第19話:屋敷へご招待
「さて、とりあえず話はこのくらいにして、おまえさんたちが希望している住処の提供とするか」
「「「はい!」」」
やったね! 街に住むことができる。あのまま野営でもしてろとか言われてたら悲しすぎるよ。
椅子から立ち上がったナグモさんについていく。
城を出てさらに軍のエリアも出たようで、一般市民で賑わい始めた。物珍し気にキョロキョロと辺りを見ながら歩いていく。
小さな子供たちが群がってきた。そして男の子が聞いてくる。
「さっきの敵をやっつけたのって、姉ちゃんたちなの? すげえんだな!」
少年は目を輝かせて興奮している。まるで希望を得たかのように。そんな少年にあたしは答える。
「そうだよ。お姉ちゃんたちがあいつらをやっつけてやるからね」
胸をドンと叩き『任せなさい』と言わんばかりに胸を張る。
そんな子供たちは歓声を上げるが綾乃ちゃんに水を差された。
「花鈴さん……置いて行きますわよ?」
慌てて私は、子供たちに手を振りお別れしつつ、みんなの所に戻る。
しばらく歩いていくと、大きなお屋敷の数が段々と増えてきた。恐らく貴族が住むところであろう。そんな豪華な所に住めるの? と期待に目を輝かせてしまう。
そして、とあるお屋敷の門で立ち止まった。
「この屋敷を使って貰う。執事や使用人たちも住んでいるから話はつけておいた」
「「「おおっ!」」」
大絶賛である。野営とは大違いの生活ができそうだ。お姫様のように暮らすあたしがほわんと妄想される。
「さあ、中に入ろうか」
門を開けて中に入ると、庭が綺麗に手入れされている。まるで草花が歓迎してくれているようだ。
あたしは鼻歌混じりについていく。すると庭師がいて、声をかけてきた。
「おかえりなさいませ。イアン様」
「ああ」
なんか素っ気ない感じがする。先ほどは普通にあたしたちと会話をしていたのに、どことなく悲しそうに感じるのは気のせいだろうか?
そのまま庭を進んで行き、建物の扉を開けた。すると広々としたエントランスにシャンデリア。まさにファンタジー世界の貴族様って感じ。
中に入ると漫画とかでありそうな光景。執事と思われる人とメイドたちがずらりと並んでお出迎えをしている。
「おかえりなさいませ。イアン様。そしてようこそお越し下さいました。お客様。私はこの屋敷の執事のアルフレッド・テイラーと申します。お気軽にアルフと呼んで頂ければ」
どうやらあたしたち『お客様』がくることはすでに連絡はしていたらしい。そういえば先ほど『話はつけておいた』と言っていたようだが、いつの間に?
「一人一つの部屋がいいか? それとも六人一緒の方がいいか?」
あたしたちは「う~ん?」と悩む。あまりにも圧巻でお姫様のような豪華な部屋を使う気にはなれない。まあ憧れはあるけど。そんなことを考えていたら真夕ちゃんが答える。
「六人一部屋の方がいいですね。敵が現われたときにわざわざ全員を起こしに行くのは大変ですから」
そんなことを言いつつ、あたしの方をチラリと見た。いや、お寝坊しないよ? 多分。
「アルフ、この子たちを手頃な部屋に案内してやってくれ」
「かしこまりました」
それだけ言うと、ナグモさんは「それじゃあまたな」とだけ言い残し、屋敷を出て行った。




