……お酒が入ったせいか完全に口調がおっさんである。見た目は可愛い少女なんだが……。

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