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黒衣の陰謀①

 ルルルンに想いを吐き出し、少しだけ落ち着いたカオリは、冷静にミズノカオリから聖帝へと気持を切り替える。


「取り乱してすいませんでした」

「いや、無理して今日話さなくてもいいんだぞ?」

「……師匠には、知っておいて欲しい事があるので。それに、次会うのがいつなのか分かりませんし」


 聖帝は常にどこかでなにかしら外交をしてるから、面会が中々できないと、カインから聞いた事を思い出す。


「わかった」

「で、師匠」

「なんだ?」

「魔女を匿っているっていうのは本当ですか?」


 直球の話がきた。


「え?あ、ライネスから聞いてたんだっけ?」

「はい、詳しくは聞いていませんが、信頼できる人間の元に、北の魔女がいると」

「うん、いるね」

「なるほど……」


 気まずい空気が流れる。


「師匠は聖帝騎士団の事も、ライネスの事も理解した上で、魔女と交渉して、懐柔した」

「懐柔って言い方は心外だよ」

「師匠、もしかして、他の魔女とも話し合って―――とか考えてます?」

「それは……」


 カオリは深くため息をつくと、泣きじゃくっていた雰囲気は何処へ行ったのか、ピリッとした表情で語りだす。


「甘いと思います」

「あ、うん」

「北の魔女に関してはもはや言っても無駄でしょうから、あえて何も言いません」

「助かります」

「さっきの話、聞いてましたよね」

「ああ」

「魔女は変わることなく、この世界の敵です」


 強い言葉だった。


「『全ての魔女の討伐』聖帝の権限を持って、師匠に、今すぐに魔女全てを討伐してきてくださいって命令したいくらいには、それが私の生きている目的です」

「それも理解してるつもりだ」

「だったらなんで勝手に魔女と話したり、殺さずに一緒に暮らすなんて選択肢が取れるんですか?」


 カオリはなにも冗談で言っていない。一言一言が本気の言葉だ。


「まぁ……ライネスにも、同じような事言われたよ」

「北の魔女がやってきた事は、許される事じゃない。人心を操り、魔法で心を破壊する、10年の間、どれだけの被害が出たのか、師匠は知らないでしょ?魔女はこの世界の理を壊している存在です」

「そうかもしれないけど、理由があった」

「同情に足る理由は贖罪になんかなりませんよ?」

「それでも北の魔女……サクラは人間だ、罰を与えて済まさず、向き合って根本から解決していかなきゃいけない問題だろ!!」

「師匠がやる事じゃないって言ってるんです」

「ぐっ……」


 図星、その通りだ、ルルルンのやっている事は、この世界の理を無視した自己満足。同じマギアを救いたいという完全なるわがままである。


「サクラにはもう、魅了魔法を使わせない」

「使わない補償は?」

「俺が近くで監視する」

「今できていないのに?」

「そういう上げ足取るのよくないよ!」

「師匠は感情論でなんでもかんでも決めるのよくないです!」

「ぐぬぬぬ」


 聖帝として上に立つ人間の余裕なのか、カオリはルルルンの隙だらけの主張を軽く否定する。


「魔女は絶対に許さない。この考えは変わりません」

「さすがライネスを教育した張本人だな」

「ライネスは甘いです、多分師匠のせいですが、最近感情をコントロールできていない、だから魔女の件をこんなにもあっさり受け入れてしまう」

「ライネスはなんも悪くないだろ!」

「師匠がライネスにあれこれ吹き込んでいるんでしょ!?」


 カオリの意見が感情的になってきて、ルルルンの聞く態度も次第にイライラが勝ってくる。


「あー、もー!とにかく、北の魔女に関してはお前は関わってくるな!!」

「なんですかそれ、横暴にもほどがありません?」

「お前は、前の世界みたいな差別をまたやるのか?」

「差別じゃない、これは平和のための手段です!!!何もわかってない師匠が介入すべき話じゃありません!!」


 平行線の言い合いが続く。


「じゃあ、折り合いつけよう」

「なんです?」

「カオリの言う事なんでも聞くから、見逃して」

「折り合い雑すぎません?」

「俺は魔女の事をそこまで知らない、知らないからこそ、お前たちとは違う道を考える事ができる、可能性だって、カオリ!平和への道は一つじゃないかもしれない!その可能性を無視する事はできないんだって!!」

「だから折り合いをつけろと?」

「そうだよ」


 カオリは少し考えて答えを出した。


「北の魔女が被害を出したら、師匠は私の直轄になってもらいます」

「直轄って?」

「率直にいいましょうか?下僕です、私の命令にはyesとしか答えることのできないマシーンと化してもらいます」

「ひくわ」

「それを受けるなら、北の魔女の件、師匠にお任せします」

「被害の程度は?」

「内緒です、こっちで判断します」

「え?ひどくないそれ?」

「全然ひどくないですけど」


 カオリは真面目な顔でルルルンの文句を受け流す。


「師匠が私の直轄になれば、この世界の平和は約束されたようなものですからね」

「遠まわしに、なんでそれをしないんだ?って聞こえる」

「強制したら師匠嫌がるでしょ?」

「うん」

「だから契約、私が魔女の件で譲歩するのはこれが最初で最後です」

「わかった」


 契約、その言葉の重みをルルルンは理解した上で頷いた。


「魔女の話で、もう一つだけ師匠に知っておいて欲しい事があります」

「なんだ?」


 カオリは改めて、先程の感情的な姿勢を正して語り出す。


「10年前まで、この世界には魔法という物自体が存在していなかったんです、いたかもしれないけど、それまでは誰も知らない存在だった……事は知ってますよね?」

「魔女が現れて初めて魔法の存在が公になったんだよな……」

「はい、でも私たちは例外です、使えるのが当たり前の世界から転生してきましたから」

「転生って時点でもうあれだけど」


 余計な茶々を入れながらも真剣な話が続く。


「ここで疑問になってくる点……だったら、魔法を使える魔女は転生者なのか?」

「それは違う、確認した」


 ルルルンがきっぱりと否定する、北の魔女こと、サクライサクラから直接聞いているからだ。


「だったら、何故、4人の魔女が突然同時に現れたのか?」

「それは、なんかタイミングが奇跡的に合って」


 安易な想像で話すルルルンを意に介することなく、言葉が続く。


()()()()()()()()()()()()()()()としたら?」


 カオリの口から思ってもみない言葉が飛び出た。


「いや、待て……それって、想像だろ?」

「はい、想像です、確かな証拠もありません」

「だったら」

「ですが、そうとしか思えない事が多すぎるんです」

「例えば?」

「世界中で突然魔女の噂が広まったって、さっき話したと思うんですが」

「あぁ」

「この噂の出どころ……一切不明なんです」

「不明?」

「どこで誰が最初に4人の魔女を発見し、被害にあったのか、話を遡って調査しましたが、誰も行き着く結論は【黒衣の男から聞いた】なんです」

「黒衣?」


 つい最近同じような事を聞いた記憶がある……ルルルンはキャリバーンとの会話を思い出していた。

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