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漢のロマン

 放っては置けない事。

 エクスキャリバーンの存在だ。


 彼ときちんと対話しなければならない。なぜこうなったのか、誰が彼をそそのかしたのか、そもそも──『エクスキャリバーンはどうやってこの世界に現れた』のか。


 ライネスにお姫様抱っこされたまま、ルルルンは吹き飛んだエクスキャリバーンの痕跡を探す。ほどなくして、威勢のいい声が目印となり、意外にもあっさりと発見することができた。


 予想通り、分断された胴体の状態でもキャリバーンは停止していなかった。木の枝に引っかかりながら、じたばたと必死に暴れている。


「不覚!!不覚すぎる!!!」

「エクスキャリバーン……」

「こんな隠し玉があるなんてな、油断した!油断しただけだからな!!」


 ルルルンの姿を見つけるなり、分断され虫の息にも関わらず、キャリバーンは負け惜しみを大声で叫ぶ。


「ケイスケ、こいつはなんなんだ?魔人機なのか?何故魔人機が喋っている!」

「私は魔人機などではない!!!!機動騎士!エクスキャリバーンだ!!!!」


 ライネスの問いを即座に訂正し、声高に名乗るキャリバーン。

 壊れかけの状態にも関わらず、その口調には、誇りすら感じさせる力強さがあった。


「こいつはエクスキャリバーン、前の世界で俺が作った機動騎士って設定の魔導器の戦闘ロボットだ」

「ケイスケが作った?」

「そう、だけど、完成はしなかったんだ、その前に魔法が使えなくなったから」


 前の世界でキャリバーンは完成していなかった。理論は完成していたが、そのタイミングで魔法が世界から無くなってしまったのだ。

 だからこそ、こうやって動いているキャリバーンに対してルルルンは違和感しか感じない。いったいどうしてこうなったのか、謎でしかないのだ。


「こんな動いて喋ってるのは、本当に予想外だけど」

「これが騎士?」

「一応な、そう言う設定」


 ジタバタするキャリバーンが暴れた反動で、引っかかっていた木から落下する。


「ぐえぁ!」


 ライネスに抱えられたまま、地面に落ちたキャリバーンに接近する。


「どうしてこいつがこの世界に現れたのかは、全くわかってない、少なくとも俺と同じ位の力を持ってる危険な存在だ」

「ケイスケと同じ?」

「まぁ、そういう設定で作ったからな」

「作っただぁ?」


 地面で転がるキャリバーンがルルルンの言葉に反応し、吠えるように声を上げる。


「はー!俺様を作ったのは、創造主ヨコイケイスケ様だけよ!なんで俺様がお前に作られたとかいう設定になってんだよ!だいたい俺と同じ位の力?その女がいなかったら俺の勝ちだったろうが!!負け惜しみはよくないぞルルルン!!!!お前の負けだ!!さっさと認めて俺様の勝利を宣言しろ!!」

「…………」


 ドガァァァ!!

 ライネスが無言でキャリバーンを蹴り飛ばす。


「ごぎゃっ!!」

「ライネスさん!?」


 キャリバーンの胴体はゴロゴロと転がり、プスプスと煙を上げている。

 ライネスの表情は怒りを通り越して、今にでもキャリバーンを消滅させてやるといった様子だ。


「よくしゃべる機械人形だ、すぐにでも口を効けなくしてやろうか?」

「なんだぁお前!!俺様を蹴り飛ばすたぁ!!いい度胸してんじゃねえか!!」

「ストップ!ライネス!こいつには聞きたいことが山ほどあるんだ!!」

「しかしケイスケ!こいつは騎士を名乗るにはあまりにも、あまりにもだぞ!!」

「何言ってやがる!俺様は創造主ヨコイケイスケ様に作られた!正真正銘、最強の騎士だ!!」


 じたばた暴れるキャリバーンに、ルルルンが深く溜息をつき、改めて語りかける。


「聞けエクスキャリバーン、俺はルルルンの恰好をしているが、お前の創造主ヨコイケイスケだ」

「いや、だから!そんなわけ!」

「見た目はルルルンだけど、違うんだ、俺はヨコイケイスケなんだ」

「そんな」

「ヨコイケイスケだ」

「だから」

「ヨコイケイスケだ!!」

「見た目は女だが、本当にヨコイケイスケだぞ」


 ライネスが横やりを入れる。


「え?」

「《《ヨコイケイスケ》》」


 次第に増す謎の凄みに、キャリバーンの語気は次第に弱まっていく。


「だから……え?」

「俺はお前の創造主だ」

「いやでも、見た目がルルルンだし」


 何度目の説明か、ルルルンは大きなため息をついて、説明する。


「この世界に転移したときなぜか、こんな姿になったんだ、原因は俺にも分からん」

「だったら!!だったら証拠を証拠をみせろ!!」

「製造年GB260年、12月1日のキャラクター企画会議で俺が周囲の反対を押し切ってマスコットの一つとして捻じ込んだ、エクスキャリバーンの名づけ親はミズノカオリ、最初の段階では「轟剣介とどろきけんすけ」って名前で、みんなに猛反対された、同時期に発表したルルルンの方が人気で、俺は毎日憂いていた、あぁやっぱロボットってもう人気ないのかなぁって、でも俺はお前に誇りをもってるぞ!!ってお前に毎日話かけてた!!」

「巨大ロボットは」

『漢のロマン』


 一人と一体の声が揃う。

 それは確信を突く決定的なシンクロニティ。


「まじ……で?」

「どうしてこうなったのかは俺が聞きたいくらいだ……でも信じてくれキャリバーン、俺はお前の生みの親、ヨコイケイスケだ」


 その言葉に、状況を見守っていたライネスも深くうなずく。

 沈黙の末、キャリバーンが小さな声で尋ねた。


「あなた、本当に……マスター?」

「そうだよ、俺はヨコイケイスケだ!!」


 全ての誤解を理解したキャリバーンが取った行動は、実に単純にシンプルで分かりやすく……。


「ごめんなさぃ」


 しょんぼりと、すごく静かに謝った。

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