第26話:入浴
浴場につくと、日本の温泉のようになっている。
「あれ? 大きいお風呂って温泉? ファンタジーってこんな感じだっけ?」
「う~ん? うちもファンタジーはよく分からんが、メイドさんが入浴して仕事の効率を上げるためにこうなっているとか?」
「あ~、メイドさん用か。お姫様とかだと一人で入ってるイメージあるしね」
そこへセシリーさんが説明をしてくれる。
「いえ、このお風呂はお客様用です。団体で入れるようになっております。メイド用は広さは同じくらいですがもっと簡易的な物です」
「まあそんな細かいことどうでもいいから、早く入ろうぜ」
恭子ちゃんは広いお風呂がお楽しみのようで、いつの間にか全裸になっていた。あたしたちも後れを取るものかと慌てて来ている物を、全部アイテムボックスにしまった。
セシリーさんにチラリと目を向けると、脱衣所の隅になる丸椅子に腰掛けた。
「ほら、花鈴、うちらも入ろう」
「うん」
そしてガラス戸を開けると中から温かな湯気が飛び出してくる。
「ひゃっほー!」
飛び込もうとした恭子ちゃんの肩を、あたしと佳那子ちゃんでそれぞれガシッと押さえつける。
「恭子、身体洗ってからにしろや。お湯が汚れるだろうが」
「そうだよ恭子ちゃん。大人の女なんだからそのくらいわかるよね~」
首をギギギと動かして、あたしたちの方を見る。
「お、おう。もちろんわかっているとも。何しろあたいは大人の女だからな。単なるジョークだよ」
……絶対にジョークではない。入ろうとする力が尋常ではなかった。
あたしたちは身体を洗う。観念した恭子ちゃんは頭からお湯を被り、『早く入りたい』という気持ちが丸見えである。一応恭子ちゃんも女の子だな~と初めて思ったかもしれない。
そしてあたしたちは身体を洗い終えると湯船にそっと足をつける。温かさがじんわりと身体に登ってくるようだ。
肩まですっかり浸かり、ほっと息を吐く。
「はぁ~、気持ちいい。やっぱり水浴びよりもお風呂の方が断然いいね」
「そうやな、もう水浴びはしたくなくなるな」
視線を恭子ちゃんに向けると、肩まで沈みつつ泳ぐように歩き回っている。大人の女というより子供の女の子のようだ。
すると突然、何者かに背後からガシッと胸を掴まれた。そしてそのまま揉まれる
「へ~、花鈴の胸、元の世界と同じくらいの大きさやな。ナノマシンレベルで構築されている身体も、弾力は同じだ。再現力凄いな?」
犯人は佳那子ちゃんであった。
「ちょっ! 佳那子ちゃん、やめ!」
あたしは佳那子の手を振り払い、佳那子の背後に回る。そしてお返しに揉む。
「佳那子ちゃんも元の世界と同じくらいだね」
「やめいや!」
自分からしてきたのに、やめろとは納得いかない。だが堪能……いや、実験は終わったので手を放す。
あたしと佳那子ちゃんは恭子ちゃんに視線を移す。
あたしたちと視線があった恭子ちゃんは、慌てて胸を両腕で抑える。
「や……やめろ」
そう言われたが、元々やる気はない。だって揉むものがないんだもん。あたしたちは再び肩までお湯に浸かった。
「ごらぁ! なんでやらないんだよ! そこはやる流れだろうが!」
「いや、ほら、なあ? 掴みどころがないと……」
佳那子ちゃんは遠回しに言ったつもりのようだが、ほぼドストレートである。恭子ちゃんは涙目になりつつ胸を隠すように湯船に肩まで浸かった。
さっぱりしたし、お風呂から上がる。するとセシリーさんが立ち上がり、バスタオルをあたしたちに一枚ずつ手渡してくれた。
そして洋服も「それぞれこちらに用意してあります」と手を添えつつ説明した。
各自洋服を着てみる。着方が分からずセシリーさんに教えて貰いながら苦戦しつつ着る。
「わぉ! サイズピッタリ」
「うちもやな」
「てっきりだぶだぶの服を用意されると思ってたんだけど、なんでピッタリなんだ?」
「これでも長年メイドをやっておりますから、お客様のスリーサイズなどは見ただけでわかります」
そう言われるとなんか恥ずかしい。人間メジャーか。恭子ちゃんは腕で胸を抑えつけて、ぷるぷると震えている。恭子ちゃんの胸のサイズがセシリーさんに完璧にバレた瞬間であった。




