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策謀のマギリア⑪

 生き物のような炎が、聖剣から解き放たれる。

 その炎はカインを包み、カイン自身が炎の塊となる。

 炎の熱は離れた位置いるルルルンまで届くほどだ、魔法でもこれ程の炎を生み出すのは難しい。


「なんだあの力は???」


 赤く燃え上がるカインの赤熱の髪の毛を見てフェイツは思い出す。マギリアに来る前、東の魔女に言われた言葉を。


『あーそうそうフェイツちゃん、聖帝騎士団の団長クラスのやつには、油断せんほうがええよ、あいつらだけは中々おもろいから、特に金髪の女と……』

「赤髪の男……!!」


 東の魔女が油断するなと示唆した人物の一人、それがカインであった。


「これが団長クラスか!?」


 カインの炎はどんどん大きくなり周囲を灼熱に包む。


「(あのレベルの炎……魔法じゃないのか?)」


 ルルルンはカインの聖剣の力に魔法の可能性を感じるも、違和感を感じていた。詠唱などを介さない、魔導器のような魔法を補助するような物でもない、聖剣と呼ばれる物自体が扱う者の思いに呼応して炎を発生させる謎技術。ライネスの聖剣ともまた違う、未知の力。


「めっちゃ気になる……」


 が、今はそれどころではない、炎の塊となったカインに、魔人機は先程と同じく高密度の魔力砲で攻撃を仕掛ける。しかし、その魔力はカインに届くことなく直前で消滅する。


『ガガガギギギギ?』


 カインの周囲に発生する高密度の炎が魔人機の魔力を上回り、その力を『消滅』させたのだ。


「すごいなパイセン」


 ルルルンは素直に賞賛の言葉を贈る。魔法ではない力が、魔女の生み出した魔法を凌駕している。ルルルンの世界では絶対に見る事がなかったパワーバランス、「これが異世界か」と改めて痛感する。


「いくぞ!!!」


 カインの足元が爆発する、炎の勢いを自身の加速に利用しての接近戦。魔人機も反応するが、一方的に攻め立てられている。


「はあああああああああああ!!!」


 小型魔人機を蹴り飛ばし距離を取ったカインは、体制を直そうとしている相手に対し、炎の剣を振り上げる。


「あらかじめ言っておくが『避けても無駄だぞ』」


 その剣は炎の柱となり、必殺の一撃となる


 【炎刃一閃】

 

 振り降ろされた炎聖剣『クレスニク』は魔人機を飲み込み、強固な魔法装甲を一瞬で黒炭に変えた。

 黒焦げになった魔人機は腕の部分を残しボロボロと崩れ落ち、それを装着していた悪漢が意識を失って倒れ込む。


 勝敗は決した。


「あの新型魔人機を一瞬で、なるほど……たしかに魔女様の言う通り『おもしろい』」


 魔人機とカインの戦いから、敗北したにも拘わらず確かな手ごたえを感じたフェイツは笑みを浮かべる。


「次はお前か?」


 カインが満足そうな表情をしているフェイツに向かい問いかける。


「いいえ、今回の目的は達成しましたので、私がこれ以上リスクを負う理由はありません」

「お前は魔女の眷属!」

「褒めてるのか馬鹿にしてるのかどっちなのパイセン?」


 カインにしてみれば狙われる理由が不明なので、そう感じるのは当然である。


「そうですね」


 ルルルンはフェイツに無理だと知りつつも「言わないでくれ」と


「絶世の美女がマギリアにいると小耳に挟みまして、東の魔女様は、美しい物を集めるのが好きなのです、なので……」



「十分です、あなたが聖帝騎士団の一位なのですか?」


 


「これなら魔女様も楽しめるとご報告できるでしょう」

「楽しむ?何の話だ!?」


 カインが詰め寄ろうとするが、ルルルンがそれを制止する。

 割と真面目な雰囲気で、ルルルンがフェイツに自身の目的を問いただす。


「おい!俺への用事はいいのか?これだけ手の込んだことしておいて、お前、逃げんのか?」


 挑発をするがフェイツは表情を変えない。


「あなたとは改めて、小細工無しで会いにいきますよ、こんな事をしなくても対応してくれると、シアさんがそう教えてくれましたので」

「シアが?」


 ルルルンはフェイツのすぐ横で丁重に保護されているシアに気が付く。


「どういう心境なんだ?シアを傷つけたり、守ったり」

「守る?私が?」


 無意識であった。フェイツはカインと魔人機の戦いからシアを庇う用に立ち回っていたのだ。


「さぁ、シアさんは貴方を呼ぶための大切な人質なので、丁重に扱っています……それだけです」


 ほんの少しフェイツの表情が変わった気がするが、ルルルンは話を続ける。


「個人的には今、しっかりとお話ししたいんだけど」


 ルルルンが凄む、その凄みに思わずカインとフェイツが反応する


「ルルルン、お前」

「忠告しておくぞ、今度俺の知り合いに手を出したら、こっちから会いに行くからな」

「場所も分からないのにどうやって?」

「え?もしかしてバレてないとか思ってるの?」

「なにを言って……」


 冗談を言っている目ではない、このルルルンという魔女から感じられる力は、フェイツに対しメッセージを飛ばしている。


『いつでもお前たちを滅ぼしてやるぞ』と


 フェイツの見立てではあるが、底知れぬその力は塔の魔女に匹敵するかもしれない、そんな予感があった。


「魔女様に伝えておきます……」

「頼むよ」


 ルルルンの圧が弱まり、フェイツは大きく息を吐き無意識に安堵した。

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