第20話:女子会? いえ会議です
あたしたちはアルフさんについて行く。そして一つの部屋を案内された。
「どうぞこちらをお使い下さい」
そういいつつ扉を開ける。部屋は広く、ちょうどベッドが人数分配置されている。まさかあの短時間でそこまで手際よく準備したわけではないよね? なんてことを考えていたらまるで思考を読まれたかのようにアルフさんが答える。
「こちらはメイド用の大部屋でして、ちょうど六人用となっております。では敵が攻めてくるまでごゆっくり。本来なら夕食までごゆっくりと言いたいところですが、残念なことにそうも言えない状況でして……」
「わかってるって! あたいたちに任せとけ!」
恭子ちゃんは馴れ馴れしく、アルフさんの背中をバンバンと叩いている。貴族の執事に見えるので、無礼なことをしているみたいで、見ているこちらがハラハラする。
「では、失礼致します。あとで臨時ではありますが、あなた方のお世話をさせて頂くメイドを寄こしますので」
アルフは頭をぺこりと下げてから、部屋を出て行った。
「恭子さん、アルフさんの背中をバンバン叩くのはどうかと思いますが……」
真夕ちゃんが私の心の内を代弁してくれた。
「まあ細かいことはいいじゃないか。それにしても人間相手だと自動でパワー調整できるんだな? うっかり気にせず普段通りに叩いちまったが、アルフが死ななくて良かったよ」
「はぁ……全くですよ。私も今、異世界知識で調べたところですが、オートパワー機能で人間が相手の場合は、人間並みの力になるみたいですね」
言われて見れば確かに! 敵のロボットと同じ威力の背中バンバンだったら、アルフさんが死んでたよ!
「まあ結果オーライってことでいいんやないか?」
「そーだ! そーだ!」
佳那子ちゃんが甘やかしたから、恭子ちゃんがつけあがった。
「んじゃ、早速ベッドにダイブ!」
と言いつつ、ベッドに走り出した佳那子ちゃんの背中のアーマーを、グイっと綾乃ちゃんが引っ張って止める。
「ぐえっ! なにすんや?」
「そんな埃まみれでベッドに寝っ転がるつもりです? わたくしとしては許せませんね……」
綾乃ちゃんの圧に、佳那子ちゃんが屈する。あたしもベッドに飛び込もうと考えていたので危うかった。佳那子ちゃん、君の勇士は忘れないよ……。
「と、とりあえず、先ほどのドロップアイテムと製造できた装備の情報を、共有しましょうか」
真夕ちゃんが手を両手でポンと叩いて、場の空気を変えることを試みた。その試みは成功した。
「そうですわね」
そういうと綾乃ちゃんは手を放して、佳那子ちゃんは釈放された。
あたしたちは大きな丸い形の絨毯に座った。
「はい! あたしは下着の設計図と部品、あとはいつも通り。グレネードランチャーは出来上がったよ!」
それを聞いて全員がぐるりと顔をあたしの方に向けて、じろりと見る。
「今……なんとおっしゃいました?」
「うん? グレネードランチャーができたって言ったけど?」
「その前ですわ」
「下着の設計図」
「それです! 下着の設計図なんかあるんですか?」
「あ~、あるみたい……だね?」
綾乃ちゃんの目が恐い。怖さを感じ取ったのか、梓ちゃんが刑を軽くしようと考えたのか、手を上げて自首する。
「ぼ、僕も下着の設計図が出ました」
あたしの方を向いていた綾乃ちゃんがぐるりと首を回して、梓ちゃんを今度は睨む。
「な、なんですって……」
「あ、綾乃ちゃんは下着の設計図は出てないのかな……?」
怯えつつ聞いてみる。
「……ないですわ。わたくしのドロップアイテムはアサルトライフルの設計図、部品とあとはレーションなど。バルカン砲はできてますが先ほどの戦闘中にははめれませんでしたの」
……悔しそうな表情が見ていて居たたまれない。梓ちゃんが必死に話題を戻そうとする。
「ぼ、僕のドロップアイテムは設計図以外は部品とレーション、それにリペアキット。完成したのは戦闘中に使っていたスナイパーライフルだけです」
「うちはクローの設計図が出た。これって格闘用の爪ってことかな?」
「そうですね。手の甲にハマるもので、爪の出し入れができますね」
佳那子ちゃんは、ほーっと感心しているようだ。どうやら格闘戦がお好みらしい。
「あたいはバズーカ砲の設計図だ。あとはリペアキットと部品だな。それともう一つの80ミリキャノン砲ができたから、あとで左肩にもはめてくれ」
「はい。わかりました。では最後は私ですね。設計図はバイクですね。通信機200が完成しました」
「「「バイク?」」」
全員が頭に疑問符を浮かべている。あたしもバイクってどこに装備するんだ? と考え込んだ。
真夕ちゃんがみんなの驚きを宥めつつ説明する。
「現実世界にもある乗り物のバイクですよ。二人乗りです。ただし戦闘用なので強度は高いですし、スピードも出ます。アイテムを製造すればバイクにも装備をつけれます」
「「「おお!」」」
歓声が上がった。まさか専用の乗り物まで作れるとは、思いもしなかった。
「なあ? バイクってことは部品がかなりいるんじゃね?」
原付に乗って、あたしたちのバスに轢かれた恭子ちゃん。原付に乗っていたのならバイクのパーツが多いのは、見ただけでも分かるのであろう。まああたしでも大体想像はつく。
「そうですね。時間はかかると思います」
「な……なあ、バイクが完成したら、あたいにくれないか?」
「え~、嫌ですよ。自分で作ればいいじゃないですか」
「あたいは花鈴みたいにリアルラックが高くないんだよ……」
うな垂れつつ涙目になる。どうやらバイクが好きな子らしい。
「じゃあ完成したら、恭子さんが運転して下さい。それで私を後ろに乗せてくれればいいですから……」
真夕ちゃんが観念した。所有者が真夕ちゃんで運転手が恭子ちゃんと決まった。




