13話 屋上での相談
昼休憩になり、屋上へ行くと、既に風太、照信、渉の三人がフェンスにもたれて立っていた。風太が首をコキコキと鳴らして、にっこりと笑った。
「俺達三人を呼びだすなんて珍しいな。天音と正式に付き合うことにでもなったのか? それなら祝ってやるぞ」
風太の言葉を聞いて、僕の隣にいた天音が体をモジモジとさせて、黙ったまま恥ずかしがっている。高校生の恋愛としては、知り合って二週間ほどで付き合うことも珍しくないが、少し早いような気がする。区切りをつけたばかりだし、まだ考えられない。
顔を真っ赤に染めている天音を見て、照信が口を挟む。
「ここ二週間ほどの行動を見ているが、天音にはその気はあるのだろうけど、新はそこまで盛り上がっていないと推測される。今回呼び出したのは別件だろう」
そんな目で照信は俺を観察していたのか。照信は人を観察するのが趣味なところがあるから仕方ないけど。僕のことはいいけど、天音のことは観察するのは止めてあげてほしい。天音の頬から首までが真っ赤だ。そろそろ天音が限界だと思う。
渉は伏し目がちにまぶたを少し閉じて、両手を前に組んでいる。まつ毛が長くて綺麗だ。
「そろそろ天音をからかうのは止めよう。新、本題に入っていいよ」
三人がマジマジと僕を見つめる。隣から僕の右手をギュッと握って、天音も見上げていた
「実は心愛から相談を受けてね―――」
僕は手振り身振りを使って、心愛からの相談事を丁寧に細かく説明した。そして、どうしたら、この問題を解決できるか、三人それぞれに意見を貰いたいと頼んだ。
風太は話を聞き終わったあと、大きく息を吐いて、胸を大きくした。そして眉間に皺を寄せ、目を鋭くする。風太は気分を害したようだ。
「その男子、女子生徒にしつこく付きまとうとは、許せんな」
照信がモサモサの髪をガサガサと梳く。
「新と天音のことを考えると、この問題には突っ込むなと言いたいが、既に新は相談内容を聞いてしまっている。新のことだから、心愛を助けたいと思っているのはわかっている。本当は警察、両親、学校に報告して相談するのが一番だと思うが。それ以外の解決方法を提案するしかあるまい」
さすが照信。僕の性格をお見通しだ。照信の頭の良さに期待している。きっと何か良い案を出してくれるはずだ。
何かを考えていた渉が、疑問を持つように、少し首を傾げた。
「その男子の情報って、心愛から何か聞いてるかな? できれば、その男子の情報がほしい」
「心愛にしつこくしている男子は、この学校の三年生で、サッカー部主将の剣持拓也だよ。僕は名前も聞いたことなくて、全く知らないけど」
拓也の名前を聞いて、風太、照信、渉の三人は、三者三様の反応をした。三人共、拓也のことを知っているようだ。
風太が呆れたような表情をして僕を見る。何を呆れられているのかわからない。
「新、拓也はこの学校では有名人だぞ。サッカー部の主将で、スポーツ万能、それでいてイケメン、それぐらい俺でも知っているぞ」
何かを考えているように、照信が目を鋭くして、あごに手を持っていく。
「拓也の噂は、大きく分けて二つある。一つは風太が言った表の顔。二つ目は女遊びが酷いという噂だ。この学校でも何人もの女子生徒が、拓也にヤリ捨てされていると噂になってる。確証は持てないが、俺はこの噂は事実ではないかと睨んでいる」
渉がフーっと息を吐く。そして大きく首を左右に振って、組んでいた両腕を解いた。
「照信が言っている噂は事実だよ。何人もの女の子達から相談を受けてる。拓也に憧れて、拓也に近づいたのは女の子達も軽率だと思う。皆、拓也と遊びに行って、二人っきりになった途端に強引にやられている。心愛に近づいたのも、体が目当てだろうな」
渉の話を聞いて驚いていると、いきなり腕を引っ張られて、その方へ向くと天音が必死に訴えるような表情をしている。
「アタシも実は拓也には誘われたことある。皆で一緒に遊びに行った時、しつこく二人になろうって誘われた。ラブホに行こうって言われた。もちろん強烈に断ったけど。それからは拓也、私のことを無視してる。アタシ、あいつ大嫌い」
天音までラブホに誘われていたのか。天音は遊んでいる様に見られがちだけど、本当は身持ちの固い女の子だ。
天音に続いて心愛まで狙った拓也のことを許せそうにない。
真剣になった僕の顔つきを見て、風太は大きく頷き、照信は肩を竦め、渉は何か諦めたような表情をした。
「行くなら付き合うぞ」
「荒事は、俺は苦手なんだがな。見届け人も必要だろう。その場を録音しておこう」
「新は気長に見えて、案外、短気なところがあるからね」
「アタシも一発ガツンと言ってやりたい! 女の子を泣かすなんて許せない!」
天音が僕の手を大きく振って引っ張る。相当、頭にきているようだ。
屋上へ来るまでは、日にちを置いて、ゆっくりと解決すればいいと思っていたし、僕は相談に乗るだけで、前面に出ようなんて思ってもいなかった。
でも皆の話を聞いて、考えが変わった。日にちを置いている時間なんてない。そんなことをしている隙に、心愛が危険になるかもしれない。
警察に相談したいけど、拓也が素直に吐くとは思えない。それに大人達に対処を任せると、すごく日にちがかかってしまう。それはダメだ。
皆が予測したように、放課後に拓也と会おう。僕には珍しく、すごく怒ってるんだと思う。
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