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交差点の灯火  作者: 霞真れい
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攻略失敗?②

いつも読んでいただきそして応援をくださり誠にありがとうございます。感想やコメントも大歓迎です。


前回、琴絵は本性を隠して自己紹介をしたんですけど、中々うまくいかないですね。果たして彼女は友達ができるのでしょうか? 読んでいただければと思います。

 ──完全にやらかした。


 とこれを呪文のように何度か心の中で唱え続けた。自己紹介の内容が少なさすぎなのか、それとも感情の起伏が足りないのか? ちょっと棒読みしちゃった気もするね……等々、さっそく私は一人だけの反省会をしまくった。


 私は学校まで持ち込んだ本を片っ端から読み返した。その本のタイトルは《自然な自己紹介! 友達の攻略法!≫と書いてあった。この本は私の命より大事な浮き輪なんだ。


 ──この本のおしゃっる通りにやってきたんだけど、全然ダメじゃん。せっかくネットで購入してきたベストセラーなのに、結構高いのよ。ちゃんと実用出してくんねぇかな。


 罪のない本に八つ当たりしても何も変わらないから、私は読み止したところに、しおりの代わりに学生証を中に入れて挟む。そして、この教室で砂をかむような味気ない休み時間を過ごしながら、すでに溶け込んでいる他の女子の愉快な話を小耳に挟む。


 今までのことを改まって作戦を考え直す必要あるかどうかを悩んでいる最中、奇跡的に声をかけられた。


「あ、あの……結凪(ゆうなぎ)さん?」


 ──よっしゃー! チャンス到来!


 胸が高鳴ると裏腹に自分の喜びを押し殺して、平静をよそう。声を上ずらないように必死にスカートの裾の皺を伸ばして、声を低くする。第一印象はかなり重要だということが誰一人も植え付けられた正論だと思うから、私は極力に親しい笑みをたたえる。


「何か用?」


「ひぃっ! なんでもないです。すみません!」


 ──これ完全怖がられてる。なんでだ? 表情もバッチリだと思うけど、何かの間違いか……ここで関係ない話だが、足元になんか硬いやつあるな。


 私は足元に集中して姿勢を変えるや否や、先ほど踏みつけていたところに若干灰色になってた消しゴムがそこにあった。それを見た途端に、目から鱗が落ちるかのように話しかけられた理由を悟った。


 次第に、どうしようもない罪悪感が頭のてっぺんからどっばーとぶっかけられた。衝撃のあまりで岩のように硬化してしまった私は何をすればいいのかと思案してた。そんな中も例外なく、言葉じゃ表せないほどの虚無感に襲われる一方だ。


 ──これ……色んな意味で最悪だな。謝った方がいいのかな? でもあの子今、別の人と話している……めっちゃ気まずい。明日からにしよう。


 と私はパパっと結論を出して、あっさりと現実を受け止めた。一刻も早くゲームの世界に夢中して心の傷を癒したいとそればかり考えてた。それと明日はきっと友達できるってどこから湧いてきた楽観的な考えまで至った。


 耐え難い時間が過ぎ、私は誰よりも一番早く教室の外の廊下を踏み出て、学校から出た。すぐさま頭に浮かんだのはコンビニに行くことだ。複雑な心境でありながら、私は軽快なステップを踏みながら、コンビニへ向かう。


 コンビニにつくなり、私はすぐ魔法カードのコーナーに突っ込んでいたが、心を奪われるものが多く、その故、気が散ってしまった私は漫画コーナーに目をとめた。つでに漫画でも買おうとなって、カバンから財布を取り出そうとした瞬間、とんでもないことを知った。


 なんと私はカバンのファスナーをしまいのを忘れていたのだ。つまりコンビニに向かう途中、カバンはずっと全開状態にいた。取り乱してしまった私は前をちゃんと見てなかったため知らない人とぶつかった。流れのようにカバンから本が落ちていた。


「あ、ごめんなさい……」


 思わず口から漏らした気の抜けた声に反応したあの人は床に落ちていた本に目をやる。この時、もし魔法とかあればこの時間だけ止めてくれと懇願したが、実際そんなもの起きりゃしないのだ。よりによってその本の表紙がはっきりと上に向けている。


 その人はうちの学校の制服を着ている子だった。彼女は本を拾い上げてじろじろと本を見ながら私の顔をチラッと見た。ただでさえ落ち込んでいるのに、こんなことが起こって羞恥心のクライマックスだ。


 熱湯のような羞恥心が沸き立ち、こんな涙ぐんでいる顔が人に見られたと思い、恥の上塗りだ。体が燃えるように耳たぶまで真っ赤に染まり、赤面する。


 居ても立っても居られない気持ちに駆り立てられて、私はその場の空気が絶えられなかった。慌ててその子に謝りながら、本を奪還して大パニックになり逃げ出したのだ。


 ──恥ずかしく穴があったら入りたい!


 とこうして私は歯を食いしばりながら家に帰った。カバンをぽいと床に投げて、ベッドの懐に飛び込んだのだ。そして、一人でぼそっと弱音を吐く。


「終わった……あんな本、学校まで持ち込むべきではなかった」


 でも、こんな些細なことに気持を揺さぶられてはいかないと思い、なんとかして理由をひねり出し、へこんでいる自分の心を慰めようとしている。


「大丈夫、大丈夫。同じ高校とはいえ、もうあの人に会うことはないから、あんな本見られたって肉減るもんじゃないし、落ち着け私。そうだ、こういう時はゲームを遊ぼう、イベントを回って、課金しよう」


 その頃、私は気づいてしまった。魔法のカードなんて買ってなかったことを。頭がバグをかかったかのように静止して、暫くの間で我に返った。再びコンビニにいたことを蒸し返されて、忘れたくても忘れられないあの鮮明な記憶がすごく生々しいのだ。


 ──じゃ、何のためにコンビニに行ったんだよ……


 まさに泣き面に蜂の局面だ。私は悩みに悩んで、最後に決めたことは寝ることだ。寝ていれば気も晴れるはずだ。だがその前に、明日を備えるためにもう一度本を読み返す。その上に乗っているポイントを全部暗記して、対策を立て直す。


 私は読み止しのところを見返すところ、とある違和感を気づいた。それは本の真ん中にあるはずのしおり代役とした学生証が不思議に消えた。すかさずにカバンの中にあるものを洗いざらい出して、入念にチェックしたが、学生証らしきものはなかった。


 ──あの時か……あの人とぶつかって、本が落ちて、そこから学生証をなくしたんだ……


「二日目だけで、学生証までなくしたとは……絶望だ」


 初日目で前途多難だが、ここからは巻き返せるのか不安ばかりだ。

読んでいただきありがとうございます。これはかなりやらかしてましたね。初日で幸先悪いし、二日目はどうなるのでしょうか? 次回以降は第三人称で書かせていただきますので、楽しみにしていただけると幸いです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の焦燥や葛藤がとても細かく書かれていて共感ができました。 特に2話の踏んだり蹴ったりの展開での主人公の心情は自らが体験しているかの様な錯覚まで起きるくらい素敵な描写でした! とても面…
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