8話 心愛の気持ち――心愛side
心愛視点です。
今回は主人公は出てきません。
パジャマを着て、大好きなテディベアのぬいぐるみを抱きしめてソファに座る。どうしても心のもやもやが取れないの。「はぁ~」とため息をついて、ソファにコテンと横になる。
◆◆◆
中学生一年生の時は男子とも、女子とも一緒に仲良く遊んでいた。二年生になった頃から、男子達が私を見て騒ぎ始めた。丁度、女性としての体型が目立ち始めた頃だから、男子達に騒がれるのが嫌だった。
三年生になってすぐに初めて男子から告白された。その頃は私も男子を過剰に意識していて、付き合うの意味もわからなかったし、すぐに断ったのを覚えている。それから後も中学を卒業するまで数名の男の子から告白された。まだ男の子を好きになったことがなかったので、申し訳なく思ったけど、全ての告白を断った。
◇◇◇
蜂須賀学園高校に入学してすぐに一人の男子生徒から告白を受けた。その男子の名前は神崎新くん。すごく熱意をもって告白してくれたけど、新くんのこと、何も知らないし、それに私はまだ男の子を好きになったことがなかったので断った。
私だって憧れる好きな歌手や、憧れる好きなアイドルや、憧れる好きな俳優さんや、憧れる好きなスポーツ選手ぐらいはいる。でもその憧れは、すごく遠い人への憧れのようなもので、夢に憧れるようなものだと思う。
それから毎日のように新くんは私を屋上に呼んで告白を続けた。毎回、告白を断るなら、屋上に行かないほうがいいと思った時もあったけど、その度に、真摯な目で訴えてくる新くんの顔が目に浮かび、断るならきちんと断ろうと思って屋上へ行った。
風の強い日も、雨が土砂降りな日も、猛暑の日も、雪がちらつくかと思うくらいに寒い日も熱心に新くんは告白してくる。どうしてそこまで私のことを好きなのかわからない。
もしやストーカーかもという気持ちも一瞬はよこぎったけど、新くんは屋上へ呼ぶ時と、告白の時以外はほとんど私に寄ってくることはなかった。しつこく付きまとう男子もいるのに、新くんは紳士的だと思った。だから余計に新くんを裏切れない。屋上にはきちんと行かなくちゃと思った。
◇◇◇
三学期の終業式の日、土砂降りの雨の中、いつものように屋上に呼びだされた。私が傘を差して屋上で待っていると、新くんが現われた。いつものように傘も持たず、土砂降りの雨に打たれながら、真直ぐな眼差しで私を見つめる。この日の新くんは、いつもの新くんと少し違った。
新くんは、『今日で心愛に告白するのは最後にする。毎回、来てくれてありがとう』と言い、そして私が告白を断ると『心愛、これで終わりにする。これで区切りにする。今まで本当にありがとう』と言った。
これで新くんの告白が終わったことを直感した。新くんに本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいになり、私は屋上から逃げた。
◇◇◇
それから春休みに入り、この一年生の一年間を振り返る。やっぱり一番印象に残っているのは新くんだった。一年間、新くんは告白を続けたのだから、一番印象が深くなっても当たり前だと思う。
新くんから、終わりを告げられ、やっと告白から解放されたという気持ちもある。それは偽らざる気持ちだから仕方がない。でも少し、私、嫌われちゃったかなと思う気持ちをある。できればお友達として、お話したかったなと思う。そのことが残念で仕方ない。
◇◇◇
春休みが終わり、二年生になった。そして始業式に出席し、廊下に貼りだされているクラス表を見て、ゆっくりと歩いていたので、遅くなって、二年Aクラスの教室のドアを開けた。
教室の中に入ると既にクラスメイトの皆は席に座っていて、空いている席が一つしかなかった。そして私は席に座って周りを見ると、隣の席に新くんが座っていた。新くんもAクラスなんだなと思った。久しぶりに見る新くんは少し痩せたような印象だった。
新くんからの告白は断り続けたけれど、今度こそ友達になれるかもしれないと思った。まずは挨拶をしなくちゃと思い、新くんをジーっと見ていると、新くんと目が合った。
『今度は同じクラスだね。新くん、よろしくね』と私は挨拶をした。挨拶をするだけで精一杯だった。すると新くんが机に突っ伏して動かなくなった。やっぱり嫌われているのかな? 少し悲しい気分になり、私は前を向いてHRを受けた。
それから何となく、もやもやした気分が続いている。
同じクラスになったのに、新くんから私に話しかけてくることはなかった。新くんは良い人のようだし、告白を断っておいて、友達になりたいというのは都合のよい話かもしれないけど、同じクラスになったんだし、クラスメイトなんだし、気軽にお話ができるような、お友達になりたいなと思った。
でも新くんと上手くお話できる瞬間がない。どうしても友達になりたいのに、キッカケが掴めない。
私は日に何度もチラチラと新くんを見るようになった。新くんを見ると、隣の座っている天音ちゃんと楽しそうに話している。私もお話に参加したのに。私も新くんと楽しく笑って話したいのにと思う。
学校からの帰りに、新くんが私の後ろを歩いていることがあった。これは新くんとお友達になるチャンスだと思って振り返る。でも咄嗟に私の口から出た言葉は『バイバイ、また明日ね』。違う。違う。すごく恥ずかしくなって走って逃げた。
次の日の朝、新くんと友達になろうと決心して、学校に登校して、校舎に入る手前で新くんを待っていた。すると新くんと天音ちゃんが仲良く登校してきた。思い切って新くんに『あの……おはよう』と声をかけたけど、天音ちゃんが私に挨拶した声にかき消されちゃった。すっごく恥ずかしくなり、どうしていいかわからずに、また逃げてしまった。
◆◆◆
学校が終わって家に帰ってきてからも、心のもやもやが取れない。私はテディベアを両手で持ち、可愛いお顔をジーっと見つめる。
「友達になりたいだけなのに、どうすればいいの?」
テディベアからは何の返事もない。やっぱり今のままだと、私だけでは無理と思う。こんな時はお友達に相談するのが一番かもしれない。信用がおける私の大事なお友達、新くんの席の後ろに座っている、お友達に相談しよう。きっと協力してくれると思う。
私はテーブルの上に置いているスマホを掴んで、LINEを開いて通話をタップした。
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