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騎士の真相

 ようやく全てを理解したキャリバーンは、先ほどまでの威勢の良さとは打って変わって、しなしなとした声と態度で、申し訳なさそうに話し出した。


「いや、だって……まさか、マスターがルルルンに生まれ変わってるなんて思わないじゃないですか?」


 言い訳ではあるが、その驚きもまぁ無理はない。


「そうだな。お前の気持ちは……よく分かる」

「ルルルンは俺様の宿敵ですよ?ずっと戦ってきたんだから、反射的に敵対しちゃうんですよ、条件反射ってやつでぇ」


 そういう設定にしたのは他でもない自分自身。

 ルルルンは苦笑交じりに頷くしかなかった。


「そもそも、なんで俺がルルルンの姿で転生してるのかも分かってない。前の世界で死んで、気づいたらこの世界にいて……その時にはもう、ルルルンになってたっていうか」

「なるほど……それは、なんというか、変な話ですね」

「意味不明だろ?」

「はい、全く意味が分かりません」

「……お前、信じてないだろ?」

「い、いや!信じてますとも!ええ、もちろん!」

「本当に騎士か、お前は……」


 その態度にライネスも顔をしかめる。

 それでもキャリバーンが完全に納得したとは思えず、ルルルンはしつこいくらいに自分がヨコイケイスケであると説明を続けた。


「というわけで、俺はヨコイケイスケなんだ」

「へい……」


 ようやく納得し始めた様子のキャリバーンに、ルルルンは本題に入る。


「ところで!」


 空気が変わる。


「俺がルルルンになった理由は話した。次はお前の番だ、キャリバーン」

「俺様?」

「お前は、どうしてこの世界に現れて、なぜ魔女を襲っていた?」


 最も重要な謎への問い。創造主として、それは見過ごせない。


「それはですねぇ……気づいたら俺様もこの世界にいて……目を覚ましたら、目の前に誰かがいたんですよ。黒い恰好した男か女か……その誰かが言うんですよ、『お前に命を吹き込んだ』って」

「命を……吹き込んだ?」

「そう。で、そいつが、魔女はこの世界の悪だと。倒して世界を救えって。で、正義感の塊である俺様は、それは許せん!と正義のために立ち上がったわけです!!」


 キャリバーンは誇らしげに胸を張るが、その浅慮な判断にライネスが深いため息をつく。


「おい、そこのデ……女!やめろ……その『何言ってんだこいつ』みたいな目」

「『デカ女』とでも言いたいのか?」

「いやそれは……ちょっと思ったけど……」

「ケイスケ!こいつは無礼にもほどがある!切っていいか?」

「おいおい!?無抵抗の相手を攻撃するなんて、騎士の風上にも置けねぇぞ!マスターそんなデカ女といると、マスターの株が下がりますよ!!」

「貴様!これ以上の愚弄は許さんぞ!!」

「そりゃこっちのセリフだ!!」


 二人が口論を始める中、ルルルンはキャリバーンの言葉の裏に潜む重大な真実に考えを巡らせていた。


 ――命を吹き込んだ者。


 それは、キャリバーンがこの世界に現れた理由を知る鍵。


「キャリバーン。その『命を吹き込んだ』っていう奴……どこにいる?どんな姿だった?」

「えーっと、たしか……あの時……」


 その時だった。


「ふぁlkjふぁおいhがおいhがおjがj;」


 キャリバーンの言葉が急激に乱れ、火花と煙を撒き散らす。


「エクスキャリバーン!?」

「あふぁlがgじょpjg;jぱおじゃhふぃあおgはp………」


 機体がガクンと傾き、そのまま完全に沈黙した。


「キャリバーン……どうした!?おい!!」

「私は、なにもしていないぞ!これは……!」


 混乱する二人に、ライネスが指差した。


「ケイスケ、見ろ!」


 キャリバーンのボディが、みるみるうちに縮んでいく。


 最終的には、手のひらサイズのフィギュアになり、完全に停止した。


「……これは」


 ルルルンはそっとその人形を拾い上げる。

 そこには、もはや魔力の痕跡すら残っていなかった。


「間違いない……俺の会社が作った、キャリバーンのフィギュア……だ」


 全てが謎のまま。答えは、何一つ得られなかった。


「……なんにも、分からずじまいか」

「ケイスケ……」


 悔しげなルルルンに、ライネスは優しい笑みを浮かべる。


「いいではないか。お前が無事で、私はそれだけで嬉しい。あのまま話を続けていたら、私が本気で切り刻んでいたぞ」

「ライネス……」

「お前が生きて、私とこうして会話できている。それで十分じゃないか?」


 言葉に詰まる。


「……ああ、そうだな。ありがたいよ」

「ふふ、そうか?」


 照れるように頭をかくライネスの顔に、ルルルンも笑みを返す。


「キャリバーンを動かした奴のこと、私から聖帝様に聞いてみよう」

「聖帝様?」

「この世界で何かを知っているとしたら、聖帝様だ。魔法絡みならなおさらな」


 その名を聞いた瞬間、ルルルンの中に浮かぶイメージは、博識で壮年の賢者。名前だけは耳にする『聖帝様』どんな人物なのか、少しだけ興味が沸いてくる。


「頼むよ。何か分かったら、教えてくれ」


 これで終わったわけではない。

 これは、始まりなのだ。

 キャリバーンの出現、何者かが意図して魔女を攻撃している。


 おそらくこれは偶然などではない。

 元凶との邂逅は避けられない。そう、ルルルンには確信に近い予感があった。


 だからこそ、今はこの安堵に身を任せていい。ひとまずだが、危機は去ったのだから。


「本当に……生きててよかった」

「ありがとう、ライネス」


 ルルルンがそう言い切った直後。


風の矢(ファダガ)!!!!!!!!」

「!?」


 空気を裂いて飛んできた魔法の矢を、ライネスが反射的にルルルンを抱えたまま回避する。


「誰だ!?」

「ダーリンを……」

「まさか……」


 魔法の飛来方向。そこに立っていたのは――


「ダーリンを離せっ!!!!!」


 北の魔女、サクライサクラだった。

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