Ep.0 「X-GEAR」
アメリカのどこかで開かれた閣僚会議の中で誰かが出てきた案件に怒りながら怒鳴っていた。
「核兵器の無用論が論題になったのももはや60年前ですぞ」
「超能力者部隊育成計画が機密解除され、世間からどんだけ笑われたのか忘れているのでは?」
「皆様、落ち着いてください」
比較的に若い男性が盛り上がった場内の雰囲気を鎮圧した。
「大統領閣下の入場です」
雰囲気を収めた若い男性が発した。そして会議室にアメリカの大統領が着席し、置かれている資料を読み始めた。
「次は、X-GEAR開発総責任者のミケル・メクシー博士からの発表があります」
「こんなとんでもない研究に莫大な運営費と研究費を溶かせたのはだれだ」
あっちこっちからささやくような文句が出てきた。
「ミケル・メクシーです」
入室してきた中年の男の人は紹介した。
「早速、論題に入りましょう。我が国を含めた強大国には核兵器に持つことで力の均衡を保ってきました。しかし、この時点を期して世界の秩序は変わるでしょう。1978年のスターゲートプロジェクトでは人間の超能力の有無およびその実用性に対して関連する秘密部隊の育成などが掲げられましたが、実質的には大失敗と判明されてプロジェクトは中止になったと知られています」
「当たり前だろう!そんなの。超能力なんか実在するものか」
最も年寄りに見える人がつっこんできた。
「が、研究の成果には有意味なデーターが多く蓄積されてきました。なお、陰謀論としてよく出てくる1931年に行われたProject Rainbowの被実験者の中には体の異常を訴えた軍人が多数、人工的な超能力付与が可能なのかもしれない可能性が見つけられました。」
「俺が持っていた当時の機密資料にもそういう話は一切なかった。博士とは言え、SF小説にはまり過ぎなのでは?」
「そうですね。単に強力な電圧による船舶がレーダーから消えてステルス効果が得られるのかを探って行われた当実験の結果から人間に対する超能力の付与にたどり着けられるヒントが得られました。むろん、この研究結果は極少数に許された極秘でしたが。今から配布する資料をお読みください」
「私たち研究陣は、数十年前からDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)と緊密な関係の上で、エリア51での極秘研究を進んできました。その結果、人間に超能力を付与する腕時計模様の機械の開発が出来上がりました。その機械の名は「X-GEAR」です。仕様やデザインなどの詳細なことは資料に書いておきましたので、お読みください」
「バカな」
「ありえない」
「書かれているのが本当なら、核兵器は無意味になるぞー」
今回もあっちこっちで信じられない意見と否定的な反応が会議場内に入り混じっていた。
「では、プロトタイプの実試演は来週なので、ぜひご参加いただきたいです」
博士は場のみんなに挨拶をした後、会議場を出た。
「気持ち悪っ」
ある男がトイレで吐き気に苦しんでいた。やがてその男はトイレの鏡の前に立ち止まった。
「いつまでも周りのみんながお前の表だけを見て喜んでくれると思っているのか?あん?」
まるで鏡の向こうの自分が話しかけてきたようであった。
「分かってる」
「押さえない破壊本能、慢心、憤怒、欲望、虚栄心・・・お前を主に構成するのはこっちだろう?」
「分かってるって!!」
叫んだあと、誰かもトイレに入ってきた。その人は鏡の前に立っていた彼に
「おっと、お電話中でしたか、ご無礼を」
歳はあとで入ってきた人の方がはるかに年上だったが、それでも彼は丁寧に話しかけた。
「いいえ、大したことでもないです。お気遣いありがとうございます」
若い男性は何もなかったのように、トイレを出た。そこには盛大なパーティーが開かれていた。
「あら、アイン様。ご無沙汰しておりましたか?」
貴婦人のようにドレスを着ている老夫人がトイレから出てきた彼に挨拶した。
「あ、こんばんは。お久しぶりですね」
彼は誰よりも優しく、穏やかな笑顔でほほ笑んでいた。
「アイン、そろそろ時間よ」
また、後ろからある女性が現れてきて、彼に話しかけた。
「はい」
その声が誰だったのかをすぐ分かった彼は前の壇上にのぼりマイクを握った。
「今回ワールド・イン・グループ主催慈善パーティーに参加してくださり大変ありがとうございます。ワールド・イン・アイアンの副社長、アイン・ジェリアンです」
場内のみんなから喝さいが始まり、アインは演説を終えて下に降りてきた。
「よくやったよ。アイン。お父さんも今回これたら、とても喜んでたはずよ」
先ほど時間だと言ってた人から声が聞こえてきた。
「母さん、私はただのお父さんの代役にしか過ぎません」
またアインは最高の顔で微笑んだ。
「お母さんはその顔が気に食わない。まぁ、よく出来たてているけど、本音は1ミリも入っていいように見える」
「さすが、元女優さんってことか」と思っていたアインにはまた吐き気がしてきた。
「母さん、体調不良なので、今日は先に帰らせてもらいます」
「あの子ったら、いつも人が多いところでは緊張ばかりしちゃって・・・」
本当にアインのことを心配していたアイン婦人であった。
「・・・多重人格障害ですか?」
アインに昔出された診断。
「そうですね。いまだに症状はひどくないように見えますが、注意深く長い間観察する必要があるかと・・・もし、他の人格の方が強くなっていることを気づいたとか、記憶にはないことが既に起こっていたとかがあったら、その時は遠慮なく再来してください」
診断後、相談室を出ようとしたアインに医者は
「こういう場合、ストレスが原因になっている場合が多いので、くれぐれもストレスを受けそうな場所は控え、自分なりの解消法を見つけるのも大事です」
また、現在。
「クッソが。どいつもこいつも、金ばっかり狙いあがってよ!どうしてでも私たちからの支援や資金調達のためにうじゃうじゃ集まって、あー本当に気持ち悪かった!」
スピードをもっと上げて走り出すアインの高級スポーツカーが闇に去っていった。
ミケル・メクシー(Mikel Maxy)
・国籍:アメリカ
・歳:50代
・超能力を付与する機械のX-GEARの総開発責任者。
・人種:イタリア系白人
・身長:173cm
・体重:68㎏
アイン・ジェリアン(Ain Jerrian)
・国籍:アメリカ
・歳:20歳代前半
・Worl In Iron(W.I.I)の副社長、World In Group総帥の一人っ子。
・身長:188cm
・体重:80kg