掛け値なしの笑顔
いつも読んでいただきそして応援をくださり誠にありがとうございます。感想やコメントも大歓迎です。
更新が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。ここ最近色々なことがありまして、一番落ち込んだのは告白して断られたってことですかね (笑) 気持ちを落ち着かせるのに予想以上の時間をかかりました……これからも怠らずに書きたいと思います。
「結凪さんは何食べます?」
「私はカップ麵……」
「カップ麵?」
脳に靄がかかったかのように和香は思考を停止し、様々な疑問がマグマのようにぶくぶくと沸き起こり、ますますと収まらない様子だ。彼女は身を乗り出して、琴絵の方に寄せる。
──あ、オタク心がつい出てしまった。大丈夫、臨機応変のスキルを発動すれば……
「ちゃんと話聞いて、カップ麵の親戚、つまりラーメンを食べたいっと思ってるんだ」
「そうなんだ……なるほどね。私はカツカレーで、あそこで座って食べましょうか」
「うん、いいね」
なんとか自分の凡ミスをフォローしきれて、間一髪だった局面をからがらひっくり返して、まさに形勢逆転となった。そのため琴絵はふーっと額ににじむ出る汗を拭く。彼女たちは昼食を持って、座って食べ始めた。
「ところが、結凪さんは普段お家で何をしてましたか? 私なら裁縫や料理作りとかです!」
──まさか、薄々とオタクの匂いを感づいたから疑ってた? そんな……うまくごまかせたはずなのに!
「そうね、私は絵を描くの好きだから、いつも絵描いてるの、あとは読書かな」
知らぬうちに、箸が進むスピードは加速しいていき、スープまで飲み干したのだ。それら全部琴絵が焦った証拠だ。しかし、強いて言えばあれは噓ではなく、少し塗り替えたきれいごとだ。絵を描くのは事実、読書はその友達攻略本が含まれているなら……
「食べるスピードが早いですね」
「まぁ、お腹すいてるから、待ちかねの昼ご飯だ」
──ああ、話の糸が切れちゃった……何を話せばいいのか、向こうはめっちゃ頑張って振ってくれたんだが、どう返せばいいのかわからなくて。
その後、琴絵はしばし自分のコミュ力に苦悩し、藁でもすがるような思いで、コミニケションをアップするような類の攻略本を買おうと心に決める。
そして、あっという間に下校時間がやってきて、彼女は里紗に言われたことを忘れずに、早くも校門に駆け寄った。そこに里紗と宥が立っていた。琴絵は息切れして、両膝に手をつき酸素を貪る。彼女は呼吸を整えつつ里紗の肩に手を置く。
「お、待った?」
「いや、そんなに……ちょうど来たばっか」
「そっか。どうだった? 宥の方はうまく行けた?」
相変わらず宥の特殊状況に頭から離れず、思いやりのこもった眼差しで宥の方に向ける。視線を感じたのか宥はポカーンとした放心状態からはっと我に返って、瞳に喜びが宿る。
「ああ、なんとかね、有り体に言えばほぼ寝てたな」
「え? 宥が?」
「いや、どう考えても私だろう」
里紗はまるで宇宙人から全人類を救ったかのように有頂天になり、調子こいた顔で琴絵を横目で見る。彼女は鷹揚に構えて、頬に挑むような微笑みを浮かべる。
「ドやるなよ、で 宥自身はどうだった?」
「……うん」
「そうか、よかったね」
「違う違う違う、今の『うん』ってなにが分かったの?」
またしてもツッコミ担当の里紗が間髪入れずに二人の会話に割り込んだ。さも突如に踏みつけられた蟻んこの巣のように取り乱してしまい、各々とばらばらになっていき、大混乱に陥るようだ。
「なんとなく、嬉しさがこっちまで伝わってきたから?」
「本当にミステリーガールだな、まぁそんなことより昼の時、隣のやつは?」
──やっぱり気になってたんだ……どうやら妙な視線を感じたものだ。
「色々事情があって、一応友達かな?」
琴絵は視線を斜め上に泳がせて、それっぽい答えを出した。その答えを聞いた途端に目を細めた里紗はなれなれしく琴絵と肩を組んだ。まるで漫画などでよくみる、体育館裏で変なやつに絡まれてお金をゆすられるような光景と等しいのだ。
「へぇ……いいことじゃん」
──なんだかそのいまいちな態度……
「うん、まぁね。そろそろ家に帰ろうと思ったが、やっぱ遠回しに何か食べに行こう」
それで彼女は思いついたことを提案して、いい流れへ導かせる。自分ごときが話術など持っていないが、ただ肩に課せられた力を少しでも減らしておきたくて、相手の興味をそそるようなものを切り出す。
「のった、甘いものを摂取したいなぁ」
思惑通りに里紗は瞬時に琴絵を解放してくれて、自由に返してやった。彼女は「食」という言葉を聞いて、他のものが眼中に入らなかったかのように、早く行こうと催促する。すると琴絵は宥に傾けて誘い出す。
「宥も一緒に食べる?」
「うん」
「じゃ喫茶店に行こうか?」
三人は談笑しながらとある店に来た。素朴な外見で派手な飾りなどもなく、童話みたいに華やかな色彩に点綴られたお菓子屋とはかけ離れていた存在だが、何故かその方が親しみがあり、人の心を静めるような魔力を据えている。
その店に踏み込んだ途端、木の匂いがちらっと出てきて、先ほどまでドキドキしてた気持ちも徐々に平静になっていく。そのまま窓際の席に案内されて自然と腰を掛ける。琴絵は無意識にポケットにある財布を触り、メニューを二人に渡した。
「私が奢るから、好きなやつ注文していいよ」
「太っ腹だな、何かいいことでもあったん?」
「ただ歓迎会みたいなもん……定番でしょう? それとバイトの給料がちょうど入ったんだから」
──事前にググっておいたんだ、ここの店人気もさることながら、雰囲気もよかったと好評されたくらいだ。少しネットで調べて、親睦を深め合うには胃袋を掴むってこと。
「いや……我ながらすごいもんだ、ここまでの発想をたどり着いたこと」
琴絵は圧倒的な自慢顔で話を進め、片眉をあげて「どうや?」という表情をする。誰かに称賛をもらいたかったのか、隠さずに気持ちをあらわにする。
「うわっ、独り言してる、キモイ」
「ドン引きすんな、自己満だけさせてよ」
「夜途さんって、ショートケーキ好きなんだ……意外かも」
「これでも乙女なんだ、純粋さを持っているJKなんだよ」
里紗は頬を膨らませて不満げに言う。まるでハムスターのように両頬に食べ物をたくさん詰め込んだように膨らんでいた。それをよそに、琴絵はうつむき加減の表情をして、テーブルに肘をつき手を組む。
「宥は?」
出されたのはハーブティーとレアチーズケーキ。ふんわりとした香りが漂い、張り詰めた神経をなだめるような香ばしい匂いだ。そのセンスに驚嘆した琴絵は素直に感想を述べる。
「お嬢様が頼みそうなセットだな、なんかお上品」
「『お上品』って、そんな言葉が結凪の口から出すなんてミラクルだな」
里紗は体を震わせて、吹き出そうになるのを、必死に奥歯でかみしめ、そのまま肘をつき額を支える。彼女は目立たないように腰を曲げることで懸命にこらえる。それを見た琴絵はムカッとして、しれっと里紗の膝に爪を立てる。
「失礼だな、夜途さん」
「痛っ! やるな。帰ったら格闘ゲーやろう、完膚なきまでフルボッコにしてやるから、待ってな」
見るに堪えなかったのか、ずっと黙っていた宥がガキ二人の行動を取り押さえて、二人を和解させるようと、両方の手をつかまえて、和解の象徴として強制的に握手させた。そして、何かの目的を達したかのように宥は氷さえ溶けるような微笑みをたたえる。
それを目にした琴絵と里紗は互いを見つめ合ってから、笑い出す。そんな中、宥はしびれを切らして、ケーキに手を出した。口に頬張る瞬間ドキッとした。それはあまりにも美味しすぎて、体をこわばらせるような反応だ。
その滅多にない様子に癒されて、琴絵と里紗も相好を崩してにやっとする。
──たまにいいわね、そういう日常。頑張った報いだわ。
琴絵は紅茶を口につけ、ぼうっとし紅茶の水面を見つめる。そこにはかすかに微笑んでた自分がうつっている。その後も三人は和やかな雰囲気に浸しながら、このティータイムを堪能することができた。
琴絵は家に帰りなり、ベッドの暖かい懐に飛び込んだ。懐かしき布団の匂いを嗅ぎまくって気持ちをリフレッシュする。彼女はスマホゲームを開いて、ギルド内のメンバーとチャットする。
ネットゲー友A:「ことちゃんは今回のレアアイテムに課金する?」
「それはさぁ、課金したかったんだけど、その用意したお金がもう使い切っちゃってね」
ネットゲー友B:「珍しいですね、いつもはバンバン使っちゃうけど、容赦なくにね」
「それはね、歓迎会みたいなもんで、金使っちゃって」
ネットゲー友C:「歓迎会? ことちゃんみたいな陰キャでも友達作れた? 明日は雹が降りそう」
「ああん? やんのかお前、スキルでぶち殺すぞ」
──まぁ二人が喜んでくれたし、その笑顔を見られて、やった甲斐があった。
琴絵はしばらく天井を眺めながら、ふーっと疲れ込みのため息を吐き出し、それは達成感に近しい、どこか清々しい気持ちのようなものが湧いてきた。
読んでいただきありがとうございます。次回も楽しみにしていただけると幸いです。
気持ちがもう整ったので、張り切って頑張ります!




