第1話 『勇者転生』
──20XX年 9月25日(水) 午後4時47分
ラナタイト王国、ラナタイト城にて
「国王様、伝令です! 先程、王妃様が第2子をご出産なられたとの事です!」
「なに!それは本当か! すぐに向かうと伝えておけ!」
「はい!かしこまりました!」
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「はいはい。元気な子ですねぇ」
「ローズよ!子が産まれたとは本当か!」
「あらあなた、そうです、元気な男の子ですよ」
「我が国の第2王子か……名は決めてあるのか?」
「あら、すっかり忘れてましたわ。でも、ザックスは私が名付けたことですし、今度はあなたが名前を決めてあげたらどう?」
「そうか……であれば……」
──ルーシュ、今日からお前の名は、ルーシュ・ラナタイト、ラナタイト王国の第2王子である!
「ルーシュ……いい名前ですね。それにしても本当に元気な子。ステータスを少し見てみようかしら。……あら!あなた、大変よ! この子、赤ん坊なのに凄いステータスだわ!」
「……本当ではないか、体力も魔力も攻撃力、素早さも、何もかも申し分ないステータス……あれはザックスに与えようかと思っていたが、このような子は今後千年産まれるかわからない。やむを得ん、この子に『勇者』の称号を与えるとしよう」
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──16年後
妹を探しながら城の廊下を歩いていると、向こう側から歩いてくる兄様が見えた。
「ザックス兄様!」
「おう、ルーシュか。どうした?」
「フェイを見なかった?」
「フェイ? フェイなら、今俺も探しているところなんだが……何か用事か?」
「うん、今日の壮行式は、俺を『勇者』として冒険に旅立たせてくださる為のもの。それで、父様が、冒険に出る時には、パーティメンバーを集める必要がある、って言ってたから、フェイをパーティに引き入れようかと思ってさ!」
「なるほどな……確かにあいつ、可愛らしい顔して普通に強いからなぁ……まあわかった、フェイを見つけたら伝えておくよ。お前は壮行式の準備に戻った方がいい。それと、父様じゃなくて国王様、16年経っても、その癖は直らなかったみたいだな……」
「あはは……ああそれと、兄様。こういうのは、あんまり聞かない方がいいとは思うんだけど……」
「どうした? 別にいいぞ」
「その……本来なら、『勇者』の称号は俺じゃなくて、兄様に与えられるものだったんでしょ? なんていうか……嫌じゃないの?」
兄様の表情を見て、様子を伺う。
でも、兄様は軽く笑って答えた。
「悔しいさ、それもかなり。だけど、お前のことは嫌いでもなんでもない。だって、出来の良い方を『勇者』にするのは当たり前のことだろ? きっと、国王様だって、俺に申し訳ないと思ったはずだ。でも俺は、俺自身の力で強くなりたいと思ってる。その称号はお前の方が相応しいよ」
頭を軽く触られ、兄様はまた笑った。
兄様が本当に何も気にしていないのだということを知って、自然と俺も気持ちが明るくなる。
「俺も!兄様に負けないくらい強くなってみせるよ!」
「おう!その意気だ」
「ありがとう兄様。あ、フェイの件よろしく!」
兄様の横を走りすぎながら、兄様に手を振ると、兄様も笑顔で手を振り返してくれた。
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「ああルーシュよ、丁度良い所に来たな。もうすぐ式の準備が終わる。お前はそこの部屋でゆっくりしておけ。今日はお前の16歳の誕生日も兼ねた特別な日じゃからな。お前に体調を崩されでもしたら困る」
「はい、わかりました、父……国王様」
父様に挨拶をして、壮行式の準備室に行き、軽く仮眠を取ろうと思い椅子に腰掛ける。
すると、またすぐに扉が開き、探していた人物がやってきた。
「お兄様!フェイをパーティに引き入れて頂けるというのは、本当ですか!?」
「ああフェイ。うん、そのつもりだけど、いいかな?」
「もちろん!凄く嬉しいです! 正式にパーティメンバーになった暁には、お兄様の矛となり盾となり時には囮になり……」
「そんなに頑張らなくても大丈夫だよ。フェイのステータスだと、攻撃力と素早さが高いから、相手の隙を読んで攻撃するとか、隠密して不意を付くとか、僕のサポートをしてくれればいいからさ」
「そうですか……それでも、お兄様が危険な時は、必ず!フェイがお守りしますから!」
「あはは、大丈夫だよ、自分の身ぐらい自分で守るって」
フェイと話し込んでいると、式の準備が終わり、間もなく式を開くと言われた。
結局仮眠は取れなかったものの、元々そんなに眠くなかったし、特に気にもしなかった。
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「それではこれより、我がラナタイト王国の第2王子、ルーシュ・ラナタイトの壮行式を行います!」
──午後4時20分31秒
「それではまず初めに、この度『勇者』の称号を与えられるルーシュ・ラナタイトが入場します。皆様、盛大な拍手でお迎えください」
──午後4時24分41秒
「続いて、『勇者』の称号授与の前に、隣国のグラサール王国、アレスタル王国の国王より便箋が届いていますので、代理人の私が読ませていただきます」
──午後4時37分59秒
「続いて、我が国王、ロイ・ラナタイトより、お話をいただきます」
──午後4時42分26秒
「続いて、ルーシュ・ラナタイトより決意表明をいただきます」
──午後4時46分04秒
「では最後に、国王よりルーシュ・ラナタイトに『勇者』の称号を授与していただきます」
「ルーシュよ、前に来なさい」
「はい!」
──午後4時46分24秒
「お主の類まれなる戦技の才能と、勇者に相応しい勇敢さ、優しさ、その全てを称え、ここに『勇者』の称号を与えることを宣言する!」
──午後4時46分37秒
「私も、『勇者』になった暁には、パーティメンバーや街の方々との協力、戦技の努力を惜しまずに、いつか必ず、魔王討ち取ってみせることを誓います!」
──午後4時46分50秒
「では、ルーシュよ、この『勇者』の称号を受け取るがよい」
──午後4時46分54秒
「はい、ありがたく受け取らせていただきます」
──午後4時46分57秒
《称号『勇者』を獲得しました》
《アビリティ『勇者』を獲得しました》
「国王様、これで、私も晴れて『勇者』に──」
──午後4時47分00秒
《アビリティ『転生者』を獲得しました》
「…………」
「どうした? ルーシュよ」
「ルー……シュ……」
「これにて、ルーシュ・ラナタイトは正式に『勇者』となりました! 皆様、もう一度盛大な拍手をお送りください!」
(ここはどこだ? 目の前にいるこの老人は誰だ? それよりこの状況はなんだ?)
「おめでとうございます! お兄様!」
「おめでとう。ルーシュ」
(あの2人は誰だ? 僕は今どうなってるんだ? 理解が追いつかない……)
「待て! 何かルーシュの様子がおかしい。どうしたのだルーシュよ!」
(ルーシュ……って誰だ?……考えるほど……目眩……が……)
「うっ……」
そのままルーシュは床に倒れ伏した。
直後に、周りの城の医師たちが駆けつけ、ルーシュは医務室へと運ばれることになった。
「お兄様!お兄様!」
薄れゆく意識の中、1人の可愛らしい声が聞こえ続けた。
「フェ……イ……」