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第19話 『救いという名の束縛』

 物陰に潜んで、4体のゴブリンを殺すタイミングを見計らう。


「──はあッ!」


 両手に握った双剣で、その4体のゴブリンを素早く切り裂いた。

 そのゴブリン達は、自分達が切られたことにも気づいていないかのように、静かに床に倒れ伏した。


暗殺者(アサシン)もなかなか悪くないな……」


 血に塗れた双剣を見ながら、独り言を呟く。


「少しは殺すことに躊躇いを持って欲しいものですねぇ」


 背後から耳障りで聞き慣れた声がする。


「僕より圧倒的に格上のお前には言われたくないね」


「フフフ……」


 やや狂気じみた話を、他愛のない雑談のように話す。


「それと、前にも申しましたが、お前ではなく名前で読んでいただけませんかねぇ。お前だと、誰を読んでいるのかわかりづら……」


「それは何度も聞いたよ。前にも言ったけど、元々は敵だった人間を、簡単に信用して気安く名前で呼ぶのは無理だ」


 そう言うと、そいつは手を顎らしき場所に当てて、


「とは仰られますが、結局のところ行動を共にすることを拒否していないのは、貴方様自身なのですからね?」


 そして、少し嘲笑するように言った。


「ルーシュ様?」


「はあ……わかったよ」


 まあ別に、名前で呼ぶだけならば問題はないだろう。

 こいつには、一応借りもあることだし……


「ディアス」


 いざ名前を呼ぶと、表情はわからないが、その目の前の透明魔人の頬が若干緩んだような気がした。


「それでは、そろそろ戻りましょうか」


 ディアスが僕に背を向けて言う。

 そして、それに無言で付いていく。


 "こっちの世界"にもかなり馴染んだ。

 "あの時"こいつが来なければ、僕は間違いなく死んでいた。

 しかし、まだ心残りはある。


「あの時……どうしてフェイも助けなかったんだ?」


 足早に歩く紳士スーツの背中に問う。


「……ふむ。2年経った今でも、まだそのようなことを気にしておられるのですか……」


「"こっちの世界"で2年だろ? "あっちの世界"じゃまだ半年だ。半年なら……フェイはまだ……」


 そうだ──あっちの世界ではまだ半年しか経っていない。

 フェイがどうにかして生き延びていてくれれば……


「……そうですね。もうこの際、真実を話してしまいましょうか。フェイ様を助けなかった理由は、主に2つ。1つは、私たち魔族にとって、利益がないから。逆に、勇者であるルーシュ様を、私たちの管理下に置いておくことは、メリットしかありませんからねぇ」


「それに関しては僕だってわかってる。それで、2つ目は?」


「古来より、古魔(エンシェント)はあの時期になると、第二次性徴がちょうど終了した時期の人間の女を神に捧げるのです。そうしなければ、神より与えられし長寿が失われてしまう。……実際のところは不明ですが、本当に古魔(エンシェント)が絶えてしまうのは、こちらとしても不都合ですからねぇ?」


(そういえば、あの古魔(エンシェント)も、古の契約とか言ってたっけ……)


「理解していただけたのならば、執着するのはやめた方がいいですよ。しつこい男は嫌われる……とか、そのようなことを聞いたことがありますからねぇ」


「……そうだな」


 魔人は僕の要求を呑む気はないらしい。

 まあ、端からこんなやつに頼る気はない。

 自分1人の力だけでも、絶対にフェイを助けると誓ったんだ。


* * * * * * * * * * * *


「ごめん……よ…………フェイ……」


(──いつか……必ず……!)


 そして、僕は意識を失った。

 僕が意識を失っている間の話は、後に例の魔人から聞いた。

 僕が意識を失った後、僕は禿頭の3体の巨人に殺されかけていたらしい。

 その時たまたま魔人がそれを発見して、僕を助けた、と言っていた。

 魔人曰く、ザックスに作戦を妨害された後、僕たちが魔人を警戒してしまったため、警戒を緩める頃ぐらいにまた狙おうと思っていたそうだ。

 そうして、僕たちがグリフィン大洞窟に向かうというのを知り、その最奥で待っていたはずが、一向に僕たちが来ないのでこうなったらしい。

 魔人は僕を助けた後、フェイは助けずに、僕だけを担いでそこを出ようとした。

 その時に僕も目を覚ました。


「……ん……?」


「おや? お気づきになられたようですねぇ?」


「……その声……魔人!」


「ほう……まさか目覚めてすぐに気づくとは……素晴らしいですねぇ」


「──放せッ!」


「そんなに暴れてよろしいのですか? 私は回復魔法などは使っておりませんよ?」


 その瞬間に下半身が潰れていたことを思い出し、激痛が走る。


「──ッ!」


「フフッ、哀れですねぇ」


「フェイは! 僕を何で助けた! どこに連れていくつもりだ!」


「ほぼ瀕死のような状態で、よくもまあそのような的確な質問が次々と並びますねぇ。」


「いいから答えろッ!」


 下半身の激痛を、怒りで誤魔化さなければ気が済まない。


「それほどまでに焦らずとも、お答えしますとも。どうせ移動には時間がかかりますから」


「時間がかかる?」


「ええ、私は今から貴方を魔界へと連行します。しかし、自然界から魔界への移動には、世界を渡る必要があるので、とても時間がかかるのです」


「魔界?」


「ええ、魔界です。我ら魔族の本来の故郷。魔人である私ならば、自由に行き来が可能なので、ご心配には及びません」


 情報が多すぎてうまく理解できない。

 僕はまた別の世界に行くのか?

 いや、今はまずとにかく情報を引き出さないと。


「何で僕を連行する?」


「フフッ、良い質問ですねぇ。というより、貴方も何となくわかるでしょう」


「……魔王に──」


「──その通りです! 全ては魔王様の意のままに! と、言うことでございます」


 急な大きい声が傷に響く。


「フェイはどこだ!」


「知りません」


「知らないだと……?」


「ええ、あなたと違って、魔王様に回収命令は出されておりません故、どこにいるかなど、あの古魔(エンシェント)に連れていかれた今、知る由もありません」


(適当だなこいつ……)


「ご心配せずとも、詳しいことは魔界に着いてからゆっくりと……今は休んでおかなければ、そのボロボロの下半身が千切れるかもしれませんよ?」


「そう思うんだったら……回復魔法の1つぐらいかけてくれてもいいんじゃないのか?」


「そんなことをすれば、治った身体で貴方は抵抗するでしょう? 面倒なのは私とて嫌いですからねぇ。全く、丁度良く瀕死になっていてくれて助かりましたよ。フフッ」


 度々見せる嘲笑は強者の余裕のように感じられ、抵抗する気を喪失させる。


 そんな会話をしていると、いつの間にか洞窟を出ていた。


「ああそれと、魔界では陽の光が当たりませんゆえ、今の内に浴びておいてくださいね?」


 そんなことはもうどうでもいい。

 本当ならこの洞窟を、フェイと一緒に出るはずだった。

 あの方向音痴のフェイと、迷いながら、一緒に……


「では、魔界への入口を開くので、そのままぐったりしてお待ちください。フフッ」

==========

名持ち(オウンネーム)】ディアス=シャーロット

レベル不明

 種族:セルレオン

 体力:不明

 魔力:不明

攻撃力:不明

防御力:不明

魔攻力:不明

魔防力:不明

素早さ:不明

 知力:不明

アビリティ:不明

称号:不明

==========


固有魔法:不明(ストーリーの都合上)

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