策謀のマギリア⑦
シアを探すため、広域の探知魔法の使用を考えるも、ルルルンは躊躇する。自分の正体を知らないカインが傍に居るからだ。
魔力の残り香から相手の居場所を突き止めるのは容易だろう。だが、魔法を使えば自分の正体を明かす事になる。もしカインに魔女だと知られたら、ライネスの時のように、敵と認識され戦闘になる可能性がある。聖帝騎士団の目的は【魔女討伐】なのだから。
魔法をバレないように使ったとしても、少しの迷いもなく、目的の場所に向かうのも不自然……どうしたものかと悩んでいると。
「ルルルン!」
ルルルンを呼ぶ声がする。
「どうかした?」
「目的はお前らしいぞ」
カインの指差す先には、空中に浮かぶ手紙、その手紙から黒い炎が文字となり、メッセージを描く。おそらく誰かがここに来る事により発動するトラップメッセージだろう。しかし。
「よ、読めない」
「お前なぁ……」
こちらの世界の文字がまだ読めないルルルンの代わりにカインがその文字を読み上げる。
「マギリアの地下水道に来い、青い髪の女」
青い髪の女、明らかにルルルンの事を指しているメッセージ、どう考えても罠であるが、探知魔法を使う必要が無くなったのと、目的が自分だという事に少しだけ安心する。
「どう考えても罠だな」
「でしょうね」
ここまで明確にルルルンを指定するという事は、おそらく先日の襲撃者が犯人だろうと予想する、魔女会の線もあるが、手紙に施された魔法は簡単な物ではない、魔導器ではない魔法によって作られた物だ。
だとすると、魔女絡みの件が濃厚、本人かどうかまでは分からないが、自分を魔法を使う人間だと認識した上での行動だと考える。
「だったらなんでこんな回りくどいことを……」
その点だけが腑に落ちない、直接接触すればいいだけなのに、どうしてこんなことをするのか?
「安心しろルルルン、相手はここに私がいる事を知らない、罠だろうが関係ない、正面から討ち取ってやろう!!」
「脳筋すぎるでしょそれは」
「だったらどうする?」
気が逸っているカインを落ち着かせ、冷静にこの状況を整理する。
「少なくとも分かっている相手の目的は、俺だということ、相手は俺以外の誰かが一緒に来ようがそれは問題にならないと思っている」
「なぜそう思う」
「手紙には一人で来いとか、細かな指定がない、それにこの手紙は魔法で作られてる、魔女が絡んでいる可能性を考慮したら聖帝騎士団が出てくるなんて簡単に想像できるし……そう考えると自分だったら、聖帝騎士団を連れてきたら人質の保証はない、ってメッセージにすると思う」
「……」
「どうしたの驚いた顔して」
「いや、感心していた、本当にルルルンか?お前」
普段のふざけた様子の印象が強く、そんな様子から思いもよらない、まじめな考察をするルルルンにカインは驚嘆する。
「馬鹿な事言ってないで、行きましょうパイセン、相手の本当の目的が分からないんだからシアだって安全の保障がない」
「理解している、早く地下水道へ向かうぞ」
「……そうですね」
「地下水道への道順は分かってるのか?」
「いや、全然知らないです」
「わかった、ついてこい」
「はい」
「くれぐれも、無茶はするな!戦闘になったら俺が何とかしてやる、お前は絶対に手をだしたりするな、いいな!!」
「パイセンに任せます」
「それでいい!俺に任せろ!!俺がお前もシアさんも守ってやる!!」
カインはマントを翻し、地下水道へ走り出す、頼もしい背中にルルルンは女だったら惚れてるなぁと思いつつ、頼りになる男の背中を追う。
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