表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/17

14話 退治

 HRが終わり下校する時間となった。休憩時間に打ち合わせをした通りに心愛が一人で教室を出ていく。それを確かめてから俺、天音、風太、照信、渉の五人はそれぞれにアイコンタクトをして、席を立つ。そして廊下で集合して、心愛から少し離れた後ろを歩いていく。


 心愛と一緒に集団になって帰ることも考えていたが、それだと拓也が近寄ってこない可能性があると照信が指摘し、拓也に悟られない範囲で心愛を尾行することにした。


 拓也と直接会った時、荒事になるかもしれない。だから和さんには家に帰ってもらった。天音も連れていくつもりはなかったが、天音がどうしても付いてくると言い張ったので、天音には同行してもらっている。


 心愛が校門を出て行く。僕達も五十mほど距離を離してついていく。僕が前を向いていると天音が隣からドンと体をぶつけてくる。



「心愛の家って、こっちだったのね。このまま行くと私の家の近くじゃん」



 何だか見たことのある道だと思っていたら、一週間前に天音に連れて来てもらった小さな公園へ続く道なんだな。心愛とは学校で会うだけだったので、心愛の家がどこにあるのか全く知らなかった。


 心愛が十字路に差しかかった。すると蜂須賀学園の制服を着た男子が横の道から現れた。そしてすぐに心愛の真横を歩き始め、心愛の顔を覗き込んでいる。心愛は男子から距離を取るように横に離れるが、男子がすぐに横に寄って距離を詰める。


「拓也だ」と風太が呟いた。それを聞いた僕が走り始めようとすると、横から照信に止められた。



「新、まだ待て。心愛からの合図を待て」



 拓也が現われた時の対策を学校で打ち合わせをしている。拓也が何もしていないのに、僕達が介入するのは、拓也に反論を許すことにもなりかねない。拓也が積極的に心愛に絡み始めたら、心愛が後ろを振り向く手筈になっている。


 しばらく様子を見ていると、拓也が強引に心愛の手首を掴んだ。それと同時に心愛が後ろを振り返った。合図をもらった僕達は全力で駆け走る。


 僕達の駆けつける足音を聞いた拓也が驚いた顔をして固まっている。その隙に僕達は拓也を囲むように立つ。すると拓也が険しい表情をして威嚇する。



「お前達、何だよ。あっち行けよ」



 すると風太がニヤリと笑って、両手を前にして指をポキポキと鳴らす。風太は身長も高く、体格も良いから迫力がある。



「拓也先輩、心愛が嫌がっているのに、何してるんです?」


「お前達には関係ないだろ」


「心愛から話を聞いています。だから拓也先輩のことは知っています。しつこく心愛に言い寄っているらしいですね。心愛は嫌がってるんですから、素直に身を引きましょうよ」



 僕は拓也先輩の前に立ち、心愛から相談されたことを明かす。拓也先輩が僕をジーっと見てニヤリと笑った。



「お前は一年間心愛に告白して振られた奴だろ。俺はお前と同じことをしているだけだぞ。お前に言われる筋合いねーな」


「確かに僕は一年間告白して、心愛に断られました。でも執拗に、しつこく心愛に迫ったことはないです」



 今は区切りをつけているし、今は心愛の友達だ。だから拓也と同じではない。拓也と同じにされたくない。


 渉が視線を鋭くして拓也を睨みつけている。渉は心優しい。だから拓也の犠牲になった女の子達のことを考えて怒っているのだろう。渉は怒ると冷徹になることを僕は知っている。



「拓也先輩、学校の女の子達から話は聞いています。初めは皆で遊びに行って、それから二人っきりになって、強引に女の子達をヤッたらしいですね」


「何を言ってるのかわからねーな」



 天音が僕の隣に並んで、僕の右手をギュッ握る。天音の顔を見ると、天音の綺麗な眉間に皺が寄っていた。相当に怒っている。



「拓也先輩、アタシにも二人っきりになろうって誘ったじゃん。ラブホ行こうって誘ったじゃん。アタシが証拠だけど、何か言い訳ある?」



 拓也は天音を見てヘラヘラとした態度でニヤニヤと笑う。



「それは天音が遊んでると思ったからだろ。遊んでるなら一発やりたいじゃん。だからお遊びで誘っただけだろ。遊びじゃん、遊び」



 今まで黙っていた照信が眼鏡を調えつつ、低いトーンで口を開いた。



「渉は被害者の女の子から直接相談されている。その女の子達が警察に被害届をだしたら、拓也先輩、あんたは終わるよ。渉なら女の子達を説得することができる。それで証拠は揃う。拓也先輩、アンタは既に詰んでるんだよ」


「何言ってやがる。その女達は俺のことが好きだって言い寄ってきたんだ。だからヤッてやったんだよ。好きな俺とヤれたんだから、そいつ等も文句は言えないだろ」



 天音が拓也の言い分を聞いて、小さく「最低」と口走った。こんな奴、僕も大嫌いだ。



「心愛も身体目当てだったんですか?」


「お前だって、そう思って一年も追いかけ回したんだろ。これだけの上玉だ。ヤレたら一生の思い出になるぜ。それに自慢できるしな」



 その言葉を聞いて、天音が飛び出した。そして止める暇もなく拓也の頬をバッシとおもいっきりビンタした。



「新をお前と一緒にすんなー! 新のこと何にも知らないくせに!」



 天音が激高して我を忘れている。拓也が激怒して、握り拳を固めて、天音の顔を狙って、腕を振りきる。バシッという音が聞こえ、拓也の拳は風太の手の平に止められていた。


 素早く照信がポケットからスマホを取り出して、腕を伸ばしてスマホを拓也に見せる。



「拓也先輩、全て録音させてもらった。これを持って学校へ持っていって全てを報告する。証拠もある。これでアンタも終わりだ」



 拓也は驚いた表情になり、そして顔を真っ赤にして怒り狂った目で俺達を睨み付けた後、唾を吐いて、一目散に駆け去っていった。


 渉が大きく息を吐き、いつもの表情に戻る。風太は僕を見て、大きく頷いた。そして照信は大事そうにスマホをポケットに仕舞っている。天音は地面を軽く蹴飛ばして、可愛い舌を尖らせた。



「二度とアタシ達の前に姿見せんなー!」



 心愛が少し離れた所から駆け寄ってくる。それを見た僕が心愛に歩み寄る。



「心愛、面倒なことになるけど、これから学校へ戻ろう。そして先生達に録音を聞いてもらって、渉に証言してもらおう。僕達生徒だけでは、この問題は大きすぎる。わかってくれるよね」


「私のためにごめんなさい。皆と一緒に学校へ行きます。家に帰ってきてから両親にも話をする」



 心愛には黙っていたが、拓也と対峙した後に学校へ報告にいくことは皆で決めていた。


 照信と風太が先頭を歩き、渉が心愛の背中を摩りながら付き添う。天音が僕の腕を抱きしめて、安心させるようにニッコリと微笑んだ。

ブックマ・評価☆(タップ)の応援をよろしくお願いいたします(#^^#)

下にある、☆☆☆☆☆→★★★★★へお願いします(#^^#)

作者の執筆の励みとなります。

よろしくお願いいたします(#^^#)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ