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北の魔女⑥

「……そうだよな」


 ことごとく提案が空振りし、ルルルンは天を仰ぐ。争いを回避する方法……。

 最善を模索するが、そう都合よく妙案が浮かぶわけもなく、唸り声だけが増していく。


「なにかいい方法ない?」


 へなへなとした表情で、恥ずかしげもなく北の魔女に助言を求める。


「えぇぇ……それ私に聞く?」

「だってなぁ……」


 解決の糸口が見つからない以上本人に聞くしかない。


「そうねぇ」


 北の魔女は腕を組み、そう言いながら、ルルルンの事をじっと見つめる


「……一つだけ、あるけど」


 含みのある言い方で「一つだけある」と、魔女が予想外の事を言う。


「え?」


 あまりにも虚を突く申し出に、ルルルンは思わず目を丸くした。


「だったら!?」


 その方法を聞き出そうと、身を乗り出すと、北の魔女は身を乗り出したルルルンを逆にベットに押し倒した。


「え?」


 よくわからない状況にルルルンは混乱する、目の前には、半裸の美しい女性、顔と顔との距離はほとんどない。魔女の長い黒髪がするりと流れ落ち、ぽかんと開いたルルルンの口に入る。

 妖艶な匂いと瞳、僅かに身につけた布の隙間から零れる豊満な胸。

 少しでも距離が縮まれば触れてしまう位置にある唇が、ルルルンの理性を溶かしていく。

 魅了魔法エンカタルは使っていないはずなのに、北の魔女の美しさにルルルンは身動きが取れなくなっていた。


「まてまて、俺は『女』だ、落ち着け」


 理性を振り絞り、なんとかその言葉を捻りだしたが、妖艶な魔女はクスリと笑う。


「あなた、本当は『男』でしょ?」

「へ?」


 どこからどう見ても女のルルルンを押し倒し、誘うような指使いでルルルンの胸をなぞりながら、北の魔女は、確かにそう言った。


「なにを言って?」

「とぼけてもダメだし、貴方からはオスの匂いがする、どう見ても女なのに、なんでそんな匂いさせてるわけ?」


 「匂い?」そんなものが?と慌てて自分の体臭を嗅いでみるが、もちろん分かるはずもない。

 なぜバレたのか、ルルルンは戸惑うばかりだった。


原因わけは知らないけど、あなたは絶対に女じゃない」

「俺が男だとして、それと、お前の言ういい方法となんの関係がある?」

「決まってるじゃない……」


 北の魔女はにやりと微笑み、ルルルンの耳元で囁くように呟く。


「貴方が私の結婚相手になればいい」

「は?」


 予想外すぎるその提案に、ルルルンの思考は一瞬で真っ白になる。


「どうゆうこと?」


 結婚する?誰と?ルルルンは必至に言葉の意味を脳内で整理する。


「俺と?」

「《《結婚する》》」


 結婚する?


「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!」

「だって、それなら私も寂しくないし、貴方も魔女だから。魔女同士、ずっと一緒にいられるでしょ?」


 なぜそうなる!? 理解の追いつかないルルルンは、魔女の拘束を振り払い、ベッドから転げ落ちる。


「一旦、落ち着こうかぁ」


 一番落ち着いていないのはルルルンである。


「私じゃイヤ?」


 ベットから落ちたルルルンに北の魔女があざとく迫る。


「イヤとかそういう話じゃなくて」

「イヤじゃないならいいじゃんね」

「いや、そうじゃなくて、あのな……」


 最適な言葉を探すが見つからない。


「じゃあなんで?好きな人がいるの?」

「それは……」


 その問いかけに、ルルルンはすぐに返答できず、ぼんやりと、尊敬するライネスやシア、ミーリス、フェイ、ミズノカオリを思い浮かべる。


「いや、でも、好きとかそういうのじゃ……」

「いるの?」

「いやいやいやいやいやいやいないけど!」


 面識のある女性達が一瞬浮かんだが、そんなわけないと首を振る。


 ――求婚に応えることが、この事態の解決につながる。

 ルルルンは今、究極の選択を迫られていた。

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