第15話 『グリフィン大洞窟』
「──エスフィオガ!」
目の前のコボルトが、平原の暗闇に燃えて光る魔法を受け、体に火を帯びて倒れる。
《レベルが76に上がりました》
「うーん、コボルトの経験値もだんだんしょっぱくなってきたな……」
独り言を呟きながら、ステータスを確認する。
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ルーシュ・ラナタイト
レベル76
役職:魔法騎士
体力:902
魔力:673
攻撃力:392
防御力:299
魔攻力:406
魔防力:351
素早さ:417
知力:381
アビリティ:王家,勇者,転生者,捕食,自然治癒【体】,自然治癒【魔】,生物感知・極,魔力感知・極,魔導・極,物理耐性・極,魔法耐性・極,陽炎・極,水月・極,疾風・極,慈悲・極,個性・極,達人・極
称号:勇者,美食家
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「アビリティもそんなに増えてくれないし……」
まあ増えなくても十分多いのだが。
それもそのはず、この『転生者』とか言うアビリティ、かなりのチート級アビリティなのである。
本来アビリティの獲得、強化はレベルが上がった時に稀になるらしいが、その強化の段階をこのアビリティがすっ飛ばしてくれるおかげでこんなことになっている。
正直言って、強すぎるのはあまり好きじゃない。
友達とのゲームで、こっそりレベル上げして抜け駆けするのは好きだったけど。
現に今も、そういう理由でフェイが寝ている間の深夜にコボルトを倒している。
……いや、この世界の場合は別か。
なんせ、死ぬともう生き返られない。
そこが、ゲームとは違う所だ。
強すぎるぐらいが案外丁度いいのかもしれない。
多分、今のフェイのレベルは50ぐらいだろうか。
これからもコボルトを倒し続けてもレベルが上がりづらいし、今日はグリフィン大洞窟に向かうことにしよう。
正直、僕のステータスならまず負けない。
フェイが苦戦しないように、しっかりとサポートしなくては……
……って、サポート役に回れるのか!?
この世界に来てやっと、サポートができるのか!
何ヶ月待ち望んだであろうこの展開、ようやくサブキャラ人生の1歩を踏み出せたような気がする。
そうと決まれば今日はもう帰ろう。
僕自身に万が一の事があっても困るし、しっかりと睡眠を取らなくては。
僕たちはあのホテルに泊まることになってから、本格的なレベル上げを開始した。
と言っても、1日にコボルトを数十匹倒すというだけ。
しかし、そんなのでも実際には効果はあり、レベル上げを開始してからものの1週間で約40レベルも上げられた。
まあ、僕は深夜にも1人で倒しに行っていたのだが。
それよりも、このホテルに1週間も滞在してしまっているという事実の方が強い。
未だに飽きというものが来ない。
いつまで経ってもずっと心地よい。
こんな調子では、いざ城に戻ったら窮屈感を感じてしまう。
あまりこの生活に慣れてしまわないように、今後は自分に対する抑制をかける必要があるな……
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──同日の朝
「お兄様、食事が終わりましたら今日もコボルトを……」
「その件なんだけど、フェイ、今レベルは?」
「ええと……52ですね」
予想は大方当たってたらしい。
「それぐらいのレベルなら、グリフィン大洞窟に行ってみないか?これ以上コボルトを倒していてもレベルが上がりづらいし。僕も、最大限フェイのサポートをするよ」
「グリフィン大洞窟ですか……そうですね。お兄様の助けがあれば、行けそうな気がします!」
「そうと決まれば、早速行こうか」
よしよし望み通りの展開。
自分の好きな立ち回りをしながら、より効率よくレベルを上げられるなんて素晴らしいじゃないか。
ただ1つ不安だったのは、グリフィン大洞窟と聞いて、フェイがあの事件を思い返してしまうのではないかということだったが、そんな心配はなさそうで安心した。
僕自身、完全に後悔の念が晴れたという訳ではないし、今でも思い返すと、どうにかできたんじゃないのかと考えてしまう。
しかし、どうにかできたのだとしても、どうにもならなかったことは事実なのだから。
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──グリフィン大洞窟入口にて
洞窟の入口は、まさしくダンジョンというような見た目であり、小さな入口の左端と右端に、鷲獅子の石像が狛犬のように配置されていた。
話題には聞いていて、何となく知っていたが、噂通りの面白い外見をしている。
入口には緑色の魔法陣が設置されていて、どうやらこれが冒険者ランクを判別するらしい。
「それじゃあ、行きましょうか」
フェイが先陣を切って、洞窟内の階段を下り始める。
その徒歩ペースに合わせるようにして、僕も後ろから付いて行く。
そういえば、グリフィン大洞窟はどんな魔物が出るのか聞いていなかった。
フェイは知っているのだろうか。
そう思い、フェイに聞こうとした瞬間
「「そういえばここはどんなモンスターが……」」
首をやや横に向け、視線だけをこちらに向けたフェイと、同じ言葉が同じタイミングで被さった。
「「え?」」
2度も重なると、もはやそこには触れようとは思わず、
「フェイ……もしかしてここの詳細知らない?」
「お兄様が行こうと仰られたので……てっきりお兄様は知っているのだと……」
状況を理解するのに数秒の間を要したが、どうやら、両者とも、この洞窟の事をほとんど知らずに入ってきてしまっていたらしい。
「ええと……一旦戻ろうか?」
「そうですね……」
洞窟に入ってからしばらく階段を下ってきてしまっていたため、かなり上がるのが辛い。
しかし、それも調べ不足の自分たちのせいなので、渋々方向転換をする。
道が狭いため、方向転換の際に、反射的に壁に触れようとしてしまったが、僕は知っている。
こういう大きなダンジョンこそトラップというのは付き物なのだ。
そのことはフェイにも伝えておかなければ。
「フェイ──」
そうして、後ろを振り向いたと同時に、
──カチャ
「どうされました?」
謎のスイッチのような音。
壁に手を触れているフェイ。
これは……あれだな。
フラグ回収……ってやつか。
フェイはそのスイッチのような音に気がついたらしいが、多分もう遅い。
「フェイ……何があっても気を緩めちゃダメだよ……」
「え?……それは、どう言う──」
フェイに最低限の警告をした瞬間、自分たちのいる階段部分が全て壁に収納され、見事に僕たちは落下し始めた。
(普通こんなにも落ちるもんかねぇ……)
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フェイ・ラナタイト
レベル52
役職:アークフェンサー
体力:506
魔力:299
攻撃力:329
防御力:205
魔攻力:193
魔防力:236
素早さ:400
知力:382
アビリティ:王家,物理耐性・中,魔法耐性・中,自然治癒【体】,疾風・上,慈悲・上,達人・中,殺人・下
称号:殺人者
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