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水中探査と君  作者: 大山 治郎
三章後半
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富士の山 登山最終回

「ヒュー、ヒュー、、、」


雪山はこんなものだ。

 目を覚ますと辺りはもう真っ暗で、それが俺に多少な孤独を感じさせた。人類史上初であろう偉業を現在進行形で成し遂げる俺は、富士の山頂で眠る人間。眠りに眠ってしまったためこのまま寝続けることは不可能だと判断した。景色など見ように見える明るさではないのだ。無闇に動き出すこともできない。今何時だろう。

 時計を見ると1時50分と指してあった。奇しくも丑三つ時までもうすぐだという時に目を覚ましてしまったのだ。丑三つ時というとこの世の物ではない何かが動きを強める時間である。この神々しい富士には彷徨うものがいるとは思う。だから、ここは静かに悪夢の時間を耐え、夜が明けるのを待つことにする。幸い、防寒対策はバッチリで龍三さんから食料と水を貰っていた。ひっそりと身を潜めながら太陽が早く顔を出すことを望んだ。


 「ギシギシ」「コンコン」


「ギシ、、、ギシ、、ギシ」「トン  トン」


 「ビュー ビュー」

 

吹雪のに何かの音が混じる。


 毛布を被り、辺りを見ないようにしながら俺は思った。(この音おかしくないか?風の音に何かが紛れ込んでいないか。)思考を巡らせているとピタッと全ての音が消えた。むろん、雪が降り積もる音もなくなった。まるで鉄筋コンクリートに囲まれ、防音対策が整った部屋に閉じ込められているようだ。だが、肌寒さが消えることはなかった。むしろ、先程よりも寒い。


「テクテク、テクテク」(ん?足音?)

いや気のせいだろう。俺はそう言い聞かせた。

長い間、耐え凌いだ気がする。時間を確認しよう。時計に目をやると2時12分と指してあった。


 おい、まじかよ。体感、結構経っていた。2時間は経っていると思っていた。だが、時が経つのが遅すぎたのだ。想定外な事態に頭が真っ白になった。身を潜め、息を殺しその音が止むをの待った。


「ピタリ」

微か(かすか)に聞こえていた足音が止んだ。俺は鳥肌が立った。目の前に何かがいるのだ。紛れもなく何かがいる。暗くてよく見えないが唯ならぬ気配を感じていた。


 沈黙が続く。目を閉じても何かの気配が消えることはなく、恐ろしさが募るのをやめなかった。俺は決めた、耐久することを。太陽が顔を出すまでこの地獄の時間を耐え、外に出ようと。すなわち、日の力は魔物を寄せ付けやしないだろう。

 体感数十分の耐久をし、時計に目をやると、時刻は3時5分であった。丑三つ時はとうに過ぎており、魔物が消えたのであろうと感じた。「ふうーー。」全身から嫌な緊張が消え、楽になった。気配も感じなくなったのだ。これは、もう勝ったと言っても過言ではないだろう。安堵が来たことで、すっかりと眠気が襲ってきたのだ。俺は眠りにつく。


 誰だこの子は?この可愛い子は誰だ。気がつくと俺は5合目にいた。そして、物凄く可愛い少女と出会っている。予測するに同い年くらいの少女は、茶髪にスタイルがよく、都会でも見ないくらいの絶世の美女であった。俺が見惚れているとこの子が話しかけて来た。

「宗太さん、調子はどうですか?私はあなたを知っています」 むろん、動揺が走る。なぜ俺の名を知っているのだろうか。

「どうして、俺のことを知っているのですか」

「それは、ねー。秘密です。起きてください!」

その声で俺は起きた。目を覚ますと目の前にこの少女がいた。ここは山頂、現実世界だ。夢の世界で見たこの子が現実に現れたのだ。

「うわー!」

俺は怖くなって端の方へ逃げた。

「テクテク、テクテク」聞き覚えのある音が近づいてくる。

「来るなー!」必死に叫んだ。だが、期待と裏腹に少女が少しずつ距離を近づけてきた。逃げ道は、もうない。俺は詰んだのだ。


「はあー、あなたの正体を明かしてください。」

「わからないのですか?」いや、わかるわけ無いでしょうが。誰だよ、この子。こんなに可愛い知り合いはいないよ。

「それでもあなたは勇者なのですか?」はて、俺は勇者ではない。何を言っているのでしょう。

「祖父からあなたのことを聞いているんです。」


祖父だと、誰のだ。鬼島のか、修一のか。

誰かの従兄弟なのか。では、この秘密も知っているのだろうか。だが、無闇に話してはならない。国の者かもしれないからだ。用心して

「では、誰の孫なの?君は」落ち着いて問いただす。

「え、知らないんですか。私の祖父は龍三爺さんですよ。」

「え!あー、そうなの?あーね。」

この子は龍三さんの孫であった。龍三さんとちっとも似ていなかったため、想像が付かなかった。

「それで、私も深海に連れて行ってください。役に立ちます」

「え、来てくれるの?」俺は嬉しかった。仲間が増えるということよりも絶世の美女と共に過ごせるからである。もはや、この少女がいさえすれば、どんな困難も乗り越えられる気がした。

「わかりました。だから、君の名前を教えて。」

「ありがとう!私はさきと言います。よろしくね!」と万年の笑みで言ってきたので、

「あ、はい、よろしくー、お願いします」と変な声で返事をしてしまった。幸先が悪いなぁ。

「宗太くん、早速深海に行きましょう。これで行くよ」と言ってソリを出してきた。ちょっと待ってくれ。これで富士山を滑ると言うのか。これはたまげた。

「あのう、咲、ちゃん?これで本当に行けるの?明らかに危なそうだけど。」

「大丈夫だよ。ほら、私に掴まって」と前に美女を置いてその後ろに俺が乗り、富士の山頂からの脱出が始まった。

俺は、咲ちゃんに掴まりだ。もう一度言おう。絶世の美女に掴まってだ。

楽しくないはずがないだろう。

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