タフなヤドカリ
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前回、スイーツの誘惑に負けてしまい、里紗に家を入らせることにした琴絵はこれからどうなるのか、読んでいただければと思います。
琴絵は里紗の言葉の意味がわからなくて、ひたすら首をかしげるのだ。そして里紗は彼女の家にサラッと見る。
「にしても、散らかしすぎるよ。今までどうやっていきてこられたか?」
「反省してるよ……一応」
「反省の色が見えないんだけど」
里紗は片眉をあげて首をかしげながら、素早くまばたきをする。よっぽど琴絵の口約束に不信感を抱えているようだ。すると琴絵は小声で理屈っぽいことをささやく。
「それには訳がある。突然押しかけてくるから、片付ける時間なんてないよ……」
「言い方よ」
「どにかく、これは棚上げにして、ゲームやろう」
琴絵はそれを笑って受け流して、とぼけた表情する。彼女がアイコンタクトを避けていることを里紗に気づかれた。念のためにぴしりとしそうな言い方でもう一度琴絵を注意する。
「あとでちゃんと片付けろよ」
──お母さんかよ……
「わかってる。さっさとやろう。これ持って」
「なにこれ? この柄の部分を握るの?」
「やったことないの?」
「ない」
里紗は先が思いやられたような顔して、渡されてきたゲームパッドを宝石鑑賞するかのように回転させて、ボタンを押しまくる。こういったものに好奇心を駆り立てられて、早く教えてと言わんばかりのキラキラした視線を向ける。まさに目は口程に物を言うとのことだ。
「一から教えるから、まず何飲む?」
「話の切り方が独特だな……」
「ジュースとか?」
「シカトされた……じゃジュースで」
琴絵は口ずさみながら軽快な足取りでキッチンに向かう。その間、里紗はふとテレビの横に置いてある写真立てに気を取られた。まるですこぶる面白い本を読み始めたら、とめどなくページをめくり続けるかのようだった。
彼女は無心にその写真立てを手に取って、視線が離れなくなるみたいにぼうっとしている。彼女は放心状態にいる中、琴絵は二つのコップにジュースを入れて、慎重に持ってきた。あの写真が目に映った途端に、歩みを止めた。
琴絵は面食らったかのように開いた口が塞がらないのだ。様々な気持ちがさざ波のように影響し合っって、ふと熱いものがぶわっと胸から喉、喉から目元まで駆け上がってきた。あのややこしい情緒が心の底に澱となって沈んでいたはずなのに、徐々に浮かび上がったのだ。
それすら誰も察されないように淡々と話を切り出す。さもほつれた糸がゆったりと解かれたかのように釈然とした面持ちになった。彼女は二つのコップをテーブルに置いて、幸せで目がうるんだ。
「あれは家族写真よ」
「あ、勝手に触っちゃってごめん」
「ううん。気にしないで」
「……」
本人が大丈夫だよって言ってくれても、なんだか悪い事をしたみたいに里紗は無言になった。琴絵はあの写真をゆびでさしながら、大まかなことを説明する。彼女はコップを里紗の方に寄せて、どうぞと言わんばかりに手のひらを上に向ける。
「この二人は私の両親。それと幼い子供二人いるだろう。ツインテールをしてる女の子は私。もう一人は妹だ」
「ふうん……」
このツインテールしてる女の子は琴絵だということが判明して、里紗はやたらに自分の首の付け根を触る。彼女は琴絵の足のつま先から頭のてっぺんまで凝視する。そして頭の中で何かを想像していたら、クスッと笑いのを漏らした。
「失礼だな。人の顔を見て笑うなんて、結構昔で撮った写真だよ。今はもちろんそんな初々しい格好しないよ」
「じゃなんで、最近とかの写真を飾らないの?」
「そんなチャンスもうないのよ」
琴絵はぽつねんとたたずんでいたまま、話が続く。淡い憂いを帯びた語調の中で心にしみ広がるような寂しさが響き渡る。里紗と目が合ってもすぐにそらして、神経質な微笑みをたたえる。その温もりの微笑は虚脱感が伝わる。
だが、あれは悲しみの色がまったく感じられず、むしろその感情を押し殺しているように見える。一体何を経てこんなにも平然といられるのか、胃をぎゅっと引き締めるような苦しさを拭うために両手を服に擦り付ける。
そんな強がっている彼女を見て、里紗は一段と柔らかな声で聞く。あれは一つ一つの言動に気を付けて、プツンと切れやすい絹糸を織りなすかのように極めてか細い口調だった。羽根を吹かせるほどの程度だった。
「どういう……意味?」
「つまり、私以外、家族がだいぶ前からいなくなった。事故で」
「……っ。すまっ」
「夜途さんは謝らないで。こんなむさくるしい空間で写真立てを飾るなんて誰だって疑問を抱くものよ。平気だ」
「……」
里紗は沈黙を押し通すかのように石のような固い表情して、唇に微動だにしなかった。妙に線を引かれたような気分に包まれた琴絵は彼女の背中を強く叩いて、場を盛り上げてくる。琴絵は挑戦的な構えして挑発をかける。
「せっかく来たんだから、楽しいゲーム紹介してあげるよ、まぁどうせ夜途さんは私にかなわないけどね。ほら早く」
「ああ……」
「まずは格闘系のやつ」
「それなら得意分野だよ。現実なら」
「誰も聞いていないよ。物騒なアピールね」
少しずつ気まずい空気を打破したのか、一瞬にして緊張の氷が溶けてきた。肩の荷がすっかり消えたかのように楽になった里紗は引きずった顔を緩ませて、ほのかな微笑みを漏らす。琴絵は一つ一つ丁寧に里紗にゲームパッドの使い方を教える。
「これが攻撃ボタン、これは回避、で、これは必殺使うときやる、これはガード……わかるな?」
「これぞお前ら人間のレジャーか」
里紗は身を乗り出すような姿勢で、よく見えるように目を細めてじっと観察する。目から鱗が落ちるかのような表情だった。そのおかしな言動を見守りながらも、不審な点を気づいた琴絵は心の中で幾つかの疑問をあげた。
──何? お前ら人間って、コスプレのセリフ? それとも中二病か?
「そうよ。面白いからやってみて」
「手加減はしてくれよ。新人の私を蹂躙するなよ」
「ないない。夜途さんならきっとすぐうまくなれるって」
琴絵は手を振って、両眉をあげ、困惑した笑みを浮かべる。その後、二人は少し肩慣らししてから本番に入る。すると、だんだんうまくなってきた里紗に対して思わず舌を巻く琴絵は彼女の要領のよいどこに褒め称える。
「す、すごいね。思った以上より上手い」
「本当? 上達してるか?」
「うん、じゃそろそろ本番入ろう。前座も終わったし」
「こっちは負けねぇからな……」
本気の一戦目は、もちろんベテランである琴絵が易々と勝ち取った。彼女は顎をあげて意気揚々と里紗を見つめる。どうやと言わんばかりに目配せする。里紗は悔しい思いを表にして指を鳴らす。マウントを取られたばかりの里紗は辛抱強く、反撃の糸口を待つ。
「うわっ! あっぶねぇ」
「ああ……もう少しだったのに」
「だから、夜途さんは甘いのよ。こんな不意打ち食らうわけないだろう」
──なんとかプライドを守れた……ふうー。
と琴絵は僥倖に思い、次も本気で挑もうと自分の頬を強く叩いた。集中力を切らさないようにジュースを一気に飲み干して、再び画面に目を凝らす。里紗も勢い良くジュースを喉に流し込んで、ぎゅっと顔を引き締める。
「準備整った!」
「おお! いいぞ」
こうして、二人はまた何戦もやったが、結局ドローだった。飛躍的な成長を見せつけられた琴絵は等々焦り初めて、お菓子をつまみ食いする。
「やるじゃん」
途中二人が物凄く真剣になり、だれも話さなくなった空白の時間ができ、そのため琴絵は思いついたことを口に出す。
「な、そういえば、ずっと気になってたんだけど」
「今度はなに? 気がゆるんだら負けるよ」
「夜途さんってコスプレ好き?」
「まずなんでそう思うの?」
里紗は眉をひそめて不可解に思い、疑問符がぴょんと跳ね上がった。
「だって、夜途さんの頭のやつってなに? 角みたいな飾りがあるんだけど、ずっとつけっぱなしだから、てっきりコスプレ好きなのかなって、思っただけ」
「……」
里紗はぴったりと動きを止めて、本来ゲームパッドを操作するによるガタガタ音が消え去り、家が静まり返った。琴絵はフリーズ化した里紗を見つめながら、彼女の肩を揺すろうとする。
「夜途さん?」
読んでいただきありがとうございます。次回も楽しみにしていただけると幸いです。




