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12話 心愛からの相談

 天音が公園で泣いた日から一週間が過ぎた。天音が泣いていたのはあの日だけ。その後はいつものように笑顔だけど、少しだけ変化があった。僕の前では過剰に明るく振る舞うことはなくなった。やはり無理して明るく笑っていた部分もあったのだと思う。笑顔の仮面と取ったということは、天音が素の部分を見せてくれているのだと思う。


 今も机に顔を乗せて、少し微笑むような表情で、スースーと寝息をたてて眠っている。昨日の夜、LINEをしてきて、天音は色々と楽しそうにおしゃべりを続けた。深夜まで通話していたので眠いのだろう。


 天音の寝顔を見ながら、そんなことを考えていると、和さんが心愛を連れて席に戻ってきた。心愛の顔を見ると表情は硬く、少し青ざめているような気がする。


 和さんが自分の席に着き、その隣に心愛が立って、引き締めた表情で僕を見る。何か真剣な話がありそうだ。僕は猫背を伸ばして姿勢を正す。



「新くん、少し心愛の話を聞いてもらいたいの。男の子からの意見や感想も聞きたいから、お願いできるかな?」



 和さんがおっとりと話しかけてくる。いつものことだが、和さんからは気遣うような優しいの雰囲気が流れてくる。


 僕が無言で大きく頷くと、和さんは顔を上げて心愛を見て、そして心愛は大きく頷いて、僕と目を合せながら、小さなピンク色の唇を開いた。



「あの……十日ぐらい前から告白してくる男子がいて……何度も何度も断ってるんだけど、諦めてくれなくて……厭らしくて、しつこい感じがして嫌なの」



 心愛は美少女として有名だ。噂は校内だけに留まらず、他校までに及ぶ。告白は毎日のように起こっていて、丁寧な性格の心愛は、一人ずつ丁寧に交際を断っている。


 一年間も告白を続けたことについて、心愛に迷惑をかけたと今ならわかる。心愛の気持ちや都合を考えていなかった。すごく迷惑をかけたと今でも反省している。


 心愛が両手を前で握って、少し伏し目がちに、少しだけ俯いた。その姿も清楚で綺麗だ。



「新くんは、普段は私に声をかけないようにしてくれていたし、節度を持って接してくれてた。だから告白は断ったけど、新くんは人として安心していたの……でも今度の男子は違うの。学校の帰りに毎日待ち伏せされて……それでね……家に帰って、お買い物に行こうと玄関を出たら、玄関の門の前で立ってたの……すごくしつこい感じで、すごく嫌なの」



 僕が言えたことではないけど、告白にもマナーがあると思う。僕は僕なりだけど、それなりにマナーを守っていたつもりでいる。でも心愛が話す男子は違う。それってストーカー寸前って感じがする。



「ご両親には相談したの?」


「両親に相談すれば、外出禁止になるだろうし、学校へ来るのも禁止されると思うの。だから言い出せなくて相談してない」



 ご両親からすれば心愛は大事な愛娘のはず。それぐらいの措置はするかもしれない。心愛が相談をためらっている気持ちもわかる。



「警察に相談してみるとか?」


「あまりこのことを大事にはしたくないし、警察へ行くのって……怖いの」



 確かに警察へ相談すれば、ご両親にもバレることになる。学校側へ相談が行くかもしれない。それは心愛の望むところではなさそう。それに警察ってなんだか敷居が高いというか、漠然と怖いんだよな。


 黙ってしまった心愛の代わりに、和さんがやんわりと話を続けた。



「それで困っちゃって、私が新くんに相談すればって提案したの。私達、女子と違った男子の意見も聞けると思って」


「それって新を巻き込むってことでしょ。新は関係ないじゃん。相談する男子なら他にもいっぱいいるじゃん。どうして新なのよ。自分達の問題は自分達で解決しなよ」



 いつの間に起きてきたのか、振り向くと天音が怒った顔で和さんと心愛を見てる。和さんは天音の感情を受け流すように、ゆっくりと優しく微笑んだ。



「天音ちゃんならわかると思うけど、女子っておしゃべりする相手ならいっぱいいるわ。でも本当に相談できるお友達って案外少ないでしょ。新くんは安心できる男の子だし、すごく相談に乗ってくれると思って、心愛ではなく私が提案したの。ごめんなさいね」


「そんなの和っちの勝手じゃん。ワガママじゃん。新にとっては迷惑だよ。他を当たってよ」



 天音が声を抑えて叫んだ。僕のことを思って、怒ってくれているのだろう。でも話を聞いてしまった。今回心愛が対している男子は危ない気配がする。話を聞いてしまった以上、相談に乗ってあげたい。



「もし天音がそういう男子に追いかけられていたら、僕は天音を助けようと行動すると思う。そのまま知らない振りなんてできない。僕が困っていたら、天音は助けてくれるよね。友達なんだから、困っていたら助けたいと思う。僕に何ができるのかわからないけどね」



 僕の言葉を聞いて、天音は黙って考えていた。そして大きく頷いて、表情が蕩けるように笑む。



「新は仕方ないなー。本当にお人好しなんだから。アタシも協力するよ」


「ありがとう」



 でも、どうしたらいいんだろう。僕だけでは何も思い浮かばない。僕の友達に相談してみようか。あの三人なら信頼もできるし頼りになる。


 昼休憩に三人に相談してみよう。



「何ができるかわからないけど、少し考えたいと思うから、僕に任せてくれないかな?」


「うん……ありがとう」



ペコリと頭を下げて、安心したように、安堵したように、心愛は静かに微笑んだ。

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