和気藹々とした昼休み
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昼休みの三人の集まりだったはず……おや?なんだか一人増えたようですが、一体何か起こるのでしょうか、読んでいただければと思います。
いつも通りの昼休みが迎え、早速和香は三段のお弁当箱を取り出して、琴絵に見せる。
「和香もお弁当を持ってきたの?」
「うん、昨日の食べ残りで詰めました。てことは結凪さんも同じですか?」
「ああ、今朝同棲の人に作ってもらったんだ、その二人と一緒に食べるんだ」
琴絵は瞬きするような自然さで同棲人に弁当を作ってもらったということを述べて、カバンからお弁当箱を取り出し、机に置く。その平然たる態度に好奇心の塊が集い始めた和香は顔を突き出す。
「その二人?」
「ほら、あそこにいる」
「ああ……あの日見てた美人二人なのですね」
和香は目には希望の光が宿り、穴が開くほど一点見つめ続ける。里紗は痛いほどの視線に身震いして、何とも言えない視線で送り返した。その間も和香はちょこっと顔を覗かせたが、里紗は一瞥をくれだけで琴絵と会話を始める。
「どうだった授業、順調だった?」
「今回は寝てなかった」
「夜途さんの話じゃなくて、宥の方よ」
「いい……」
宥はふらりと液体化し琴絵に寄せる。今朝のような充電を行い、隙間なく抱きしめる。肌を寄せることで宥は安堵の一息を漏らし、そのまま琴絵の肩に頭を乗せる。そして自然とすりすりして彼女の存在をたっぷり味わってから、動きをぴたりと止めた。
五センチほどの身長差があり、元々は距離も測れにくいと思いきやちょうどよいバランスになり、自分より背の高い宥をしっかりと受け止めた。
──そういうの好きなのか、なんかかわいい。
「はいはい、頑張ったな、偉い偉い」
抵抗力のない琴絵はこの流れに乗って宥の頭を優しくなでてあげた。ふと宥は隣の和香に注意力を置く。彼女はじーっと和香を見て沈黙を押し通し、この気の抜けた雰囲気が四人を包み込む。
「あ、こんにちは、結凪さんのクラスメイト、西村和香といいます」
とその時、和香は丁寧に自己紹介し、満面の笑みを浮かべながら不安定な手を握りしめる。少なからず緊張の気持ちは確かに琴絵の耳に届いた。
「朝華宥……」
「あんたら先生に立たされたのか? 早くおいてよ」
「夜途さんってせっかちだな、そんなにお腹すいてんの?」
琴絵はそろそろだよと言わんばかりに軽く宥の背中を叩く。だが、彼女はわずかねばり強いところをアピールし、琴絵にしがみつくのだ。こうなった以上、彼女は「切り札」と相まって必死に説得し、宥に納得させた。
すると宥はそれに従って対面の席に座り、お弁当箱を机の上に置きと同時に琴絵も席に着く。するとまだ突っ立ったままの和香に手招きするのは仏頂面をしている里紗だ。
「あんたらがだらだらしてるから、促しただけ。お前も、西村だっけ? 気楽に座りな」
「は、はい、お言葉に甘えて……」
わずかの数秒、里紗の顰めっ面が雲のように消え、微笑へ変わるのだ。和香は恐怖心により体が縮み上がり、ぎこちない振る舞いと共に、おどおどと椅子を引っ張る。里紗の変化を見て琴絵は思いを巡らせる。
──あれ? すんなりと誘いを出した。やっぱりあの時は敵意の眼差しではなかったようで、一安心……
「それはそれでいいが……」
「何ぶつぶつ言ってんの? そこの西村、私は夜途里紗だ、よろしく」
「夜途さん……結凪さんから聞いたことあります、あなたのこと」
里紗はふーんと鼻を鳴らせて、呆気ない表情も垣間見えたそうだ。
「悪口か?」
「えっと……」
「ないって、そこははっきり言って!」
琴絵はすかさずにため息を漏らしつつ、お弁当箱を開けてる。いただきますと言い終わったあと箸を手に持って、逸る心を抑える。口に入れた瞬間、何気なく里紗の方に向いてしまう。
そのまま見開いた瞳には稲妻のような驚愕を表し、まるで頬が引っぱたかれた数舜を覚えた。思わず咀嚼を止めてしまい、ハンバーグの塊が口の中に滞る羽目になる。
他のみんなと同じ空間にいるはずだが、この時だけが違うと肯定した琴絵は肉をかみちぎる。そして思う、なぜ自分の歯車だけ設計されていたはずの軌道からはずれていた。
いつからか耳だけが冴え渡り、周りの騒音あるにも関わらずずきんと耳鳴りが襲ってくる。それを面食らったかのように目を丸くする。彼女の異様さに気付いた里紗は数回も琴絵の心を呼び返すと試みる。
そして、琴絵ははっと我に返って、まるでバラバラになってた意識が再構築されて、ちぎられた糸が一本一本で繋がれていき、完成品まで織りなされた。目に映っているのは里紗と宥の顔だった。景色が元通りになった。
「なんだ? まずかった?」
「似てるね、昔食べてた味と……」
「……それはよかった」
と言いつつ他の二人は一斉にお弁当箱を開けて、その内容物を見るや否や和香は怪訝そうにこちらに視線を送る。彼女はすぐにでも跳ね上がるほど驚異の目をしてる。必死に三人のお弁当に視線を行ったり来たりさせて、十回以上はあると考えられている。
「え? 三人のお弁当は一緒……」
共通点を見つけた途端に、和香は何かを察し、先ほど琴絵との会話を遡らせて懸命に推理をし続ける。琴絵の動揺を分析し尋常ではないと判断する。また頭の状態は咲き乱れたところ、鼻から温かいものが滴り落ちる。
「うわ、こいつ鼻血出てる!」
それを見て、眉をひそめた里紗は彼女にティッシュを渡した。
「すいません……無視してもらってもいいです、いつものことですから、尊いすぎてつい……」
──さすが和香だな、今のは絶対なんか妄想してるわ。
琴絵はかなりドン引きして、脳内に強い衝撃波を食らってしまい、思考回路に直撃した。わざと和香との距離を保ち、精一杯平静を装いながらおかずを口に運ぶ。そして、前触れもなく和香からの「助言」が耳元で響くのだ。
「結凪さん、あくまでも傍観者としてアドバイスさせていただきます。三角関係はつらいんですけど、どんな決断をしようとしても応援してます! あ、浮気とかおすすめないですよ」
──いやいやいや、当事者だちの前で何話すのよ! 空気読めよ、この三度の飯より百合好きの和香!! 大体恋してねぇし、どこからの三角関係なのよ。
「それはないから、安心しな」
琴絵は容赦なく和香にチョップを振り下ろして、落ち着かせようとする。そしてやっと冷静を取り戻した和香は向こうの二人に頭を下げて、鼻血を拭く。
「失礼しました、少々興奮してしまいまして、へへへ……」
「少しどころじゃないけど……なぁ、西村」
「はっ、はい!、何でしょうか?」
声からすれば和香はひどく怯えている。彼女の視点から見れば鬼気迫る眼差しに注視されて、一瞬にして背中に戦慄が走り、さも刃物で背筋を撫でられたような悪寒を覚えた。
その間にもかかわらず、宥は欲張りなブラックホールと化して、暴風のようなスビートでお弁当箱にあるものを吸い尽くし、満足げにお腹を撫でまわす。
一方はピリピリとした雰囲気に纏われつつ、当事者二人は互いを見つめ合うのだ。あまりにも異様すぎて、本当に同じ時間軸にいる人なのかと目を疑うくらい琴絵は啞然とする。
読んでいただきありがとうございます。次回も楽しみにしていただけると幸いです。




