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悩みは尽きない

「困った」


 休日の街の広場、ぱっと見美人のルルルンは、その容姿に似合わない困り顔で唸っていた。フェイから提供してもらった物件情報を手に、うーん、うーんと首を傾げる。

 マギリア食堂も屯所管理も休みなので、起業のため、拠点となる事務所候補を休日を使って検討したり内見する予定なのだが、先日小耳に挟んでしまった『魔女討伐』のパワーワード、それが気になって色々な事が手につかない。


「関わらないほうがいいのか……」


 魔女の事はノータッチで行く予定だったのだが、先日の一件がルルルンのその気持ちを揺らしていた。

 自分のその姿勢が、魔法とは無関係なシアを巻き込んでしまった。果たして自分と魔女とを切り離して、この世界での生活が成り立つのか?


「無関心なのは無責任なんじゃないのか?いやいや、そんな事より、起業すすめないとだめだし、でも、うー、あー」


 ぐわんぐわんと、脳内をめぐるやりたい事とやるべきなのか分からない事が巡る。いっその事、魔女全員と会って話を付けてしまいたい、自分とは関わらないで下さいと。


「無理だろそれは」


 少なくとも東の魔女とは交渉の余地があるかもしれない、先日現れたフェイツの言動から、手段は良いとは言えないが、強い悪意は感じられなかった。

 ルルルンの印象はそこまでマイナスではないのだ。しかし目的がハッキリしない以上迂闊な行動は周りに迷惑をかける、それに……と一人の女性を思い浮かべる。


「ケイスケ」


 ルルルンをこの名前で呼ぶのは一人しかいない。先程ルルルンが頭に思い浮かべた女性。


「ライネス?」


 ルルルンを探していたのか、ライネスが小走りに駆け寄ってくる。


「どうかした?」

「マギリア食堂に行ったら今日は休みだって言われたからな」

「なんか珍しいな、鎧着てないの」

「そうか?変か?」


 ライネスも非番なのか、いつもとは違う雰囲気の服装をしていた、いつもの鎧姿ではなく、普通の女性が着る、身軽なスカート姿、ライネスの容姿も相まって普通と呼ぶにはあまりにも目につく美しさであるが、腰にはしっかりと聖剣を携えてる。


「すごく似合ってるけど、ちゃんと聖剣は持ってるんだ」

「聖剣を手放す事はあり得ない、休みとはいえ、何が起こるか分からないからな」

「まあ、これもまたギャップで良いってやつか」

「な、なんだ?褒めてるのか?」

「褒めてるよ、あ、でも俺は鎧姿のライネスも好きだよ、かっこいいから」

「お前というやつは!!!!」


 照れながらライネスはバシバシとルルルンを叩いていた。


「で、こんなところで、お前は何をしていたんだ」

「うん、街の詳しい資料を貰ったから、物件探しをしようかなってブラブラしてた」

「そうか、夢のためだな、良い心がけだ」

「ライネスは?何か俺に用があって探してたんだろ?」

「あ、いや、用というほどの事じゃないんだが、最近忙しくて特訓も疎かにしていたし、ミーリスにあれこれ言われたからな……会いに来た」

「あれこれって?」

「いや、最近会えていないから、お前が寂しがっていたとか、なんとか」

「あいつ……」


 ニヤついているミーリスが容易に思い浮かぶ。


「愛人としてな、アピールは必要だろう!」

「その設定は騎士団公式設定になってるの?」

「そ、そういう訳ではないが、迷惑だろうか?」

「公式じゃないなら迷惑じゃないよ」

「そうか、ならばよい」

「そうなの?」

「あぁ、その、それだけじゃなくだな、色々とあった事、カインから報告があって、その事を聞こうかと思って……だな」

「そっか、俺もライネスにその事を話しをしたかったんだよ」

「そうだな最近、あまり話せてなかったからな」


 お互いバタバタとしていて、数日会っていなかっただけなのだが、お互いその期間がとても長く感じていたのか、なんだか久しぶりだねぇといった空気が二人の間に流れていた。


「ライネスは今日暇なんだよね?」

「暇という訳ではないが、今日は非番だ、公務は部下に任せてある、よっぽどの事がない限り呼び出されはしないと思うぞ」

「時間があるなら、デートしようよ」


 笑顔でライネスを誘うルルルンに裏はない、裏はないが、ライネスはこの誘いに裏があるのかと勘繰ってしまう。


「デート?それは、まさか逢引の誘いか?」


 余裕のある素振りでライネスが強がるが。


「そうだけど、だめか?」


 あっさり認めたルルルンに、ライネスは完全に弄ばれていた。無意識の行為に内心動揺しまくっているが、ライネスは表情を変えず必死に耐えていた。


「いいぞ、付き合おう、仕方ないな、ケイスケの頼みだからな!デートしようではないか!」

「なんでそんなに固いの」


 なぜかクソ真面目なライネスを見てルルルンは思わず笑ってしまう。


「そんなの……仕方ないだろぉ」


 ものすごく小声でライネスがぼやく、聞こえなかったルルルンはどうかした?という感じでライネスを覗き込む。


「行くなら早くいくぞ!!」


 ライネスはルルルンの手を引き、歩き出す。


「あはは、なんか久しぶりだな、この感じ」


 楽し気なルルルンと対照的に、怒っているのか照れているのか分からないライネスの表情がなんとも印象的であった。

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