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交差点の灯火  作者: 霞真れい
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ラッキーナンバー

いつも読んでいただきそして応援をくださり誠にありがとうございます。感想やコメントも大歓迎です。


更新遅れて申し訳ございません、お待ちしてくださった読者様、ありがとうございます。

 ──相変わらず学校に戻ったら一人ぽっち……こうなったら夜途(よみち)さんと一緒にゲームを遊ぶべきだな……しかも雨だし、普段はそういう天気は嫌いじゃない、むしろ好きだったが、こういうときって妙にやる気がでないね……


 琴絵(ことえ)は頭を空っぽさせてひたすら窓を見る。まるでこの教室との繋がりが断ち切られたかのように分離された。窓を強く打つ雨の響きはなぜか心にしみ入るように聞こえる。


 先ほど琴絵(ことえ)は苦手な英語の授業に大きなダメージを受けて、すでに体力と脳力が消耗されて、どっと疲れが出た彼女は机の上に伏せる。へろへろになった琴絵(ことえ)は酷暑の中で干からびたミミズのようにびくともしないのだ。


 しかし、次のやつはラスボスと言っても過言ではない。彼女のもっとも嫌がってる科目は数学だ。顔を出せないくらい拒んでいる。こんな難しい公式を学んだって、無意味で、将来で数学のなんやらの研究家をやるつもりもなく、日常生活的に使われている数学なら、普通にできる。


 と正論っぽいものを脳内で述べているところ、誰かに目をつけられていることも知らず、上の空で数学の授業を受ける。だが、琴絵は一つ誤算してしまった。それはよりによって数学の先生は彼女の担任でもある。


結凪(ゆうなぎ)さん」


「は、はい!」


 先生に授業中に名前呼ばれて絶対にろくなことはないと確信した琴絵(ことえ)は緊張が滲み出る声で先生の呼びに反応した。まるで良心に反したことをしたかのように、机の下に両手をすりあわせる。


「この問題の解答は何だと知っていますか?」


「え? 黒板に書かれてる問題ですか?」


「ええ、さっきはお手本としてみんなにやってましたから、ちゃんと授業に集中しているならきっと解けると思います」


 先生のニコニコとした笑みを見せるが、明らかに顰蹙している様子も見られて、心でヤバいと何度も連呼して、手のひらからじりじりと滲み出る汗は拭いたそばから来る。琴絵(ことえ)は立ったままだけで、両足が言うこと聞かないように小刻みに震えている。


 それを必死に止めようとし、気づかれないよう小幅に足を動かせて緊張をほぐす。


 ──大丈夫だ。ここでちゃんと問題をとかせばノープロブレム! じゃ問題を見ようっと……これは無理だね。


「仕方なく、ここは一か八かの大博打だ」


「恐らく今のは結凪(ゆうなぎ)さんの心の声ですね、バッチリと聞こえてますけどね、賭けなんて必要ないはずですよ、普通の問題ですから」


「もちろんです……答えは十五です」


 なぜその答えに至るのか、一番の原因は琴絵(ことえ)が十五回の十連を引いて、好きなキャラを手に入れたのだ。それにしたがって、十五という数字が彼女のラッキーナンバーとなった。当然そんな浅はかな答えは正解にならないと承知の上だ。


 先生はみるみるうちに顔色が悪くなり、ぐんぐんと怒りが込みあがってきて、何も言わずに彼女をじっと見つめる。こんな無言の圧に負けた琴絵(ことえ)は蚊のように弱々しい声で謝る。


結凪(ゆうなぎ)さん、放課後一旦教室で待っててもらえます? 補習です」


 ──噓だろう……あと一時間で今日の授業が終わり、希望の曙光がそこにあったというのに、クソ! もっと集中していればよかったのに……


「え……どこか間違ってましたか?」


 と琴絵(ことえ)は最後まで粘って、個別指導のことを担任に撤回させたかったが、そんな望みも消え去って、また夢の話だ。担任はそのまま問題の解き方をもう一度説明する。


「この問題について、一見難しいそうに見えるが、紐解くのように簡単なやり方があります……」


 その後、担任は他の例題を丁寧に説明してくれて、みんなも同じくやり方でやってみましょうと、すると担任はクラスを歩き回るような緩やかな歩みを踏む。


 ──こっちに向かってる、必死に練習をしているようなふりをすれば勘弁してくれるはず……! ここは挽回のチャンスだ!


 すると琴絵(ことえ)はすぐさまシャープペンシルを手に取り、いかに真剣そうに見えるかの如くじっと練習のところに凝っている。だが、そんな思いも虚しく、担任は彼女の席の隣で足を止めて、彼女の一挙一動を観察する。


 ──なんで別の席を回らないのよ、こっちはもう持たん、このままだと百パーばれるって!


 琴絵(ことえ)はまた心の中で復唱して、両手を合わせる。しかし、そんなことも虚しく彼女の幻想をクラッシュした。後ろから感じられる気配は一向に消えることはなく、制圧された一方だ。


 そして担任が口を開くと、琴絵(ことえ)は反射的に体をぴくっとさせて、硬直してしまった。


結凪(ゆうなぎ)さんはどこか、理解できない部分はありますか?」


「いえ。今の、ちょうど考えているところです。もう少し考える時間が必要なようですから」


「ふむ……だが、結凪(ゆうなぎ)さんが見ているページは前回の時、とっくに終わっているはずですよ、今回は二十五ページの方が正しいです。もしかして、前回について何か疑問でもあるのでしょうか……では補習の時間を長めにしましょう」


「あ」


 彼女は哀願に近いような眼差しで担任に向けるが、返ってくるのはぞっとするような微笑で、全体的な雰囲気は良くも悪くも、微妙な感じだった。


 ──最悪な事態になってる、まさか違うページをめぐってしまった!! こりゃもう逃げ場ないね。


 その数学授業が終わった後、彼女は無理やり残され、個別指導を受けることになった。地獄の二時間が終わり、彼女はからがらやり抜いた。数え切れないほどの問題をやらされたが、なんだか達成感のようなものがぷつぷつと湧いてきた。少しやりがいあったなと心の中で快哉を叫んだ。


 担任も珍しくほのかな微笑みを見せて、やればできるじゃないですかと言わんばかりに琴絵(ことえ)をほめまくって、彼女の努力を肯定するよう肩を軽く叩いた。


 ──なんか……悪くない。

読んでいただきありがとうございます。次回も楽しみにしていただけると幸いです。

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