表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/49

第40話 『一寸先は……』

「96時…………自然界ではようやく1日が終わって、1日始まったタイミングってことか……」


 フレディとの会話の後、睡眠をとった。

 それも、丸半日ほどの時間は寝た。

 しかし、この世界の12時間とは所詮現実世界での3時間に過ぎない。


「バグるな……時間感覚」


 12時間も寝てしまったので、眠気など当然ない。

 では、何をしようかと考えながら、とりあえず病室を出ようと扉を開いた。


「おや?お目覚めのようですねぇ? おはようございます、ルーシュさ──」


 寝起きには何となく嫌な声を聞いた気がしたので、咄嗟に扉を閉めた。

 きっとあれは幻聴だった、多分、まだ耳が治りきってないんだろう。

 そう思い、もう一度扉を開く。


「──何も姿を見るなり閉めなくても良いでは無いですか……私とてわざわざあなたの──」


 幻聴じゃなかった。

 無意識に閉めていた扉に鍵をかけ、ベッドに腰をかける。


(目覚めの悪い朝だな……こりゃ……)


「──わざわざ部屋の前で待っていてあげたというのに、失礼ですねぇ? それが『勇者』に求められる態度なのですか?」


 元々そこにいたかのように、透明魔人は僕の横に立っていた。


「どうやって入ってこれたかはさておき、お前が僕に何の用なんだよ」


「まあまあ、そんなに邪険にしなくてもよろしいではないですか。恐らく、今後しばらくは行動を共にすることになるでしょうからねぇ」


 ……何を言ってるんだこいつは。

 何が悲しくてこんなやつと行動を共にすることになるというのだ。


「言ってる意味が全く分からない。理由を言え理由を」


「理由……ですか? そんなもの一つですとも。折角我らの世界である魔界に、勇者様が滞在されているのです。それならば、勇者様と行動を共にできるこの好機を逸するべからずと思うのも、当然のことではないですか?」


「気色が悪いし、つくならもう少しまともな嘘にしろ」


 魔人はいつも通り「フフッ」と気味悪く笑うと、病室の扉に手をかけた。


「ですがまあ……私とて勇者様のプライベートに干渉しようとするほどの害悪ではありません。基本的には離れておきますとも。ですから、安心して妹様の妄想に浸るとよろしいでしょうね? フフッ!」


 魔人はいつもより大きい声量で嘲笑をして、部屋を出ていった。


「……次会った時に殺すか……」


 溜息を混じらせた声で言いながら、僕も部屋を出た。

 そこに魔人はおらず、基本的には離れているというのは本当だったのかもしれない。

 しかし、ただでさえ発見しづらい相手なのだから、監視されていないとも限らないため、警戒はしておく。


「しっかし広いな……この城」


 独り言を漏らしながら、廊下を探索する。

 僕がいた病室は、4人がまとめられていた部屋の隣にあったため、実質廊下の端からのスタートとなった。

 スタートしてから数分歩いてはいるものの、一向に反対端に辿り着かない。


「それに、あの魔人もどこにいるんだか……」


「──お呼びしましたか?」


 独り言の続きを話した途端、僕の背後に噂をしていた奴がいた。


「……なんなんだよ、お前」


 少し驚いたが、こいつの思い通りの反応もしたくないので冷静を装う。


「なんなんだ……とは? 私はあなたに同行する魔人、ディアス・シャーロットです。これでよろしいですか?」


 そういうことを聞きたいわけじゃないが、話を広げるのも面倒なので、そのまま無視した。


「それから、先程は伝え忘れておりましたが、私のことを『魔人』や『お前』などと連呼するのはやめていただけませんか? 私と2人きりの状況ならまだしも、『魔人』も『お前』もこの世にはありふれておりますゆえ、誰のことを指しているのか分かりづらいので」


(『魔人』がありふれてたら、とっくのとうに世界なんて滅亡してるだろうよ)


「ですからまあ、気軽にディアスとお呼びください。お望みであれば、私も勇者様のことをルーシュとお呼び致しますよ?フフッ」


「……この世界に来たせいで、お前との距離感もおかしくなりそうだけど、お前は元々敵だったんだぞ? そして、僕を誘拐した張本人。どうすればそんなに馴れ馴れしくしようと思えるのか、知りたいものだね」


 皮肉たっぷりに返してはみたが、この魔人の心にストレスを与えるのは無理そうだった。


「そうだ、それから──」


 僕の背後を歩く魔人に、勢いよく剣を振りかざした。

 どうなるかは何となく分かってはいたが。


「何をしているのですか? 突然斬りかかってくるなど、物騒ですねぇ」


 魔人は余裕そうに僕の剣を左手の指で掴んでいた。

 そこから先に剣が進む気がしなかったので、すぐさま剣を納めた。


「次会った時に殺すって決めてたから斬ろうとした。それだけだよ」


「本気で殺せるとは思っていなかったようですが……もし私が、不意打ちに対して反撃をしていたら、あなたは今頃、きっと影も形も無くなっていましたよ?フフッ」


 相も変わらず人を嘲笑う声を忘れない魔人だが、僕がただふざけて魔人を斬ろうとしただけだと思ってるらしい。

 実際その意味もあったが、もっと大事な意味がある。


「でも、今のでなんとなく分かったよ」


「……?何がですか?」


「お前、僕を殺す気ないだろ?」


 この推測に至ったのにはちゃんと理由がある。

 まず始めに、今までのこいつの行動が全ておかしい。

 ザックスを探しに行った時や、グリフィン大洞窟で拾われた時、そして、今現在のこの状況、その気になれば僕を殺すことができたはず。

 特に、襲いかかってくる相手に反撃すらしないなんて、よほど見くびっているか、僕の推測通りかだ。

 そしてなにより、魔王の脅威であるはずの『勇者』を、自分の城に幽閉しておくというのが、最も意味のわからない話である。


「……確かに、そうかもしれませんねぇ? ですが、『勇者』とは珍しい存在なのです。それに、勇者様と私の力の差は歴然、たとえ殺すのを惜しもうと、いつでも殺せるという面では、そこまで不思議なことではないと思いますがねぇ。ですからまあ、強者の余裕、というやつですよ。フフッ」


「いや、そうじゃない。お前は僕を弄んでるんじゃなく、魔王の命令で殺すことができない。違うか?」


 その瞬間、表情こそ見えないが、確かに魔人の笑みが消えた気がした。


「実際、魔王が僕のことを殺そうとしていないことは確かなはずだ。もし殺そうと思っているなら、僕は既に、お前によって殺されてる。そうじゃないってことは、魔王の従者である魔人にも、殺すなとは言っているに違いない。殺してはいけない、ということは、死なせてもいけない、ということ。だからこそ、僕が勝手死しないように、お前は僕に同行する必要がある」


 僕の推論発表が終わると、魔人は沈黙を保ったまま、何かを考えていた様子だった。

 しばらくして、その見えない口を開いた。


「そこまで的中されては、誤魔化しようもありませんねぇ。ですがまあ……その目的があなたに知られたからといって、何だというのです?」


 開き直った魔人は嘲笑の表情を半ば取り戻していた。


「勇者様の推測通り、私は勇者様を殺しはしません。その点はもはや認めましょう。ですが、あくまで殺しはしないだけなのですよ。私が今この場で勇者様の指をへし折る程度であれば、何の問題もございませんよ?」


 魔人が僕の手先を指差すと、僕も咄嗟に指を隠した。


「フフッ、冗談ですよ? そのようなことをしたところで意味はありませんからねぇ。ですがまあ、勇者様が痛み叫ぶ姿を見てみたいという願望もないこともないですがねぇ?フフッ」


 完全に嘲笑の笑みを取り戻した魔人はどうやら絶好調らしい。


「そうか、もう分かったから、さっさと居なくなってくれ、目障りだ」


 こんなに遠慮なく暴言を吐くのは、何気に初めてかもしれない。もちろん、前世の期間も含めて。


「そうするとしましょう。これ以上魔王様の目的についてボロを出すわけにもいきませんからねぇ」


 魔人はそう言うと後ろへと歩き始めたが、3歩ほど歩いてまた立ち止まり、上半身だけ振り返らせた。


「あー、そうです。もし勇者様が私を本当に殺したいのであれば、訓練場へ訪れると良いでしょう。この廊下にある部屋は全て病室ですから、探索したところで何も面白いものはありませんよ。フフッ」


 そう言って、魔人はいつぞやの襲撃の時と同じように、空気に溶けるように消えていった。


「あいつの本体はどこにいるんだよ、全く……その訓練場とやらの場所も言わないし……」


 魔人に呆れつつ、正面を見て探索を再開しようと正面を見ると、先ほどまで無限に続いていた廊下の端が目の前にあった。

 かと思いきや、向かって右側には廊下が続いている。


「……なにがどうなってる?」


 仕方なくそちらへ歩き出すと、しばらく歩いたところで左側への曲がり道があり、さらにその次には右へ、そして階段が続いていた。

 僕を誘い込むように一本道が続いてる原因は、なんとなく分かった。


「あの魔人にしては随分と気が遣えてるじゃないか」


 ナビゲーションに従いながら先に進んで行くと、ものの数分で目的の部屋の扉だと思われる場所へと辿り着いた。


(訓練場……よく考えてみれば、勝手に使っていいのか分からないけど、まあ……あの魔人に許可もらったってことにすればいいか)


 そう思って、躊躇なく両開きの扉の取っ手に手をかけ、扉を押して中に入ると、学校の体育館程度の広さの空間がそこにあった。


「こりゃまた、かなり広いな……」


 そう言って足を踏み入れた瞬間だった──


「──危険です!ルーシュ様!」


 咄嗟の声に脳は反応していたが、身体に命令を下すことは間に合わなかった。

 ──一瞬見えた景色には、自身の胸部から血を吹き出し、その衝撃で背中から倒れる僕の身体が映っていた。

==========

ルーシュ・ラナタイト(回想中)

レベル77

役職(ジョブ)魔法騎士(ルーンナイト)

 体力:902

 魔力:673

攻撃力:392

防御力:299

魔攻力:406

魔防力:351

素早さ:417

 知力:381

アビリティ:王家,勇者,転生者,捕食,自然治癒【体】,自然治癒【魔】,生物感知・極,魔力感知・極,魔導・極,物理耐性・極,魔法耐性・極,毒耐性・極,陽炎・極,水月・極,疾風・極,慈悲・極,個性・極,達人・極

 称号:勇者,美食家

==========


固有魔法:不明

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ