3話 席替え
次の日の一限目の授業は休みとなり、HRが延長された。そこでクラス委員長が決められ、その後に皆が期待と注目をしている席替えが行われることになっている。
クラスの女子達の多くの推薦があり、クラス委員長には夢野栞奈がなった。黒上をポニーテルに束ねた眼鏡美少女だ。栞奈は一年生の時もクラス委員だったらしく、いかにも委員長という雰囲気がある。
「クラス委員長になりました夢野栞奈です。皆と学校の橋渡しをしたいと思っています。よろしくお願いします」
栞奈が笑顔で挨拶し、ペコリとお辞儀をする。すこしお堅いところもありそうだけど、気さくで良い子のようだな。僕は友人が少ないから、何かあったら相談してみよう。
それどれのクラス委員が決まり、皆がお待ちかねの席替えの時間がやってきた。男子の皆は心愛の隣の席を狙って、期待で目をギラギラとさせている。僕はというと、心愛の隣なんで心臓が保たない。できるだけ心愛から遠い席へと一心に願った。
演壇の上に番号の書かれたクジを入れた箱が置かれた。そして皆が順番にクジを引いていく。そしてクジに書かれた番号の通りの席に座っていく。僕は窓際の後ろから二番目の席だった。そして心愛は教室の中央の席だった。
席を移動してボーっとしていると、隣に見慣れない女の子が座った。背は小さく、ブレザーをダボっと着て、シャツのボタンを二つ開けて、ネクタイをダラリと着けている。スカートの丈も短く、きれいな脚がスラリと伸びていた。
髪は金髪に近い茶髪で、クリッとした二重に少し茶色の瞳、小さな小鼻、ピンク色の唇が可愛らしい、心愛とは違うタイプの美少女だ。僕が今まで話すことも避けてきたリア充の匂いがする。
「何、ジーっと見てるのかな? 玉砕くん」
「ごめんよ、そんなつもりはなかったんだ」
「別にいいよ。あたしの名前は夏目天音、天音って呼んでね」
よく笑う子だな、これが天音を見た第一印象。少しヤンチャな雰囲気もあるが、人懐っこい笑顔が素敵な女の子だ。まだ会ったばかりなのに、天音はよくしゃべり、よく笑う。僕はただ頷いて相槌を打っているだけなのに、とても嬉しそうだ。
視線と感じて後ろの席へ振り返ると、穏やかで和風な印象がする、大人びた雰囲気をまとった少女が静かに座っていた。そして僕と目が合うと、穏やかに微笑んだ。
「私は朝比奈和と言います。玉砕くん、よろしくお願いしますね」
やっぱり【玉砕くん】は皆に広がっているんだな。一年間も玉砕を続けたし、最後まで玉砕だったのだから、何も言えないな。
「一応、名前は言っておくね。僕は神崎新、よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
和さんは妙におっとりとしていて暖かい感じのする女の子だな。天音が和さんに声をかけ、二人はすぐに仲良くなった。とにかく天音はほがらかだ。天音がいるだけで周りが明るくなったような気がする。
和さんの受け答えは実に丁寧で、常に微笑みを湛えていて、すごく気持ちが和む。二人共、好感が持てる女の子だなと思った。
遠くのほうから視線を感じて、視線の先へ振り向くと、さっと心愛が顔を背けて視線を外した。心愛が僕を見ていた? そんなことはないはずだ。心愛が僕のことなんて気にするはずがない。僕が悩んでいると天音がクリクリとした瞳で覗き込んできた。そして僕の視線の先を見る。
「どこ見てんのよ……心愛っちを見てるのね。玉砕くんって、毎日、心愛っちにアタックしてるって噂になってるけど、本当?」
「うん……でも止めたんだ。もう諦めないといけないと思って、区切りをつけたんだ」
「それだけ追いかけられるのって、キモいって思うけど、それだけ真剣に想ってくれてたってことじゃんね。少し羨ましい気もするなー」
天音がそう言いながら、両手を頭の後ろで組み、伸びをするように少し見上げた。すると大きな双丘が強調されて僕の目の中に飛びこんできた。
「ニャハハハ、玉砕くんも男の子だね。今度はアタシに乗り換えてみる? 私、今はフリーだよ。試しに告ってみる?」
天音が嬉しそうに僕をからかってくる。僕が黙っていると、「なんだ、つまんないの」と言って頬を少しだけ膨らませた。心愛に告白していたけど、僕はそれほど女の子に免疫がない。咄嗟の対応に困ってしまう。
「玉砕くんの反応ってウケるー。もしかして今まで、女友達いないでしょ?」
「うん……」
「それなら天音が最初の友達になってあげるー。ニャハ」
天音が僕の反応を見て「ウケるー。超ウケるー」と言ってコロコロと笑っている。天音にからかわれても嫌な気がしない。本当に天真爛漫だなと思って、天音を見て微笑んでいると、刺すような視線を感じた。そして視線を向けると、心愛が視線と顔を逸らした。
やっぱり心愛が僕を見ているような気がする。さっきは勘違いだと思ったけど、今回の視線は鋭かった。今回は思い違いではないと思う。人は好きなモノも気になるけど、嫌いなモノも気になるものだ。やっぱり好かれている訳ないし、嫌われても当然なことをしてきたし。僕と同じクラスになって気まずいよね。
何も考えたくなくて、周囲を見たくなくて、ブレザーのポケットからスマホを取り出して、画面をボーっと見ていると、天音もスマホを取り出して、少し考え込んだ後に、ニパっと笑った。
「案外、玉砕くんって気が早いんだにゃ。友達になろうって言ったけど、LINEを交換するなんて言ってないにゃ……仕方ないなー……交換しよ」
こうして僕のLINEに初めて女の子が登録された。
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