委託
大原がなにか、本を取り出した。こう書いてある。
(七月十七日)
幕府は、秘密裏に都市復活を成功させた。海との交流を盛んにしたかったからだ。鎖国中の今、近代的な力を手に入れたかった。恐らく、水中都市は日本だけにあるのだろう。強固な国を作らねば。と幕府の人間が云う。
大原がページをめくる。衝撃的なことが書かれていた。
(七月二十日)
極秘。研究後わかったことがある。水中都市のある地点に時間の歪みあり。注意しなければならない。
満月の夜。要注意。むやみに近づいてはならない。確かに、あそこには時間という概念が存在しないように思える
(八月二十四日)
今日、幕府に追放された。明後日。あの謎を解き明かす。
(八月二十七日)「大変だ。もう取り返しのつかないことを幕府がしてしまった。どうにかこの事態を収束させるため尽力する」と書いてあった。そのあとは、ずっと白紙だった。
桜の日記だったのだ。
大原 「さっき、力の話をしたわよね。」
「はい。」
「力とは特殊能力のこと。特殊能力を君たちは持っているのよ」
「どういうことですか」その根拠はどこにあるのだろうか。一体、俺に何があったのか。今まで生きてきて自分でもわからないことがあったのか。なぜ、大原は知っていたのか。疑問が積もるのみだ。その時、鬼島がこそこそとポケットに手を突っ込み、しわしわの紙切れを出した。
「僕が桜の子孫ってことは、言ったけど。うーんと、ここ。これ見て」紙には、呪文らしき文字が書かれている。「えーっと、ここが、僕」鬼島が蓮司と書かれた部分を指さす。名前の隣に共有能力と記されていた。
「共有能力、これが、僕の特殊能力。僕の家系は皆このような能力を持っている」「共有能力?一体どんなものなのか教えてくれ。」
「誰かの持つ特殊能力を他の人と共有できるんだ。」と、抽象的なことを言う鬼島に俺は突っ込んだ。
「うーん、さっきから頭がついていかない。まずじゃあ、特殊能力から。その能力の具体例ないの。」イライラしている俺の様子に鬼島は落ち着いた口調で、「家族の能力を共有できた。家系上、鬼島家は全員特殊能力を持って生まれる。桜の影響だろうね」戸惑う俺らを横目に続ける。
「君たちにも能力が備わってしまったことには申し訳なく思っている。運命のいたずらさ」またもや意味深のことを言う。再び例の紙切れを広げ、次は蓮司と書かれた部分の下の方を指した。(友・道連れ)と記してあった。「どういうこと。親からあなたの家系については説明があったけれど、」どうやら亜美もここからは知らないようだ。それから暫く説明があった。要約すると桜から八世代後が鬼島 蓮司らしい。本来、鬼島家が持つ特殊能力は他の人には表れない。それはそうだ。だから、他言はなかった。鬼島家が長年隠してきた。しかし、蓮司の二つ目の能力のせいで俺らにも能力が生じてしまったというのが大まかな説明だった。そして、二つ目の能力が「四つの委託」というものであること。複雑で分かりづらい。