第10話:水浴び
梓ちゃんを先頭に進んで行く。しばらく進むと大きな池があった。あたしたちは池の中を覗き込む。水が綺麗に透きとおり、池の底が見える。このくらいなら足がつきそうだ。
「ひゃっほ~! 水浴びができる!」
あたしは無意識にアーマーも下着もアイテムボックスにしまい、池の中に飛び込んだ。
「あ! 花鈴ずるいぞ!」
佳那子ちゃんも全裸になり池の中に飛び込んできた。
「みんなも早くおいでよ~! 気持ちいいよ~」
視線を他の四人に向けると呆れ顔をしている。
「いや、流石にちょっと恥ずかしくありません?」
綾乃ちゃんが顔を引き攣らせつつ言う。
「私もちょっと……人目はないけど露出狂ではないので……」
「ぼ、僕も恥ずかしいかな」
そこへ恭子ちゃんが綾乃ちゃんと真夕ちゃんの腕をガシッと掴み、池に飛び込む。
「おりゃあー!」
三人が池にどぼんと飛び込んだ。いや正確に言うと飛び込んだのは一人で、二人は巻き添えを喰らった。
池の中にいるあたしと佳那子ちゃんも顔を合わせてにやりと笑う。
二人で池からあがり、手をワキワキしながら梓ちゃんににじり寄る。
「ひぃ!」
梓ちゃんがじりじりと後退る。そんな梓ちゃんを捕まえると、あたしと佳那子ちゃんで両腕を掴み、そしてそのまま池に投げ込む。
「きゃあぁぁぁ!」
断末魔のような叫び声をあげつつ、梓ちゃんは池に落ちた。それに続いて再びあたしと佳那子ちゃんも飛び込む。
三人は諦めて装備品をアイテムボックスにしまい裸になった。恭子ちゃんはその前に既に脱いでいる。中身おっさんの幼女は恥じらいがないのであろう。
「……こんなことなら初めから脱いで入るべきでしたわ……アーマーはともかく、下着がぐっしょりと濡れてしまいました……恭子さん、どうしてくれるのですか?」
真夕ちゃんも同意して頷く。だが当の本人の恭子ちゃんはどこ吹く風と口笛を吹いて誤魔化している。
「……花鈴さんと佳那子さんも同罪ですよ……」
梓ちゃんに恨みがましく見られてしまった。
「まあまあ、日差しが強いからすぐに乾くよ~」
オコな三人を宥める。だがため息をつき諦めた感じである。まあ池に引きずり込んだ三人の性格を考えると言うだけ無駄と判断したのだろう。
梓ちゃんが恥ずかしそうに池の水に肩まで浸りながら、疑問を口にする。
「日差しの暑さや水の冷たさを感じますが、僕たちは神経があるのでしょうか?」
「神経はありますね。温度を感じないとオーバーヒートしてしまいますから。ちなみに私たちの髪の毛。普通に見えますが、実はこれは放熱板の役割をしています」
「頭の中にCPUコアがあるってことでしたよね? それを冷やすみたいな?」
「そうですね。まあまんまパソコンを頭に思い浮かべてくれれば、わかりやすいかと」
あたしもその説明はわかりやすかった。なるほど。自分がパソコンになったと思えばいいわけか。
話をしながら各自汚れた身体を洗い流した。まあ汗はかかないけど戦闘で汚れたのでそのままでは気持ち悪い。
全員、水浴びを終えて池からあがり下着とアーマーを身につける。
「……下着とスカートがびっしょりで気持ち悪いですわ……」
「ホントですよ。まったく」
「……」
「「あははは」」
あたしと佳那子ちゃんは乾いた笑いをするしかない。もう一人の共犯者は何事もなかったように振る舞っている。
「さて、街探しを再開しますか」
みんなが真夕ちゃんの言葉に同意して更に歩みを進める。




