第43話:砦奪還会議
綾乃ちゃんと恭子ちゃんの次は、あたしと梓ちゃんが警備をする番。今、西側の鉄くずの壁の上にいる。
「綾乃ちゃん大げさだよね~。クマさんパンツでも別にいいじゃんね~」
「い、いやそれはちょっと」
梓ちゃんは今自分が履いているクマさんパンツが見えないように、スカートで隠した。現在、あたしを含めて四名に布教されている。ただ残念なことに梓ちゃんは下着の設計図が出たので退会してしまうが。
敵が来ないので話をするが、敵が来る気配もない。だが話題もない。
平和にぽけーっと青空を見上げていると、突然大声が聞こえた。
「わっ!」
驚いて後ろを振り向くと、大声の主は佳那子ちゃんであった。
「も~、脅かさないでよ」
「お疲れ。敵の様子はどうや?」
「ん~、来ないから暇」
「ち、ちょっと不謹慎ですよ」
「暇ならちょうどいい。会議するみたいやから二人とも来てくれって。」
あたしたちは立ち上がり、お尻をポンポンと叩いて、鉄くずの壁の階段を下っていく。
屋敷に戻り、いつも会議に使う部屋へと向かう。佳那子ちゃんが扉を開く。
「二人を連れてきたで」
そう言うと佳那子ちゃんは自分の席に向かう。あたしたちも自分の席につく。
会議の部屋には既にナグモさんに綾乃ちゃん、真夕ちゃんに恭子ちゃんも席についている。
あたしと梓ちゃんが座ると、ナグモさんは早速本題に入る。
「今の時点で戦力の強化はどうなってる?」
「えっと……」
真夕ちゃんが言葉に詰まる。そりゃそうだ。どこまで強化すればいいのかも、どこまで強化できるのかも分からないのだから。そこへ綾乃ちゃんが提案をする。
「戦ってみないことにはわかりませんわね。そこでまず偵察を兼ねて砦に向かうのはどうでしょう? いったん戦闘をしてみて、そのまま取り戻せそうなら取り戻して、駄目そうならひとまず撤退する」
「まあ、そうするしかないか……」
ナグモさんが顎に手を当てつつ、思案している。そこへ恭子ちゃんが口を挟む。
「花鈴と梓は暇してたから、会議に参加できたんだろ?」
「え? う、うん。それがどうしたの?」
「敵が減ってきたってことじゃね~のか? それなら砦の敵も減ってね~か?」
恭子ちゃんにしては冴えてる。いや、生活がダメ人間なだけで、頭はいいのかもしれない。
「敵が減っている? それは本当か?」
ナグモさんの言葉に恭子ちゃんが返事をする。
「多分としか言えないけどな」
再びナグモさんは思案する。そして口を開いた。
「それなら六人で砦を奪還してくれ! 先ほど綾乃が言った通り、偵察ついでの奪還で構わない。無理そうなら撤退してくれ」
「「「ラジャー!」」」
砦を奪還することが決まった。だが佳那子ちゃんがまだ疑問があるようで意見を述べた。
「砦に行くのは分かったけど、今から直ぐに行くのか? それとも日時を決めていくのか?」
その言葉を聞いて全員が悩む。あたしは真っ直ぐ上に手を上げる。
「はい! 直ぐでいいと思うよ。敵が減ってきたのは実は砦に貯めこんでいるのかもしれないし、それが一斉にこの街に向かってきたら大変なことになるんじゃない?」
「なるほど、その可能性もあるな」
「花鈴にしては冴えてるやないか」
「佳那子ちゃん、『花鈴にしては』は余計だよ」
あたしはほっぺたをむーっと膨れさせる。
ナグモさんは何やら大きな紙を取り出して机の上に広げる。
「ちょっとこれを見てくれ」
そう言われてあたしたちは席を立ち、ナグモさんの目の前に広げられた大きな紙を見に行く。地図であった。
そして地図を指差す。
「ここが今いるこの街だ。そして、この街の西側に砦がある」
ナグモさんは街を指していた指をスーッと動かして、砦の位置を示す。距離は分からないが、地図では道に沿って行けば砦に着くようになっている。
だがふと思う。街の西側に道は見えなかった。もはや戦闘の跡で地面はめちゃくちゃであった。現実世界のようにアスファルトでできていたら、残骸ぐらいはあったかもしれないが、この世界では自然とわだちができたという感じであろう。その程度の道ならば、簡単に戦闘跡で消えてしまう。
「ねえ、この地図に描いてある道って消えてるよね?」
「……ああ」
「迷子にならない? どうやって行くの?」
「大体の方向なら、あたいが分かる」
言われて見れば恭子ちゃんだけ方向が分かっている。失礼な話ですが野生の勘ですか? と思ってしまう。
「じゃあ、決まりですね。今から準備して向かいましょう!」
なぜか真夕ちゃんが張り切っている。




