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第14話 『転生目標』

 ……ここでまず1つ。

 私は今、人生の中で最も幸せです。

 何にも追われることなく、ただただ自由に過ごせるこの時を、この今を、無限に過ごしたい。

 私の願いはただこれだけです。


──数時間前


「──以上で案内を終了させていただきます。何かわからないこと等ございましたら、近場の従業員に声をかけていただければ大丈夫ですので」


 主にされた案内は、部屋の場所と各階層には何があるかという説明、それとホテルでしてはいけないこと諸々のみ。

 説明はおよそ10分弱で終わった。

 決まりを破らない限りは何でも自由にしてくれていいという。


 それを踏まえた上で僕たちは、まず最初に階層の行き来をできるようにしようと思った。

 僕自身は魔力感知があるので、魔力の調整はそこまで難しくなかったが、フェイはかなり苦戦していた様子だった。


 ある程度調整が利くようになった頃には、時計は既に19時を回っていた。腹ごしらえということで、僕たちは2階にある食堂に向かった。


 食事は各自で自由に好きな品を選んで食べて良いという、いわゆるバイキング形式だった。

 フェイは彩りや栄養素などをしっかりと意識して選んでいたようだが、そんなことをしていてはバイキングなど楽しむことはできない。

 ただ目の前に広がる好きな品目を好きな量だけ食べるというのが僕の掟である。

 それに、長い間一人暮らしをしていた時も、自分の好みしか食べてなかったから、苦手な物をいざ口にした時どんなことが起きてしまうかわからない。


 そうして、好物たちを皿に乗せて運び、いざ食事を開始した時に、その事件は起きた。

 ……美味しすぎる。

 料理店や宿泊施設の食事が美味しいのは当たり前のことだ。

 しかし、この店の物は違った。

 2つの意味で別世界の味だと言えるだろう。

 フェイもその美味しさには流石に驚喜し、ペースを早めて食べ進めている。

 僕はこの料理をいつまで食べていて良いのだろうか?

 ギルドはまだ僕たちの滞在期間を決めていない。

 いや、一生決めなくていい。

 前世も含めて、この瞬間が1番幸せなのだから。


《称号『美食家』を獲得しました》

《アビリティ『捕食』を獲得しました》


 ここに来て新しい称号?

 『美食家』……なぜ獲得できたのかはものすごくわかりやすい。

 というよりも、『美食家』の称号を得て『捕食』のアビリティって……色々おかしいだろ。

 いや、今はそんなことよりも今はこの目の前に広がる幸福を堪能しなければ。


* * * * * * * * * * * *


──ホテルの自室にて


「お兄様……あんなにたくさん食べていればそれは調子も悪くなりますよ……」


 食堂にいる時は食べることに夢中になってしまい気づかなかったが……そういえば僕は少食なのだった。

 今にもリバースしそうなギリギリでトイレにこもっている。


「悪い……大丈夫だよ……フェイ……」


「今後は食べる量くらいしっかり考えてくださいね?」


 このフェイの説教ももはや聞き慣れてしまった。

 よく考えれば、僕がこの世界に来てからまだ2週間ほどしか経っていない。

 それなのに、どうしてこの世界にこんなにも馴染めているのだろうか。

 もっと考えれば、僕が元いた世界では僕は死んでしまっているのだった。

 直哉(なおや)響介(きょうすけ)は今頃どうしているのか……


 そんな感じのことばかり考えていると、1つ忘れていたことを思い出した。

 僕の固有魔法(ユニークマジック)のことだ。

 先程までよりかは体の調子は良くなっていたので、トイレを出てフェイに聞く。


「フェイ、自分の固有魔法(ユニークマジック)はどうやって確認するんだい?」


固有魔法(ユニークマジック)の確認でしたら、『鑑定・極』のアビリティがある者でないと見れませんよ? 私たちは幼い頃に鑑定してもらったはずですが……」


 そんな記憶はないはずだが……

 ……確かに覚えていない。


「あ!そうでした。お兄様は鑑定の当日に体調を崩されていたのでした。それからそのまま、王国の者が皆忘れてしまって、お兄様は鑑定されていないままだったのですね」


 とうとうルーシュ・ラナタイトの記憶に欠陥が出始めたのかと思い焦ったが、どうやらそういうことではないらしい。


「なら、鑑定してもらいたいんだけど……そのアビリティを持ってる人って……」


「そうたくさんはいませんね……『鑑定』のアビリティは役職(ジョブ)鑑定士(アプレイザー)として産まれてきた人のみしか持ち得ませんから」


「……それって逆に言えば、鑑定士(アプレイザー)になればそのアビリティは得られるってことだよね」


「……? ええ、そうだと思いますが……」


「なら簡単だよ……僕がその鑑定士(アプレイザー)になればいい」


 フェイにこの事を隠す必要なんてないことがわかったし、怪しまれたところで、僕が『転生者』だなんて結論が出るはずがない。


「ああ、そういえばお兄様は役職(ジョブ)を変更できるのでしたね……ですが、それではお兄様は戦えなくなってしまうのでは……?」


「ああ、そこに関しては大丈夫。変更する前になっていた役職(ジョブ)にならいつでも変更できるみたいだから。問題なのは、変更する為にはレベルを100にする必要があるってことなんだよ。だから……」


 ようやく当初の目的に帰ってこれた。


「明日から、レベル上げを本格的に進めよう。そして、あの魔人にいつでも対抗できるようにしないと」


「そういえば、私たちは魔人に襲われていたのでしたね。こんな良い場所があるのですから、魔物も魔人もゆっくりすれば良いのに」


 フェイが笑いながら冗談気味に言う。


「このホテルにもいつまで滞在してていいのかわからないし、この国にいられる限りは頑張らないと」


 僕たちが急にラナタイトから姿を消して、王様やザックスは僕たちのことを心配しているのだろうか。

 こう思うと、僕は何かと人に心配をかけてしまっている気がする。

 まあ、どちらの事も、僕とてどうしようもなかったことなのだが。


「お兄様!お兄様! 窓の外を見てみてください!」


 フェイが突然慌てた様子で言う。

 近くに窓はなかったので、ベランダから外に出て確認しようとする。

 それを見たフェイも、僕に続いてベランダに向かう。

 そこにあったのは、


「とても綺麗ですね~」


 どこまでも広がる晴天の中に、1人輝いている夕日。

 その夕日は1人ながらにして、その晴天を全て包み込むほどの強い光を放っている。


 今までで1番綺麗な夕日を見た気がする。

 どうやらこのホテルは、人の1番を取らないと気が済まないらしい。


 僕はこの日、この夕焼けに3つの事を請願した。

 1つ目は、この幸せな日々が長く続くようにと。

 2つ目は、この人生がまだ終わらないようにと。

 3つ目は……


 僕が早くサブキャラになれるようにと。

==========

ルーシュ・ラナタイト

レベル33

役職(ジョブ)魔法騎士(ルーンナイト)

 体力:620

 魔力:480

攻撃力:218

防御力:198

魔攻力:302

魔防力:257

素早さ:189

 知力:203

アビリティ:王家,勇者,転生者,捕食,生物感知・極,魔力感知・極,魔導・極,物理耐性・極,魔法耐性・極,陽炎・極,水月・極,疾風・極,慈悲・極,達人・極

 称号:勇者,美食家

==========


固有魔法:不明

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