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魔女の行方

 時は少しだけ戻る。

 ライネスが駆け出し、ルルルンとキャリバーンの決着がつく少し前……


「まったく!まったく!まったく!」


 北の魔女サクライサクラが愚痴っていた。


「なんなのよ!あいつ!!!!」


 ぶつくさ言いながら、サクラは自分が転移魔法で飛ばされる前、元いた場所に向かって飛行魔法を使い、大慌てで移動していた。


「かっこつけて私だけ逃がすとか!私、北の魔女よ!!!舐めてるでしょ!もー!」


 自分だけ逃がされた事に腹をたてつつも、得体のしれない喋る魔人機、突然出現した見た事のない巨大な魔法陣。その全てがサクラの心をざわつかせる。


「あの魔方陣が出てから私の防御魔法が全部消えた、魔法防御に対してだけを打ち消す、すごく限定的なアンチマジック、どっちが使ったのか分からないけど……」


 サクラの想像を超えるなにかが起こっている、それは間違いない。


「だからって、せっかく現れた私の運命の人を、放っておくわけにはいかないじゃない!!」


 ようやく現れた自分と対等な存在、見た目は女だけど、そんなの関係ない!ヨコイケイスケと自分は絶対に結ばれる!!

 サクライサクラにとって、もはやヨコイケイスケは運命の相手と呼ぶべき相手なのだから。


「だからまっててダーリン」


 転送される前、元居た場所でもある自分の住処にたどりつくと。


「いぃぃぃぃぃぃぃぃやぁああああああああああああああ!!!!」


 そこには崩壊した残骸しか残されていなかった……。

 崩れた建物、悠々自適に暮らしたマイホームは見る影もなかった。

 無慈悲に無残な姿となった我が家の姿を見て、サクラは泣き崩れるが、ぐっと顔を上げ気持ちを切り替える。


「ちっがう!!!!しょぼくれてる場合じゃないしぃ、家はすぐに修理できるしぃ!」


 運命の人のため、サクラは顔を上げる。

 幸いルルルン達が派手に戦ってくれているおかげで、場所はある程度把握できているが、サクラの足が竦む。


「(これ……私が行ったところで何かできる?)」


 魔女と呼ばれてはいるが、サクラは戦闘に特化した魔女ではない、搦め手で相手を掌握し戦闘ではない形で敵を退け、聖帝騎士団の捜索を避け、無駄な争いは極力しない方向で今まで気楽に生きてきた。

 普通の人間よりは戦闘能力はある、聖帝騎士団とも搦め手無しで勝つ自信もある、魔法の力が持つアドバンテージは誰よりも理解している、それでも。


 それでも、戦闘が行われている方から感じる魔力は桁違いである。


「ダーリンの力になりたい、でも」


 でも、自分が何かの助けになるのか?逆に足手まといになるのでは?

 気持ちにブレーキがかかると、ルルルンの元へ向かう脚がピタリと止まる。


「そんなに必死になる必要ある?」


 運命の男と感じたのは事実、だけど、命を懸けて行動する必要がある?


「男なんて、所詮魔法で自由にできる、ちょっと特別感を感じただけで、私馬鹿なの?」


 頭を抱えてサクラは自問自答する、ルルルンの言葉を思い出しながら、整った髪の毛をぐしゃぐしゃと搔き乱す。


『俺と一緒に来い!!』


 そんな事、少しも考えた事もなかった。誰かに命令する事はあっても、そんな風に命令される事なんてなかった。


「初めてだったんだから……」


 胸が苦しい、サクラは感じたことの無い感情に自身を制御できていなかった、好色な理由だけではない、魂レベルの運命をルルルンに感じてしまったのだから、彼女はその想いを受け入れるか否か、瀬戸際の感情で揺れ動いていた。


 躊躇していると、遠くで聞こえていた戦闘の音が一瞬大きくなり、静かになる。


「音が消えた?」


 戦いが終わったのか、気が付くとサクラは激しい衝撃音のあった場所へ向かっていた。


「ダーリン……」


 戦闘が行われていたであろう場所にたどり着くと、サクラは周辺にルルルンがいないかを必死に探す。


「ダーリン……そんな……ダーリン……」


 激しい戦闘は、森だった場所を見るも無残な荒れ地へと変えていた、何か、どこかに痕跡は無いかと、サクラが血眼になって魔法少女の姿を探すと


「ダーリン!!!」


 抉れた地面の一角の岩場に、女の腕らしきものを発見する。


「ダーリ……ン?」


 しかし、そこには「腕」しか存在しなかった。


「そんな……」


 ルルルンの腕を拾い上げ、サクラはジワリと目に涙を浮かべる。


 嫌な予感は的中した。

 あの魔人機はルルルンと互角、それ以上の存在だった。

 あの瞬間ルルルンはそれを察して自分を逃がしたのだ。


「あれだけかっこよく私だけ逃がして……それで、自分がやられてたら意味ないじゃん、バカ……」


 腕を抱きしめると、サクラはその腕から感じる魔力に気が付く。


「魔力?これ、回復魔法を使ってるの?」


 切り離された身体から、腕に魔力が供給されている……それの意味する事は一つであった。


「ダーリンはまだ生きてる!?」


 近くにいるはずと辺りを広域感知魔法で探す、しかし、探知魔法はルルルンより先に、別の魔力を探知する。


「早い、なにこれ?」


 凄まじい速さで接近する大きな魔力は真っすぐにこちらに向かってくる。


「こっちにくる??」


 得体のしれない強い力は、稲妻の如く一瞬でサクラの横を駆け抜ける。


「なに!?」


 稲妻の勢いで吹き飛ばされたサクラは、尻もちをつくも、すぐに体勢を立て直す。


「なんなのマジで!!」


 すぐに、その魔力の後を追う。得体の知れない脅威が愛しい人に向かっている、しかもルルルンは片腕を失って絶対絶命のはず。


 サクラは使命にも似た衝動に突き動かされる。


「ダーリンに手は出させない!!」


 ルルルンを守るため、サクラは駆け抜けた稲妻追いかけ。


 辿り着いたそこには傷ついたルルルンと、見知らぬ女騎士、そして巨大だったはずの魔人機(壊れかけ)状況を把握する前に、サクラの身体は動いていた。


風の矢(ファダガ)!!!!!!!!」


 空気を切り裂く魔法の矢を放つが、女騎士は反応し、それを回避した。ルルルンを馴れ馴れしく抱えたまま。


「ダーリンを……ダーリンを離せっ!!!!!」


 怒りの形相をしたサクラが大きな誤解を抱えて現れた。

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