第12話:夜間戦闘
その後も何度か戦い、ドロップアイテムを手にした。夜になり今日も野営。水浴びを体験してしまうとまた浴びたいが、近くに水場はない。
野営でレーションを食べつつ愚痴をこぼす。
「日中の綺麗な池みたいなところがあったらよかったのにね~。そういう場所で休憩したかった」
そう言い辺りを見渡す。ただただ広がる草原である。まあ暗いのであまり遠くまでは見えないが。
「そうそう都合よくいくわけないだろ。日中に水浴びできたのがラッキーなんだよ」
恭子ちゃんに正論を言われてしまった。なんかこの人の言うことに負けた自分を情けなく感じるのは、果たしてこの人物の人柄のせいか?
「まあそやな。池だからよかったけど、湖とか大きなところだったら、うぼーッと水の中から敵が出てくることもあるかもしれんもんな」
「……まあそうですけど……わたくしともあろうものがお風呂に入れないで埃まみれとは……」
綾乃お嬢様ががっくりとうな垂れている。流石にお嬢様には辛い現実か。
普段あまり話をしない梓ちゃんが話題を振る。コミュ力が高いとはいえないのに綾乃ちゃんが可哀そうに思えたのであろう。
「あ、あの、今日のアイテムドロップ、みんなどんな感じでした?」
ここら辺は学級委員長である真夕ちゃんとは違い、自分からは話しづらいらしい。なので、あたしから報告しようではないか。あたしは元気よく手を上げる。
「はい! 設計図がグレネードランチャーで、部品がたくさん。グレネードランチャーの設計図は七割は埋まってる。あとはレーションにリペアキット、それに蘇生装置」
「花鈴、蘇生装置が出たんか? それドロップ率低いんか? リアルラックが高い花鈴がドロップしてもわからんな? うちは設計図はアクチュエーター。希望してたんがきた! って感じやな。あとはいつも通り部品とレーション、それにリペアキットや。アクチュエーターはまだ残念ながらまだ三割やわ」
佳那子ちゃんのアクチュエーターが出来上がったら、ジェネレーターもあるし暴れまくりそうである。
「わたくしは弾倉が出ましたわね。設計図はバルカンですわね。設計図は八割埋まってます。あとはレーションにリペアキット」
「私も弾倉が出ました。設計図は通信機200です。この200というのも梓さんの索敵レーダーと同じで距離を指しているのかもしれませんね。他の人も持っていないと通信する人がいませんが……。まだ二割ってとこです。他はレーションにリペアキットですね」
「……ぼ、僕の設計図はスナイパーライフルです。進捗は八割です。あとはレーションにリペアキットです」
「梓さんは後方支援という感じの装備が多いですわね?」
「そ、そうですね。まあみなさんには悪いですが、僕は怖がりなので遠くから攻撃の方がいいんですが……」
そこへ静観していた幼女が口を挟む。
「自分なりの戦いをすればいいんじゃねえか? 梓にはその戦い方ができる装備が手に入ったからそれはいいことだ。卑屈にならなくていいんじゃね?」
至極まっとうな意見である。ダメ親父幼女の株が少しだけ上がった。
「……あたいの設計図はまた80ミリキャノン砲なんだが……最初のは完成してる。あとはレーションとリペアキットだ」
恭子ちゃんが涙目になっている。新しいのが欲しかったんだね。うんうん、わかるよ。
「ま、まあ両手で使えば攻撃力が上がりますしね」
真夕ちゃんがフォローを試みるも、本人は落ち込んだままである。あたしもフォローを手伝う。
「き、恭子ちゃん! 恭子ちゃんの80ミリキャノン砲を見てみたいな~?」
なんとなくわざとらしい言い方になったが、涙目少女は突如自慢げになる。
「そうか? 仕方ないな~、見せてやるよ」
そう言いつつアイテムボックスからキャノン砲を出した。
「ん? 持ち手がないな?」
「肩につけるタイプですね」
真夕ちゃんが異世界知識で調べたらしい。みんなでキャノン砲を持ち、恭子ちゃんの右肩にはめる。長い砲身がなんか恰好いい。
「なんか重装アーマーだし、キャノン砲をつけるとごっつい感じだね?」
「まあそれはいいが、右側が見づらくなったな? 真夕、補助用の小型カメラ見たいのないのか?」
「えっと、ありますね。アーマー自体に内臓できるようなので、入手したら肩のアーマーの側面につけるといいと思います」
そんな話をしていると、梓ちゃんが声を上げた。
「索敵レーダーに敵が入りました! こちらに向かってきています」
「お? 早速あたいのキャノン砲の出番だな?」
「梓! 方向どっちや?」
そう言われて梓ちゃんは敵の方向を指差す。だが敵影は見えない。暗いせいで視界が狭い。
「上の方で何かが光りましたわ!」
一斉に見上げる。八つの光る眼と思われるものがこちらに近づいてくる。空を飛んで来るとなると蜘蛛型ロボットではないだろう。ということは二つ眼が四体いるということだろう。あたしは剣を抜刀して身構えるも、すぐに剣が役に立ちそうもないことに気付き、恥ずかし気にこっそりとしまった。
「よし! 空か! あたいのキャノン砲の出番だな!」
嬉しそうな恭子ちゃん。今までこれといった活躍できなかったもんね。
段々と敵の姿が見えてきた。どうやらフクロウ型のロボットのようだ。
「……フクロウですけど、実際のフクロウと同じように夜目が利くのですかね? 索敵レーダーよりも早くこちらを捕らえましたみたいですし」
なるほど、そのように作られている可能性もある。というか正確に言うと可能性がないとは言えない。
「この距離なら行けそうな気がする! 撃つぞ!」
ドン! と音を立てて恭子ちゃんが砲撃を開始した。その砲弾は一体の敵に当たり爆発した。
「よっしゃ! まず一体目!」
いつの間にか真夕ちゃんと綾乃ちゃんがハンドガンを抜いている。届くかどうかわからないけど一応準備しておいたというところであろう。それにしても恭子ちゃんは右耳のすぐそばで発射音が盛大に上がったが、耳は平気なのだろうか? 本人だけ平気な仕様になっているのかな?
こちらの武器を判断したのか敵が散開する。そして敵も胸の所のマシンガンらしきものを撃ってきた。
「わわわっ」
あたしたちはそれを必死に避ける。不幸中の幸いか敵が発射位置が分かるようにトレーサー弾でこちらからも弾道が見える。
開始しつつ綾乃ちゃんがハンドガンを撃ってみる。
「まだ届きませんわね……」
冷静である。あたしなら「チェッ」っといじけているだろう。恭子ちゃんが次弾を撃つ。ヒュゥゥゥと飛んでいきまたしても敵に命中する。砲弾に追尾がついているようには見えない。恭子ちゃんの射撃実力であろう。
残り二体となった。敵はロボットの為、焦りというものは無いだろうが、命中率を上げようとしたのか更に接近してマシンガンを撃ってきた。
綾乃ちゃんがそれを躱しつつハンドガンをパンパンパンと連射する。その射撃は見事な物で、敵に命中して墜落した。それを佳那子ちゃんが走って近付き足でゲシゲシと踏みつけてとどめを刺した。残りあと一体!
敵は距離を取った。どうやら逃げようとしているように見える。
「逃がさねえよ!」
背を向けた敵に恭子ちゃんの発射した砲弾が命中して、敵を全滅させた。
「よっしゃ! どんなもんだい! あたいだってちゃんと装備があれば敵を倒せるんだぜ」
確かにそうかもしれない。恭子ちゃんは今まで攻撃力となるような武器がなかったから。
「逃げられなくてよかったですね。増援を呼ばれていたかもしれません」
真夕ちゃんの言うとおりである。増援が大量に来ていたら弾薬も尽きそうである。
「よしよし、キャノン砲の弾薬も入手出来たな」
嬉しそうであるが、これからあたしは恭子ちゃんががっかりしそうなことを報告する。
「えっと……暗視装置の設計図を手に入れたよ」
あたしは困りつつ頭をぽりぽり掻きながら恐る恐る言った。恭子ちゃんの首がぐるりとこっちを向き、恨みがましそうな顔をしている。
「私も暗視装置の設計図が手に入りました」
バッと恭子ちゃんが真夕ちゃんの方に振り向く。
「……ぼ、僕もです」
恭子ちゃんは目を見開いて、梓ちゃんの方向を見た。
「活躍したのあたいなのに、設計図出てないぞ!」
地面に寝転がり駄々っ子になった。手足をバタバタとさせてた。




