表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/49

第22話 『魔界に安らぎは訪れない』

「──勇者……なのですか……?」


 男の方が僕の言葉を遮って、答えが出ているはずの質問を投げかけてくる。


「ええ、そうですが……」


 それを言うと、男は僕から視線を外し、女の方へ向けた。

 そうしてようやく気づいた。

 女は既に僕から視線を外しており、下を向き、小刻みに揺れている自分の体を抱きしめていた。


「──えっ?」


 女のその様子は、怯えている以外の何者でもない。

 それも、軽度の怯えではない。

 顔は青ざめ、時折細く弱い声で呻吟しながら、その身体を震わせている。


「えっと、これはどういう──」


「すみません……一旦この部屋から出ていってもらえますか……」


 男は僕に視線を向けることなく、退出を要求した。

 女がこうなった原因は、それまでの経緯を見ていたので何となく分かる。

 ……きっと、僕が原因だ。

 詳しい理由は知らないけど、僕はとにかく退出すべきなのだろう。


「……分かりました……その…………いえ、なんでもないです……」


 気遣う言葉をかけようかとも思ったが、声をかけることで、逆に状態が悪化しても困る。

 僕が退出する寸前まで、彼らが僕を見ることは一切なかった。

 唯一見ていてくれていた少女はいたが、その視線も、すぐに隣の少年に抑制されていた。


 魔王城の廊下には誰もいない。

 警備の1人や2人いてもおかしくはないが……どうしてなのだろうか。

 とりあえず、あの4人に影響を与えない場所に行かなければ。

 そうして、入ってきた入り口に戻ってくると、先ほどの牛と馬がいた。


「あァ!?だったらテメェを──ん?ユウシャ? 何しに来やがったんだァ? 散歩だったらとっとと帰りやがれ、オレは今テメェを相手にしてられるほど暇じゃねえんだよォ!」


「十分すぎるくらい暇であろうが。ついさっきまで、暇だから何か勝負をしようと言って、結果負けて憤怒していた貴様が何を言っている」


「その戦いの続きをするから暇じゃねえって話だァ! それにオレはまだ負けてねェ! テメェがそんなに勝ち誇りてェなら、次は本当に戦おうや! これでよォ?」


 そう言うと、牛はいきなりその背中の大斧を手に取り、馬に向けた。


「阿呆か……ここで我らが戦って、勇者に漁夫の利を得られたらどうする。というより貴様、いつまでこの勇者をそこに野放しにしておくつもりだ」


「だからァ!オレはユウシャを相手にしてる暇は──」


「別に、君らは勝手に争っててくれていいよ。漁夫も別に狙ってない。それよりも、彼らからなるべく遠ざかっていたいんだ」


 2人の会話に取り留めがなさそうだったので、割り込んで話し、さっきまで自分が居た部屋の方を指さした。


「遠ざかっていたい? なぜそのようなことを。どういう理由があるのかは知らんが、魔王様がお戻りになられるまで、貴様はこの魔王城から出てはならないぞ」


「ハッ!オレは分かったぜ? オマエ、ニンゲン共と喧嘩したんだろ! オマエみたいなやつが馴染めるわけねェからなァ!」


 間違ってはいるがだいたいそんな感じの理由だ。

 この牛は勘が鋭いんだか鈍いんだか。


「……まあ、そういうことでいいよ。 魔王城から出られないなら、彼らから1番遠い部屋……いや、部屋じゃなくていい、とにかく遠い場所に行っていいか?」


「ならば、この場で良いだろう。貴様の言っていることは虚言かもしれないからな。我らの目の届くところに置いておけるならば、こちらにとっても好都合だ。遠い場所と言うが、ようするに、人間共から見られない場所ならば良いのだろう? 奴らはつい先ほど外出から帰ってきたばかりだ。恐らくだが、今日はもうあの部屋から出ることはない」


 確かに、距離を置くとはいえ、物理的に距離を置きたいわけでは無い。

 どちらかと言えば、今後どれだけ魔界にいる必要があるかわからないし、交流は深めておきたい。


「わかった。そうさせてもらうよ」


「言っておくが、あくまで貴様をここに居させておくだけだ。要求を聞いたり、貴様に自由を保証したりする気などはない」


 釘を刺されてはいるが、本当に何もする気はないので、特に返事もせずにそのまま了承した。


「おい、何テメェだけで勝手に全部進めてんだァ? オレはオマエがここに居ていいなんて言ってねェだろうが」


 先ほどからの様子から何となく察していたが、やっぱり認めてくれないらしい。

 ただ、この牛の性格的に多分……


「戦って勝てたら……とかそんなんだろ?」


「ア?何で分かったんだテメェ……」


 やっぱり戦闘思考に走っていたらしい。


「阿呆か貴様……もし仮に戦って勇者を殺しでもしたらどうするつもりだ」


「ハッ!オレ程度に簡単に殺されちまうやつはユウシャじゃねェ。もしそんなやつだったなら、魔王様も呆れちまうだろ」


 オレ程度とは言うが、魔王城の門番と戦う時なんて、普通はゲームでも大分後半の方だ。

 それなのに、レベルがかなり中途半端な勇者に、そんなことをさせてどうなるかなんて、目に見えている。

 でも……


「分かったよ、勝てば良いんだろ?」


「オォ?随分とやる気じゃねェか?」


 こいつの知能の低さなら……


「待て! 勇者と勝手に戦うなど、魔王様は許可を──」


「オマエは1回黙ってろや! お互いに勝負を了解した時点で、そっからもう対戦は始まってんだァ!」


「……はぁ。ならば、すぐそこでやれ。俺の目に付く場所なら、もしものことは防げる」


 そう言って、馬が空中に手をかざし、それなりに広い魔力のフィールドを入口付近の平野に形成した。


「ご丁寧にどうも」


「チッ!余計なお世話だってんだ!」


 そう言いつつも、牛はしっかりとフィールドの片端に移動する。


「さっさとテメェも配置につきやがれ! じゃねェと、今すぐテメェのその首切り飛ばしてやる!」


 牛の声は距離があるにも関わらず普通の声量として聞こえる。

 応援団には必須級の声量だろう。


「僕はここからでいい。お前のタイミングで始めてくれ」


 そう言って、魔王城の入口からさほど離れていない距離で準備完了を報告する。


「おもしれェじゃねェか。なら、5秒後に開始だァ!」


──5


 その言葉を聞いて、左手に魔力を、右手をスーツの内ポケに入れるように、衣服の内側へ忍ばせる。


──4


 牛は背中の大斧を両手で構え、開始を待っている。


──3


 馬の方は特に変わった様子を見せることはなく、ただ僕らの戦いを見守ろうとしている。


──2


 完全に魔力を溜めきった左手を下に向け、右手は"それ"を握ったまま衣服の内側で隠す。


──1


 牛がややフライング気味に動き出し、僕の方へ向かってくる。しかし、その初速は遅く、僕でも見切ることができた。


──0


「ウィズアエラス!」


 そう言い放ち、僕は空高く舞い上がってみせた。

 見下ろすと、僕が元いたと思われる場所では既に、あの牛が大斧を振り下ろしていた。

 初速こそ遅かったが、やはり牛だからか、加速力は半端ではなかったらしい。

 そうして、牛が僕の飛び上がった方向を見上げる。

 その時には既に、僕は"それ"の照準を牛に定めていた。

==========

ルーシュ・ラナタイト(回想中)

レベル77

役職(ジョブ)魔法騎士(ルーンナイト)

 体力:902

 魔力:673

攻撃力:392

防御力:299

魔攻力:406

魔防力:351

素早さ:417

 知力:381

アビリティ:王家,勇者,転生者,捕食,自然治癒【体】,自然治癒【魔】,生物感知・極,魔力感知・極,魔導・極,物理耐性・極,魔法耐性・極,毒耐性・極,陽炎・極,水月・極,疾風・極,慈悲・極,個性・極,達人・極

 称号:勇者,美食家

==========


固有魔法:不明

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ