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第12話 『罪の罰と罰の罪』

「……お兄……様」


「フェイ!」


 どうしてフェイがレイノルズに狙われているんだ?

 僕は盗聴器を警戒してフェイを遠ざけた。

 それでいて会話もアルスの家の中で行ったはず。

 それなのにどうしてレイノルズは……?


「レイノルズ! フェイを離せ!」


「離せと言われて離すバカはいない……」


 後ろからアルスに肩を叩かれながら言われた。


「おばさん。その人はあんたとは関係ないはずだ。どうして狙う?」


「……ふふふ」


 レイノルズは不敵に笑い、口を開く。


「あんたたちは、いつから私がリオを遊び相手にしていたことに気づいていたんだい?」


「さあいつからだろうね。それよりも、俺たちがあんたを警戒してるってことに、いつから気づいてた?」


「……ふふ、そんなことはどうでもいいさ」


 不毛な会話が続き、会話の埒が明かない。


「……どうしたらフェイを離してくれるんだ?」


「そうだねぇ……」


 少し考えた後に、レイノルズは言った。


「一生返さないかもねぇ!」


 そしてまたレイノルズは笑った。

 ……狂ってる。


「お兄様……大丈夫です……」


 フェイはああ言っているが、無論大丈夫じゃない。


「あんたたちはとんだ勘違いをしてるみたいだけど……私は別に、リオだろうと、そうでなかろうと、誰でもいいのさ……私の遊びに付き合ってくれる人間なら」


「……こんなところで、そんなことをしてていいのか? 人に見られでもしたら大変だろ」


「遊び相手が増えてくれるならいいことじゃないの」


 アルスが落ち着きながら言うものの、相手は狂った発言しかしない。

 どんな生き方をしていればこんな人間になれるのだろう。


「この子……リオよりも体力があるし……何より素直だ……やっぱりリオなんてどうでもいいわ。今度からあなたにする……ふふふ…楽しみだねぇ?」


 このままだとフェイは……

 何か方法は……


「なあ……あんた、さっき誰でもいいって言ったよな……?」


「まさかあなた、自分が代わりになろうなんて思ってないでしょうね? 嫌よ、どうせこの子を助けた後に抵抗するんでしょ? そんなのめんどくさいもの」


 まるで相手にしてくれない。

 ……こうなったら、フェイの危険を顧みずに攻撃するしか……

 その瞬間──


「そうか……なら……!」


 アルスが剣を構え、レイノルズに攻撃を仕掛けた。

 同時にレイノルズはフェイの剣を使い、防御体制をとる。


 そして、2つの剣が衝突したのと同時に、


「ルーシュ!今だ!」


 それを聞いて、フェイがレイノルズの視線の先から外れているのを確認する。

 走っていくのは間に合わない。

 威力を最小限に抑えた風魔法なら、丁度いい具合にフェイを飛ばせるはず。

 アルスの作った隙を無駄にするな!


「ウィズアエラス!」


 そして放った風魔法は強めの突風程度の風が吹いた。フェイは完全にレイノルズの手から離れ、アルスとレイノルズもフェイとは反対側によろける。


「無事か!フェイ!」


 僕がアルスとレイノルズから目を離したその時、


「──ぐはッ!」


 その方向から鈍い音がした。


 僕がそちらに目を向ける前に、フェイは持ち前のスピードで動き出し、僕の腰の剣を取って、


「──はあッ!」


 ──レイノルズの首を切断した。


 そこには同時に、胸部に剣が刺さっているアルスの姿があった。


 やっと、自分の犯したミスに気づく。

 風魔法の威力は良好のように見えたが、それでもまだ強すぎた。

 アルスが風魔法の影響を受けてしまったせいで、アルスの体勢が崩れた。

 そしてアルスは……


「アルス様!大丈夫ですか!」


「……」


 フェイの呼びかけにアルスは答えない。

 ……即死なのだろう。


「……ラピア……」


 最早無駄だとわかっていても、どうか自分の罪が消えてくれないかと足掻いてしまう。


 僕は最初から間違えていたんだ。

 あの瞬間、風魔法の調整を誤らなければ。

 あの時、フェイをレイノルズの方に向かわせていなければ。

 ……僕が…………僕が………………


 ──この世界に転生していなければ……


「……アルス様は亡くなられたようです……」


「……そう……か……」


「……お兄様が悔やむことはありません。元は…私のわがままから始まったのですから……それに私は……」


 フェイがレイノルズの死体に目を向ける。


「……言わなくていい」


 もう……今はもう……ただ現状を理解するので精一杯なんだから。


「……すみませんお兄様。お兄様の大切な剣を穢してしまい……」


「それは悪人を倒した立派な剣だよ……何も悪くない……」


「お兄様はそう言ってくれますけど……お兄様、私のステータスを見てみてください。」


 言われるがままにフェイのステータスを開く。


「──ッ!」


==========

フェイ・ラナタイト

レベル30

役職(ジョブ):アークフェンサー

 体力:384

 魔力:195

攻撃力:181

防御力:146

魔攻力:103

魔防力:117

素早さ:206

 知力:249

アビリティ:王家,物理耐性・下,疾風・上,慈悲・上,達人・下,殺人・下

 称号:殺人者

==========


 僕の罪は、人を死なせてしまったことだけではなかった。

 これからも共に冒険していくはずの大切なパーティメンバーに……

 僕を信じて付いて来てくれた大切な妹に……

 僕は……人を殺させた……


「……本当に……ごめん……」


 この世界はどれだけ残酷なのだろう。

 こんな称号、こんなアビリティ、一体誰が望むというのか。

 ……いや、望むやつはいるんだろうな。

 この世に狂った人間なんていくらでもいる。


「いえ、大丈夫です。幸い私は王家の人間、他人にステータスを見られることはありません。王様やザックス兄様は話せばわかってくれることでしょう。ですが……本来、この称号を持つ人間はギルドから指名手配されてしまいます。ギルドにも、話をわかってもらう必要がありますね」


 フェイの言葉には、一切の動揺が感じられなかった。

 フェイは本当に強い。

 本来ならこういう人間が勇者になるべきなのだ。

 自分の罪の重さに耐えられず、詫びるしかできない人間を、一体誰が勇者と呼ぶというのか。


 頭では既に理解している。

 フェイはきっともう許してくれている。

 というより、最初から僕を恨んでいたり憎んでいたりなどはしていない。

 詫びることを止め、二度と同じ過ちを犯さないように、また前を向くべきなのだ。


 でも……それでも……


「……ごめん……本当に……ごめん……」


 いくら謝っても謝りきれない。

 今、僕はどんな感情で涙を流しているのだろう。

 人を死なせてしまった喪失感だろうか。

 妹を殺人者にしてしまった罪悪感だろうか。

 もしかしたら、悪人を倒したことによる嬉し涙なのかもしれない。

 どんな感情にしろ、やり場のないこの感情は、ただ涙となって流れるだけなのに……


「お兄様……大丈夫です。お兄様が私のことを悔やんでくれているのはとても伝わります。私は……それだけで大丈夫です」


 フェイは僕を両手で抱きしめ、いつまでも慰めてくれる。

 こんな情けない姿を見てもなお、僕を見捨ててくれない。


 ……前を向かなければならないのだ。

 この優しさに顔向けできるように、僕は……

==========

アルス・フォーリス

レベル27

役職(ジョブ)騎士(ナイト)

 体力:519

 魔力:141

攻撃力:244

防御力:196

魔攻力:127

魔防力:131

素早さ:157

 知力:199

アビリティ:物理耐性・上,魔法耐性・下,陽炎・下

 称号:なし

==========


固有魔法(ユニークマジック):不明

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