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欲望の魔女
北の街ウルザの主都「ミザド」の繁華街、その路地裏で、男と女が抱き合っている。
女が男に耳打ちすると、男は態度を豹変させる。
「ま、魔法だぁ?お前!!!魔女なのか!!!!!」
男は顔を真っ青にして、女を突き飛ばす。後ろに倒れそうになった女は、ふわりと浮かび転倒を免れる、それは魔法であった。
「こんな美女をいきなり突き飛ばすなんてひどくない?」
「ま、魔法?ほんとに魔女!?うそだろ?」
「そうだけど、だったらダメなの?たまたま、いい女が魔女だった、それだけでしょ?」
「馬鹿言うな!!!」
「馬鹿?」
「魔女となんか付き合えるか!!!!!お前らは世界の敵だ!!!!!」
魔女と名乗る女は大きくため息をついて、残念そうに項垂れる。
「残念、はずれね」
その言葉の後、魔女と名乗る女が、男の額に人差し指をそっと押し当てると、糸が切れたように男はがくりと膝から倒れこむ。
「ほんと、残念、いい男だったのに」
魔女は踵を返し闇へ消えていく。
己の欲を満たすため、夜の街へ消えていく。