表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/49

第7話 『魔人』

「お兄様……何か来ます!」


 そのフェイの言葉を聞き、すぐさま辺りを警戒するも、付近には村民はおろか誰もいない。


 ……はずだった。


「そんなに警戒されると困りますねぇ」


 僕の背後から声が聞こえた。


「──ッ!」


 後ろの振り向き確認もせずに、とっさに腰の剣を振るう。

 しかし、その瞬間に後ろの何かは消え、空を切った剣だけが取り残された。


「初対面の相手に剣を振るうなど、失礼ではありませんか?……あ、いえ、私も言えた義理ではありませんねぇ。初対面の相手を魔力の結界の中に閉じ込めていますし……大変失礼致しました」


 声のする方に目を向けると、そこには紳士のような風貌をした人間らしき姿があった。

 体格的に恐らく人間の形だが、肌と思われる部分は背景と同化していて、明確な姿がわからない。

 いわゆる透明人間というやつだ。


「何者なのですか……!」


「お嬢さん、そういうことはまず自分から言う……こちら常識ですよ?」


「私はフェイ・ラナタイト、ラナタイト王国の第1王女です!」


「フフッ、まあ、知ってるんですけどね」


 調子を狂わされる相手の対応にフェイ共々困惑する。


「もちろん、そちらの勇者様のことも存じておりますので、仰られる必要はございませんよ?」


「……なら、そろそろ自分のことを話したらどうだ?」


 その透明人間は少し悩んだ様子で言う。


「さて……どうしましょうか……あの方から、勇者には多く語るなと命じられていましてね?かといって、一方的にこちらが情報を有しているというのも、私の意に反しているもので、一体どこまで話して良いものか……まあ、ステータスを見られてしまえば元も子もない訳ですが」


 ヒントだけ出して、自分からは言わないこの感じ、恐らくステータスを見て欲しいのだろう。

 ひねくれた性格をしているせいで、逆に見る気になれない。

 が、ひねくれていないフェイがステータスを見ない訳もなく、


「……お兄様、これは……!」


 空気を読んで見ることにする。

 しかし、いざそのステータスを見ると、


==========

名持ち(オウンネーム)】ディアス=シャーロット

レベル不明

種族:セルレオン

 体力:不明

 魔力:不明

攻撃力:不明

防御力:不明

魔攻力:不明

魔防力:不明

素早さ:不明

 知力:不明

アビリティ:不明

称号:不明

==========


 紛れもない強敵なのは先ほどからの振る舞いからわかっていた。

 しかし、謎な所が1つだけ。

 セルレオン族とは、僕が元いた世界でいうカメレオンのような見た目をしたモンスター。

 なのに、今ここにいるこいつは、背景に擬態しているという要素以外、全て人間である。

 それらが指し示している事実は1つだった。


「……魔人……!」


 僕が言うよりも先に、フェイが口に出していた。


「その通りです! 私は魔王様より認められしセルレオン族の魔人! ディアス=シャーロット!……でございます」


 間違いなく敵う相手じゃない。

 レベル差がどんなにあっても大半は表示されるはずの体力と魔力さえ不明。

 恐らく、今こいつが僕たちと戦う意志を持っていれば、僕たちなんて瞬殺だろう。


「どうして戦わない?」


「フフッ、良い質問ですねぇ。その理由は至って単純。魔王様から貴方たちを殺してよいと命じられてないのです。故に殺さないし、戦わない、ただそれだけのこと」


「ならば、私たちをここに幽閉した理由は!」


「またもや良い質問です。その理由もまた単純。魔王様より命じられただけでございます」


 どうやらこの世界の魔王は僕たちの存在を知覚し、何かを企んでいるようだ。

 しかし、なぜ僕たちが早速狙われているのか…

 僕が勇者として冒険に出てからまだ日はそんなに経っていないし、魔王に注目される程の目立った行動はした覚えがない。


「どうして僕たちを狙う?」


「うむ……それは良くない質問ですねぇ……私とでわからないことは多くあります」


「わからない?」


「ええ、わかりませんとも。全ては魔王様の意によって動いています。魔王様が語ったことは存じ、魔王様が語らなかったことは存じない……ただそれだけのこと」


 どうやらこいつは、本当にその魔王とかいう奴の命令に従っているだけらしい。

 少なくとも、僕たちが勇者だから狙えとか、僕が転生者だから狙えとか、そんな感じの理由は聞かされていないらしい。


「ザックス兄様は今どこに!」


「ザックス? 良くない……いや、悪い質問です。そのような者、私は存じ上げませんし、魔王様からも聞いておりません」


 ザックスを知らない?

 ザックスが行方不明のこととは別件なのか?


「僕たちはいつまでここに閉じ込められなきゃ行けないんだ?」


「それもまた良くない質問です。魔王様が良いというまで、私は貴方たちを解放するわけにはいかないのです。つまり、私にもわかりません」


「ならば……無理やり出させてもらいます!」


 フェイが勢いよくディアスに斬り掛かる。

 しかし、その攻撃は見事に躱される。

 というより、そもそも攻撃する意味がない。


「フェイ、無駄だ。そいつを生物感知で認識できない。きっと、そこにいるディアスは、どこか別の場所にいる本体が見せている幻覚だよ」


「察しが良いではありませんか。気づかれてしまうのは予想外でしたが、気づかれても特に問題はありません。本体の私を殺せないのなら、結局貴方たちが出ることは不可能ですからねぇ」


「……お兄様、どうしますか」


「どうするもこうするもない。僕たちはここから出ることはできないんだ。抵抗するだけ無駄だよ」


「……ですが!……いや、その通りですね……」


 魔王は一体、僕たちを狙って何をする気なのだろう。

 単純に、勇者を弱いうちに始末しておきたいという話なのだろうか。

 ゲームならこういうのは普通雑魚ボスを送り込むってのがセオリーだというのに。

 まったく話のわからない魔王だ。

 しかし、この状況がまずいのは事実。魔王の幹部らしきこのディアスという魔人、こいつにステータスが劣っている時点で、魔王に勝てるはずもない。


「……こういう時こそ、ザックス兄様がいれば……」


 フェイがボソッと言った独り言を聞き、疑問が生まれた。


「ザックス兄様なら、この状況を打破できるのかい?」


「お兄様はご存知ないのですか? ザックス兄様の固有魔法(ユニークマジック)を」


 そういえばそんな魔法があった。

 確か……生まれつき持ち合わせている、自分自身のオリジナルの魔法……


「いや、聞いたことがない……」


「そうだったんですか? ザックス兄様の固有魔法(ユニークマジック)はとても凄いんですよ!」


「へぇ、どんな魔法?」


「なんと! 相手の魔法を──」


 フェイが説明しようとした瞬間、村に作られていた結界が歪んだ。

 そして──


「カタストロフィ!」


 その破られた結界の外に、行方不明だったザックスの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ