第16話:初の防衛戦
そして、戦闘開始。敵はムカデ、カマキリ、蜘蛛がそれぞれ三体ずついる。バッタに戦闘力がありそうには思えないので偵察型なのかもしれない。
とりあえず佳那子ちゃんが戻ってきたときのことを考えて、カマキリを先に相手にする。敵が鎌を振りかざし、あたしはそれを紙一重で避ける。髪の毛が数本掠ったのか、斬れてぱらりと風に舞った。危な!
追撃のもう片方の鎌をあたしの片手剣で受け止める。どうやら強度的には対抗できそうだ。
カマキリは二刀流。……ずるいよ。回避と剣で受け止めつつ、隙を見てこちらも斬撃を与える。そんな戦いをしていると背後から蜘蛛型がやってきた。蜘蛛型の方にバク転しつつ剣で蜘蛛型を切り裂く。この身体の身体能力に慣れてきたせいか、思い通りに動いてくれる。着地をして蜘蛛型を見ると動かなくなった。倒したことを確認してすぐさま周囲の状況を見る。別のカマキリ型が向かってくる。あたしは剣で受け止め、思わず足で蹴りを入れた。
そうじゃん! 何も素直に相手の土俵で戦わなくてもいいじゃん! カマキリ型は鎌で戦うけど、こっちは蹴りでも殴りでもありだ! それと同時に綾乃ちゃんの戦い方を思い出す。ヒット・アンド・ウェーだ。
あたしは綾乃ちゃんを真似て、攻撃しては後退する。敵の鎌を空振りさせる分、剣を攻撃に使える。
剣でカマキリ型ロボットの胴体を横なぎに切り裂いた。カマキリ型の上体がずんと音を立てて地面に落ちる。そして目の光が消えた。次! 三体目。
次のカマキリ型に向かうところで、佳那子ちゃんが帰ってきた。
「ごめんごめん。ちょっと手こずったわ。敵がぴょんぴょん飛び跳ねるもんやから」
そう言うと佳那子ちゃんも戦闘に加わった。援軍が来てちょっとほっとした。
「佳那子ちゃんはムカデ型を優先で倒して! 下手に斬ると分散して敵の数が増えちゃうから!」
「わかった!」
あたしもカマキリ型を優先する。蜘蛛型はさっきと同じように、ちょっかいを出して来たらついでに倒す感じだ。カマキリ型と攻防を繰り返し、二体目も倒す。ムカデ型が襲いかかってきたが、回避に徹して攻撃はしない。蜘蛛型も攻撃てきたので応戦する。
牙で噛みつこうとする蜘蛛型を剣で切り裂く。リーチ的に蜘蛛の牙よりこちらの剣の方が長いので有利である。
次に倒すべき敵を探そうとすると、佳那子ちゃんがムカデ型の一体目を倒していた。
あとはムカデ型が二体に、カマキリ型と蜘蛛型が一体ずつか。
心に余裕ができた。だがその余裕のせいでカマキリ型の攻撃を首元に受けた。血、もとい冷却オイルが首を流れ、血の気の引く感覚がある。あたしの身体はマシンボディだから気のせいとは思うが、心理的にはヒヤッとした。
冷却オイル漏れが激しいので左手でアイテムボックスからリペアキットを取り出して、首元に打ち込む。使い終わったリペアキットをそのまま敵に投げつける。敵は鎌でそれを弾き、あたしはその隙に敵に攻撃をした。
カマキリ型の三体目も撃破。あたしのノルマ的にはあとは蜘蛛型を一体倒すこと。蜘蛛型に視線を向けて襲い掛かる。蜘蛛型の正面を斬ろうとしたら、敵が回避したので敵の右側の脚を偶然にも四本とも切り落とした。敵は思うように動けなくなりもがく。あたしはそこへ余裕の一撃で蜘蛛型ロボットの胴体を貫く。八つの目の光が消えて、機能停止となる。あとはムカデか。
佳那子ちゃんの方に目を向けると、二体目も倒していた。あのムカデ、ばらけると厄介なのに余裕そうに倒しているのは佳那子ちゃんのスキルの賜物であろうか?
そんなことを考えつつ、片方のCPUコアで設計図の様子を確認する。グレネードランチャーが出来ていた。早速製造をして、アイテムボックスから取り出す。しかし思っていたのと違う。手で持つタイプでなくてマウントにはめるタイプのようだ。今はその余裕がないので、やむを得ずアイテムボックスに戻す。そして佳那子ちゃんの援護に回る。
佳那子ちゃんをメインにムカデ型と戦う。佳那子ちゃんが殴る蹴るで敵をぼこぼこにしている。その様子をみてあたしは『剣を鞘に収めて素手で戦えばいいじゃん!』という結論に今更ながら辿り着いた。
二人でムカデ型を撃破して、ほっとしたのも束の間。
「真夕と梓を援護に行った方が良さそうやな」
「じゃあ、あたしは綾乃ちゃんと恭子ちゃんの援護に行くべき?」
「いや、あの二人は大丈夫やろ。綾乃はスキルがあるし、恭子はキャノン砲という強い武器を持っとるわ」
なるほどと思いつつ、真夕ちゃんと梓ちゃんの援護に向かった。




